建築関係の仕事は専門性が高い分野ですので未経験から足を踏み入れるのはハードルが高く感じるかもしれません。
ですが未経験の人でも活躍できる場は増えてきているので、いくらでもチャンスはあります!今回はそんな未経験の人向けの年収やリアルな転職などあらゆる情報をまとめましたので是非お役立てください。
建築設計を未経験からのでも必要な理由とは?
理由1:慢性的な人手不足
東京オリンピックが来年に迫った今、都内を中心に建築ラッシュとなっています。競技場など大規模な建築も多いため、施工者ほどではないですが、建築設計者も不足気味と言えるでしょう。また住宅業界においては地価や建築費の高騰によって新築のハードルが上がりましたが、その分リノベーションやコンバージョンのニーズが増えてきているので、その分野の設計者を求める声も増えてきています。また2010年頃の建築不況で採用を控えていた時代的背景もあり、30代のいわゆる中堅世代の人材不足を抱えている設計事務所も増えてきています。
理由2:高齢化による後継者不足
設計業界の深刻な問題として人材の高齢化があげられます。団塊の世代がリタイヤし、まもなく団塊ジュニア世代も定年を迎えます。一方で新卒世代は生活の安定を望む人が増えている傾向ですので、激務で薄給になりがちな働き方が合わずに転職してしまう場合も多く、安定して後継者が育たない状況にあります。特に構造設計者は責任が重い割には報われる場面も少ないためますます若手の設計者が育ちにくい状況にあります。
理由3:長期的な人材の確保
建築のプロジェクトは短くても1年以上かかることが多く、長ければ4~5年という場合もあります。設計をする上で土地の法的要件や地盤の性質などの与条件、施主から求められている各施設の機能や規模の与条件、基本構想時のコンセプトなどの与条件とそれに応えるように積み上げてきた設計内容のプロセスを把握することも大事であるため、プロジェクトの担当者は極力入れ替えずに進めることが望ましいです。そのため入社して数年で転職されることは会社側も避けたいと考えるため、未経験者でも長期的に残ってくれる人を確保したいという側面もあります。
建築設計未経験の採用ニーズは果たしてあるのか?
ニーズ1:将来の幹部候補の採用
幹部クラスに求められるスキルはプロジェクトを俯瞰してコントロールする力になります。プロジェクトに関わる情報を正しく把握して、現在必要な調整事項を的確に部下に伝えて推進していかなければいけません。
極論細かい設計検討は各担当者レベルでクリアしていければ良いので、専門的な知識よりもそれらを取まとめられるコミュニケーション能力や人間力に長けている人材の方が適している場合もあります。もちろん取りまとめる上での最低限の知識は必要ですので、入社後にあらゆる事を勉強する必要はありますが、将来的な幹部候補としての伸びしろを期待した採用もあるでしょう。
ニーズ2:新しい仕事のやり方を素直に覚えてくれる
どの業界においても共通することではありますが、業務を教えるうえで素直に聞いてくれる部下の方が育てがいがあるというものです。また設計業務はとにかく覚えることも多く、指示通りにやらずに感覚的に進めてしまうと必ず問題が発生します。そのミスが現場が始まってから発覚したとなれば大問題です。やり方が分からないうちは逐一質問をし、素直に聞こうとする姿勢を持っている人材の方がリスクマネジメントの点でも重宝されます。
建築設計未経験者が不安になるポイントは?
不安1:女性でも大丈夫なのか?
建築業界でも時代は移り変わり、女性が活躍する場面はいくらでも増えてきています。むしろ女性の方が優秀で粘り強く、勤勉という評価をよく耳にする時代です。設計を考える上で女性ならではのきめ細やかな視点を求められる場面も増えており、プロポーサルコンぺの売り文句としても”女性目線”を組み込んでいることも多くなっているように思います。
また商業施設なども女性が気に入らなければ旦那を連れてきてくれない、住宅設計においても最終的な決定権は奥さんにある、など女性の気持ちが分かることが大きなアドバンテージとなることも多いはずです。産休・育休制度も充実してきているので女性としてのライフステージにあった働き方も十分できるかと思います。
不安2:資格がなくて会社で活躍できるのか?
資格はあるに越したことはありませんが、なくても活躍している人はたくさんいます。極論、社内で1級建築士が1人いれば設計業務を請け負うことが出来ますので、設計補佐という立場で十分活躍することが可能です。但し、図面を書く為のCADのスキルやCG・模型が作れるなどの実務的な能力は身に着けていく必要はあります。
不安3:長時間労働でブラックではないのか?
