建築設計とは?求められる能力や働き方から仕事内容・年収を調べてみた!

建築設計という職業はカッコいい建物のデザインをする人!というイメージを持っている人も多いかと思いますが、その一言でまとめられるほど単純な仕事ではないんです。仕事内容は非常に広く多岐に渡ります。これから建築設計者を目指したい人のために、建築設計者の役割や年齢別に求められるスキルの情報などを詳しくまとめました。

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目次

建築設計の役割とは?

役割1:施主のイメージを理解しアウトプットする

まず建築設計の役割とは何?というところからお話したいと思います。設計者の役割は何と言っても施主の頭の中にある建物のイメージをすくい上げて形として作り上げることです。

施主から仕事を貰ったら、まずは施主の求めている空間や機能についてヒアリングを行います。次にイメージに近い事例を収集し施主にお見せしながらさらにイメージを具体化していきます。そうしてやっと提案のプランやCGを作成し、それをもとに何度も打合せをしてようやく形として出来上がっていきます。つまり施主の理想の形を理解し、それを代わりにアウトプットすることが設計者に求められる役割の1つです。

役割2:敷地条件・法規に則った形を模索する

建築を建てるうえで計画敷地の地形的な制約や法規上の制約が必ず出てきます。施主のイメージを形にしていく中でこれらの制約をしっかりとおさえながら、その敷地でのベストな答えを模索していくことも役割の1つです。

役割3:計画案を正しく形にするために現場調整をする

ようやく設計が完了して、必要な手続きを済ませると実際に図面に沿って現場が動き始めるわけですが、施工者が図面だけを見てすべてを理解しきれるかと言うと、なかなかそうもいきません。施工者の知識と経験で形が出来上がったとしても、機能的・性能的な面で本来の計画と異なるものとなってしまうことがあります。そうならないように設計者が現場を見て回り、時に施工者に設計意図を説明し、調整をすることも大事な役割となります。

建築設計に求められるスキルとは?

スキル1:事例をストックできるスキル!

設計者の役割1でもお話した通り、設計を始める時にまず行うことは施主が憧れる空間のイメージを何度もヒアリングして、そのイメージを一緒に積み上げていくことです。

公共施設のような大規模な建物でも同様で、地域住民が求めている施設の役割や機能を汲み取る為に、ワークショップなどを行い、イメージの共有をしていく作業が必要になります。この時にヒアリングした情報に対して、適切な事例をお見せすることが意思疎通の近道になります。日ごろから自分の中に一つでも多くの事例をストックしておくことが大事です!

スキル2:設計図書として取りまとめるスキル!

施主からの要望をくみ取り、スケッチ等でイメージが固まった段階で、実際にPCと向き合い図面を書き進めて行きます。AUTOCADやJWWCADなどの作図ソフトを使う能力に加え、最近では3Dでの検討が一般的になってきているので、sketchupやRinocerosなどの3Dソフトを使いこなす能力も求められることがあります。

施主に対して仕上げなどのプレゼンテーションを行う場合にはIllustratorやphotshopなどのソフトを使いこなすことも求められるかもしれません。設計業務はとにかく時間との戦いです。設計のスタディをする時間を確保するためには、”作業”の時間をいかにスピーディーにこなせるかが鍵になります。PCスキルを一つでも多く身につけておいて損はありません!

スキル3:プロジェクト全体を俯瞰して見る能力!

このスキルが不足していると致命的な欠陥がある建物となってしまいます。建築設計はいわゆる”デザイン性”だけを考えるのでは成り立ちません。建物を人で例えることがよくありますが、デザイン(意匠設計)は一番外側の皮膚や筋肉にあたります。

当然それだけでは人の形を成すことは出来ません。骨にあたる構造設計、血や内蔵にあたる設備設計が組み込まれて初めて建物に命が宿ります。この3つの要素をバランス良く整えることが意匠設計者の重要な役割になります。

設計を進めるうえで必ず意匠・構造・設備が相互に干渉をしてくるため、その不具合をどのように納めるかが設計者の腕の見せ所となります。さらには建築基準法・関係法令などの法的な制約と、予算内に収めるためのコスト感覚を持ちながら設計を進める必要もあり、それらを統括して舵取りをする能力がとても大事です!

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建築設計の働き方は?