白か黒かで言えば建築業界全体がグレーに近いと言わざる負えないかと思います。とにかく検討事項が多いので必然的に作業時間も長くなりがちです。責任も重いので精神的にある程度タフになる必要があるかと思います。ですが形として現れる仕事というのはやはりいい物で、苦労した分、仮囲いが外れて姿が現れた瞬間、竣工してまだ使われていない建物を独り占め出来る瞬間など、苦労が報われる瞬間も必ず訪れます。それを天秤に乗せたときに、それでもやりたいと思えるのであれば十分飛び込む価値のある業界であると思います。
建築設計の未経験者がとるべき資格とは?
資格1:2級建築士
2級建築士は簡単に言えば住宅が建てられるライセンスになります。設計業務に携わる上ではやはり取得することが望ましいです。ただし建築学部の大学を卒業していない場合は、実務経験7年が必要になるため時間がかかってしまうのが難点です。少しでも早く欲しい場合には、大変ですが仕事をしながら通信大学に通い受験資格を取得する方法も存在します。
試験内容は1次試験として学科試験を行い、それに合格すると2次試験として製図試験を受けることになります。学科の勉強する範囲は計画・法規・構造・施工の4科目で、建築の基本的な知識を覚えることになります。2次の製図試験では手書きの製図技術とエスキス能力が求められるので、特にエスキス能力は実務にも通ずる勉強になるはずです。
2級建築士を取れれば外部との打ち合わせをする場面でも、ある程度信用を置いてもらえるようになるので、仮に未経験者という点が引け目になっているのであれば、取得することで自信にもつながるはずです。
資格2:インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは内装材についての知識を幅広く待ち、住み手にとって快適な空間となるように計画ができる人に与えられる資格になります。ですが受験資格は二級建築士と違って特にありませんので比較的取りやすい資格と言えるでしょう。建築においてインテリアは欠かせないものですので、魅力的な内装の提案をできることは大きなアピールポイントとなります。参考書や通信講座も多くありますので、着実に勉強をすれば取得しやすい資格とも言えるでしょう。
未経験建築設計の待遇面は?
初任給
職種によって様々ですが、未経験者の場合の初任給は学部の新卒(25-30万円)と同程度と考えるのが相場でしょう。
その後の昇給についてはやはり基礎知識がない分実務で一人前になるのに時間がかかるので緩やかにはなりがちですが、設計の中で得意な分野を見つけて専門性を身につけていければおのずと給料もついてくるでしょう。
資格の有無
資格はあったほうが当然有利ですが、ない場合でも入社後のキャリアアップとして資格取得の意欲があることをアピールできれば好印象に受け止めてもらえるはずです。
資格もそうですがCADによる作図のスキルなども事前に勉強していればさらに有利になります。
未経験から採用された建築設計のリアルな声
ケース1:Aさん
転職者のプロフィール
”before”
職種:土木設計技術者
学歴:学部卒
過去の転職回数:0回
勤続年数:2年間
直近の年収:400万円
平均残業時間:月4~50時間
”after”
職種:中堅設計事務所
転職後の年収:400万円
平均残業時間:月5~60時間
Aさんは大学時代は建築系の学部にいましたが、就職時には土木関係の会社に就職しました。ところが働いている中で学生時代に持っていた建築設計という仕事へのあこがれがどんどん強くなっていき、ついに転職することを決意しました。
本職を継続しながら土日休みの中で転職活動を進めて行き、転職サイトと合わせて自分の卒業した大学の就職課にも相談に行き、ついには設計補助というポジションで転職を決めることが出来ました。やはり未経験ということもあり、入社当時の給与は前職の80%程度となり、勤務時間も長くなりましたが、転職前では薄くなっていた仕事に対してのやりがいが転職後の職場で取り戻すことができ、自分の一生の仕事にするつもりで、充実して働けるようになりました。
Aさんは27歳で未経験でありながら設計業界に転職を決めました。自身のやりたい目標さえ固まっていれば転職を決意するのに遅すぎるということはないいいお手本でしょう。
ケース2:Bさん
転職者のプロフィール
”before”
職種:メーカー営業
学歴:学部卒
過去の転職回数:0回
勤続年数: 6年間
直近の年収:400万円
平均残業時間:月5〜60時間
”after”
職種:ハウスメーカー
転職後の年収:450万円
平均残業時間:月5〜60時間
Bさんは転職前は建築のメーカー関係の営業をしていましたが、結婚が決まり自身のライフステージが変わるのを期に、将来的に安定できる技術職に転職することを決意しました。中でも建築設計の仕事には以前から興味があり、メーカーでの知識も役に立つと考え、設計職を目指すことにしました。給与と福利厚生の面でも現職より安定した企業に狙いをつけて進めて行きました。
エージェントには相談はせずにいくつも面接を受けましたか、書類選考は通っても面接時に未経験という点で落とされてしまいました。同時に結婚の準備も進めながらという多忙なスケジュールにくじけそうになりながらも、転職経験のある友人にアドバイスをもらいながら面接の練習を繰り返し、面接にも自信がついたころにようやく設計職への情熱を買ってもらい転職が決まりました。
やはり未経験という点は不利に働くことも現実としてありますが、Bさんのように設計職への思いを持って諦めずに面接を受け続ければどこかで良い企業と巡り会えるタイミングがくるはずです。
ケース3:Cさん
転職者のプロフィール
”before”
職種:営業
学歴:学部卒
過去の転職回数:0回
勤続年数:3ヶ月
直近の年収:300万円
平均残業時間:月8〜90時間
”after”
職種:大手設計事務所
転職後の年収:350万円
平均残業時間:月5〜60時間
Cさんは大学を卒業後建築とは関係のない業界の営業職に就職しました。しかし営業職になじめずに入社後早々に転職を考え始めました。どうせなら自分のやりたい事を仕事にしようと思い興味のあった建築設計の仕事を目指す事を決意しました。
スキルが全くない事を自覚していたので CADの専門学校に3ヶ月通い、ある程度自信がついてから転職活動を始めました。面接でも自主的に専門学校に通ってスキルを磨いた意欲をアピールし、その意欲をかってもらい無事に転職が決まりました。
まずは CADのスキルを活かして図面作成の仕事を任されているようです。
Cさんのように自主的に設計関係のスキルを勉強する事で面接時のアピールポイントとして売り込むことも重要かもしれません。
未経験者が応募時に注意すること
面接
未経験者を採用する上で期待されるのはやはり人間性です。経験がない分、スキルアップに前向きであること、すぐにやめることなく長期的に会社に残ってくれる忍耐強さ、そして円滑な人間関係位を築けるコミュニケーション能力をアピールすることも重要です。逆に企業側においても未経験者でも長期的に育ててくれる制度などを整えているのかなどを確認することも大事です。
履歴書
未経験の場合経験や建築関係の資格を書けないので悩ましいですが、一度別の業界を見てきたという点は強みでもあると思います。建築はあらゆる業界に何かしら関わるものです。使い手としての経験は設計にもつながるので、前職の経験も売りとしてアピールできるとプラスになるはずです。
未経験でも建築設計の仕事を見つけれる求人サイト!
1位. せこかんラボ
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2位. doda
dodaは求人の掲載数が多いこともあり未経験者を対象とした求人も数多く掲載されています。また専任のキャリアアドバイザーも付くので未経験であってもその業種の情報を教えてもらったり、自分に適した転職先を提案してもらうこともできます。1人での転職活動に不安がある人には安心のサイトと言えるでしょう。
また非公開求人についても良質な企業の情報が見つかります。ちなみに非公開求人とは企業が社名を明かさずに人材を募集することで、人事採用のコスト削減や機密性の高いプロジェクトに関わる人材採用をしたい際に行われ、比較的好条件の案件が多い傾向があります。未経験とはいえ待遇面を重視したい人に適したサイトと言えるでしょう。
3位. リクナビnext
リクナビネクストの特徴は転職サイトとしての知名度が高く、求人数もNo.1という点です。建築業界に限らずあらゆる業種の求人情報を調べることが可能で、検索機能も充実しているので、数多ある求人の中からでも自分の理想の職場を見つけることが出来るでしょう。また会員登録とレジュメ情報を登録をすることで企業側からのオファーがかかる「スカウト機能」というものもあり、転職できる可能性のある企業を色々と探したい人には適しているサイトと言えるでしょう。また登録をするとキャリアアドバイザーと直接面談・相談をすることが可能なので、有効に活用できるとよりスムーズに転職を進めることが出来るでしょう。
最後に
建築設計の業界に少しでも興味がある人は、少しでも早く身近な建築関係の人、転職エージェントに相談をした方が良いでしょう。なぜならば建築設計はとにかく経験がものをいう業種だからです。一人前になるのに10年はかかるとも言われる仕事です。みなさんが憧れているイメージはおそらく設計の第一戦として働くことかと思いますが、そのポジションまでいくには転職してからある程度時間が掛るのは事実なので、とにかく相談だけでもすぐにしてみた方がいいでしょう。
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