建築設計の1日の流れは

9:30 /  出社
自分の事務所では定時は決まっているものの、各々のプロジェクトの進捗に合わせて出勤時間をコントロールしています。例えば昨晩が追い込みで帰宅が深夜を過ぎてしまった時は少し遅く出てくることもあります。午前中には昨夜のうちに届いていた対外的な質疑へのメール対応に追われます。
12:00 / 昼食
事務所にキッチンがあるので各々が簡単に料理を作ってランチを楽しみます。
13:00 / 各所打ち合わせ
午後には社内ミーティングやメーカーとの打ち合わせを行い設計を進めるうえで必要な情報収集や作業調整を行います。対外的な連絡は17時までが基本であるため、必要なやり取りをそれまでに済ませる必要があります。
17:00 / 設計検討
17時を過ぎると比較的電話がならなくなるので集中して設計作業を進めます。コンペや打合せの直前には終電まで作業を行います。
21:30 / 退社
時には徹夜もしますが、結局は次の日の効率が落ちてしまうため、ここぞという時以外はなるべくしないようにしています。

建築設計の休日や休暇は?

休日や休暇についても事務所ごとのスタイルで様々ですが、私の事務所を例にあげると土日祝日やGW、お盆、正月は基本的にお休みです。プロジェクトによっては休日に打ち合わせをする必要があるため、休日出勤をすることもありますが、その分代休を頂けることもあります。結局は自分のプロジェクトをどれだけ効率よく進められるかでワークライフバランスが良くも悪くもなるといったところでしょうか。

ケース1:住宅の現場

住宅の現場の場合、規模が小さいので設計のボリュームが小さく感じますが、逆に構造や設備をすべて意匠設計者が行うことが多いので忙しさはあまり変わりません。加えてお施主さんと一緒に仕上げを決めるためにショールームを訪れたり、打合せは休日に行うので休みがとりづらい部分があります。また打合せの間隔も2週間に1回程度と多いので意外と忙しい現場になります。

ケース2:公共施設の現場

公共施設の現場の場合、打合せは基本的には平日となるので平日に集中して作業を進めていくことが多いです。ただし対役所の資料は形式的で量も多いので作業量は多くなります。大きな物件では委員会なども多く開かれるためとにかく資料作りが多いです。休日は比較的暦通りに休めますが、役所の担当者から朝一で電話が掛ってくることも多いので、出勤時間を役所の担当者に合わせて朝型にする必要があるときもあります。

ケース3:常駐監理の現場

事務所から遠方の現場や監理が難しい現場では常駐することもあります。工事現場では基本的に日曜休みなため土曜日も出勤することになります。または土曜日は隔週休みです。日中に現場を歩き回り、17時以降、大工さんが帰った後にその日出てきた検討事項を現場事務所で詰めて行きます。祝日や大型連休は暦通りに休めることが多いです。

建築設計の仕事が激務と言われる理由

本当に激務なの?

担当するプロジェクトにもよりますが、やはり一般的な仕事と比較すると激務であることが多いです。時間的な拘束という意味でもそうですが、設計者が担う責任の範囲が多い事から精神的に悩まされる場面が多いのも特徴かもしれません。

一方である程度一人でプロジェクトを回せるようになると勤務時間のコントロールが出来るようになり、全体の工程に支障がなければ早々に仕事を切り上げてプライベートの時間に充てる日を作れたりもします。1つのプロジェクトの期間は年単位でかかるものがほとんどである為、途中で息切れをしないように程よく息抜きをしてマイペースに働くことが長続きのコツかもしれません。

激務と言われる理由は?

理由の1つとしては設計を進める上で調整をしなければいけない相手が多い事です。住宅の様な小さな建物でも、施主、意匠設計者、メーカー関係者、施工者、確認申請機関、、などなど多くの人が関わってきます。

大きな案件となればそれに加えて、構造設計者、設備設計者、防災設計者、インテリア業者、テナント業者、、などなどさらに関係者が増えていきます。意匠設計者はこれらの関係者との調整と取りまとめも重要な仕事となるため、そこに大きな時間が取られてしまいます。設計検討についても敷地や用途ごとで制約が大きく変わるのでその検討時間もありますし、なんといってもデザインを考える上では時間を掛けただけより鮮麗されたものになるので、時間はいくらあっても足りないという側面があります。

建築設計の年収は?

建築設計者の年収は1級建築士で約600万円、2級建築士で450万円というのが相場です。ただし大手設計事務所やゼネコンの設計部などはさらに高い年収が期待できますし、逆にアトリエ系の設計事務所では足元にも及ばないような低賃金の所もあります。

年齢別

年齢別で見ていくと、20代前半では300万円、後半では350万円、30代前半で400万円と5歳刻みで50万円程ずつ上がっていくことが多いようです。50代がピークで600~700万円まで上がる場合もあります。

経験年数別

次に経験年数別で比較してみましょう。こちらは月収とボーナスの上がり方に差があるので分けて比較しますが、月収については0~5年で約30万円、5年以降は約40万円となります。

設計を始めて5年目くらいのタイミングというのは、自分のプロジェクトを担当として受け持ち、それを1通り(設計から竣工まで)見ることができた位の頃なので、それを境に給料もググッと上がるのだと思います。一方ボーナスについては1年目は月収の2ヶ月分くらいですが、2~5年目には4ヶ月分、それ以降は5年ごとに+10万円くらいのペースで上がっていきます。

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建築設計の将来性は?

将来性については他の業種と比較して安定して需要はあるのだと思います。なぜならば生きる上で欠かせない衣食住の一つであるからです。ひとつ心配な点を挙げるとすればやはりAIの技術が発達することによって、図面の作成や積算業務などの仕事がAIに奪われる可能性があることでしょうか。

そういった意味では設計者のプロジェクトをまとめる能力や施主の思いをくみ取る能力、さらには建築単体だけをコーディネートするのではなく、例えば地域の技術力を活かせる持続可能性のある納まりを設計したり、過疎化の進む街に人を呼び込めるような機能を持った交流施設を計画するなど、社会的な付加価値のようなものを生み出す能力がこれからの時代の設計者には求められるのかもしれません。

建築設計の年収をあげるには?

年収をあげるのに必要な要素はやはり総合力を上げることだと思います。住宅だけで出来る設計者よりも商業施設も出来、小学校の設計も出来る人の方が当然会社としても重宝されます。またスキルの上でも設計の能力だけでなく、積算業務や確認申請業務もつつがなくこなせ、さらには建物のソフト面(運営的な部分)の知識まである設計者はそう多くはありません。そのような人材になれれば自然と年収も上がってくるはずです。

資格をとる

1級建築士や2級建築士の資格はとにかく早く取得した方がいいです。その理由の1つとしては、年齢を重ねるごとにこなさなければいけない仕事の量もどんどん増えていきますので、入社したての比較的時間のあるタイミングで取ってしまうのが後々苦労しなくて済みます。

また純粋に設計における知識を早い段階で勉強することは非常に重要で、特に法規については担当できるプロジェクトによって関わる範囲が大きく変わってくる為、実戦で学ぼうと思うといくつものプロジェクトをこなす必要があります。良い設計者は”いかに先を読めるか”ということでもありますので、自分がこれから関わるかもしれない案件の知識を早い段階で手に入れておいて損はありません。

経験を積む

先ほどの年収をあげるためには?という部分でもお話しましたが、設計者に求められるのはやはり”総合力”です。頼まれた仕事はとにかく拒まず引き受けることが後々の自分の総合力を上げることにつながるはずです。

例えば設計のイメージと違うように感じる積算業務をこなすことで材料のコスト感覚や減額検討をするときにどのような部分が削れるのか?という力になります。確認申請業務をこなすことで自分が基本計画をする段階から法規を気にした目で見ることが出来るようになります。遠回りに思えるような業務でもいずれ自分の糧になる日がくるはずです。

いわゆる図面を引いたり納まりの検討をするなどの経験で大事なことは、一度やった納まりをしっかりとストックできるかどうかだと思います。建築設計は芸術作品とは違い、経験に基づくリメイクの繰り返しという側面が強いので、実際に現物として建ち上がったものから良し悪しをフィードバックして次の設計に活かすという作業がとても大切です。自分の中に納まりの引き出しをたくさん作るイメージで日々の業務に取り組むことが効率的に経験を積む方法だと思います。

転職をする

建築業界では転職することは珍しくありません。理由は様々ですが、やはりアトリエ系の事務所に勤めている人はある時期で必ず給与面での悩みにぶつかります。元々が修業期間のつもりで務めている人がほとんどですので、その事務所のノウハウを身に着けたら独立か、また別の設計事務所に転職することが多いです。

また事務所ごとに施設の得意分野があるので、やりたい設計の規模や用途が変わった場合にはそれを得意とする事務所に転職する必要があります。建築設計の世界は意外と知り合いとのつながりから次の就職につながることも多いので、設計者同士の交流の場で顔を広げておくことも次のステップには大事なことかもしれません。

最後に

建築設計は建築現場においてリーダー的存在であり、なくてはならない仕事です。言葉に出来ないほどの達成感と喜びを感じることが出来る魅力的な仕事なので、建築設計を目指す方、建築設計として働かれている方は、自分の仕事に自信を持って毎日を歩んでいただければと思います。

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