建築施工管理技士の人手不足は国家の危機!?建設業界が直面している問題を徹底解説!

建設業界における「人材不足」はかなり深刻な問題です。

この問題については以前から問題視されてきましたが、ここにきて国による施策やプロジェクトの策定が行われる等、抜本的なテコ入れをしなくてはならない状況に直面してきています。これらの施策は、まだまだ実施段階であり、未だ解決の目処が立っていない状況にあるといえます。

建設業における人材不足は国家にとって非常に深刻な問題です。インフラ整備や災害対応、メンテナンス等を担う技術者が不足状態にあるのですから、国家的な危機にもなりかねない大きな問題であり、建設業界の人材不足解消は国家的な急務といえるのです。

今回は、建設業界における「人手不足」の問題、建築施工管理技士の不足による問題について解説していきたいと思います。

目次

どうして人材不足なの?

そもそも、どうして建設業界で人材不足の問題が発生しているのでしょうか。簡単に解説していきます。
大きな要因としては、「リーマンショック」と「特需」が挙げられます。

リーマンショックにより国内の建設需要は激減しました。そして多くの職人さんたちが離職や他業界への転職等を余儀なくされました。

こうした低迷期がしばらく続いておりましたが、近年は特需(東日本大震災からの復興事業、アベノミクスによる公共事業の増加、東京五輪(2020年)等)により、建設業界の景気は活気を取り戻してきています。低迷期が続いていた中に、突然特需が発生したことにより、建設業界の人材不足の問題が浮き彫りとなり、さらには深刻化に拍車がかかってきているのです。

近年、景気は回復基調にありますが、一度離職した職人たちの復帰もあまり伸びていなかったり、若手の入職率や離職率の問題もあることから、建設技術者の確保が難しい状況に陥っているのです。

建築施工管理技士が減るとなんで困るの?

建築施工管理技士の人手不足はなぜ深刻な問題といわれているのでしょうか。

現行の建設業法では、戸建住宅の建設等を除き、公共工事や民間工事においては、現場の規模により異なりますが、建設現場に「監理技術者」や「主任技術者」を配置することが義務付けられています。

建築施工管理技士の資格は「監理技術者」「主任技術者」としての資格要件となっています(1級施工管理技士は監理技術者に、2級施工管理技士は主任技術者に選任することができます)。簡単にいえば、「現場の数だけ、建築施工管理技士が必要」といった具合です。

建築施工管理技士の不足が、建設業界全体にとって大きな問題となる理由についてご理解いただけたでしょうか。

次に、建設業界における現状と問題点についてみていきましょう。

建設業界が直面する問題点

建設業界における問題点についてみていきます。国土交通省や厚生労働省等がまとめているレポート等を参考に以下まとめました。

若年層の建設業在職率が減少傾向

●若年層の建設業界への入職者があまり増えていない
●若年層の離職率が高い(3年以内:30%~50%)

有資格者の増加ペース <<< 高齢化に伴う引退等による減少ペース

●検定試験受験者の減少
●検定試験合格者の高齢化

高齢化

●建設業界において、60歳以上の高齢者が占める割合は24.5%(約81.1万人)
●29歳以下は11%(約36.6万人)と高齢者の半分にも満たない

10年後に団塊世代の大量離職が見込まれる

団塊の世代の大量離職は外せない問題担っています。

企業の社会保険の未加入率が高い

上記は主な問題点について記載していますが、他にも様々の問題が絡み合っています。
こういった問題に対し、国はいくつかの取り組みや、施策を試みているので、紹介していきたいと思います。

国の狙いは?国の取り組み・施策とは

ここまでみてきた問題点に対し、現在、官民一体となり、「建設業界への入職者を確保すること」を目的に様々な施策を試みています。最近時では、建設業界の働き方改革を狙いとして、国土交通省が「長時間労働の是正」、「給与・社会保険」、「生産性向上」の3つの分野における新たな施策として「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しています

「建設業働き方改革加速化プログラム」とは

「建設業働き方改革加速化プログラム」の主な内容は以下のようになっております。
(引用元:http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000561.html(国土交通省HP))

⑴長時間労働の是正に関する取組

①週休2日制の導入を後押しする
公共工事における週休2日工事を大幅に拡大するとともに、週休2日の実施に伴う必要経費を的確に計上するため、労務費等の補正の導入、共通仮設費、現場管理費の補正率の見直しを行う。

②各発注者の特性を踏まえた適正な工期設定を推進する
長時間労働とならない適正な工期設定を推進するため、各発注工事の実情を踏まえて「適正な工期設定等のためのガイドライン」を改訂。

⑵給与・社会保険に関する取組

①技能や経験にふさわしい処遇(給与)を実現する
技能者の資格や現場の就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積する建設キャリアアップシステムの今秋の稼働と、概ね5年での全ての建設技能者(約330万人)の加入を推進。また、技能・経験にふさわしい処遇(給与)が実現するよう、建設技能者の能力評価制度を策定。
さらに、能力評価制度の検討結果を踏まえ、高い技能・経験を有する建設技能者に対する公共工事での評価や当該技能者を雇用する専門工事企業の施工能力等の見える化を検討。

②社会保険への加入を建設業を営む上でのミニマム・スタンダードにする
社会保険に未加入の建設企業は、建設業の許可・更新を認めない仕組みを構築。

(3)生産性向上に関する取組

①生産性の向上に取り組む建設企業を後押しする
中小の建設企業による積極的なICT活用を促すため、公共工事の積算基準等を改善。

②仕事を効率化する
工事書類の作成負担を軽減するため、公共工事における関係する基準類を改定するとともに、IoTや新技術の導入等により、施工品質の向上と省力化を図る。

③限られた人材・資機材の効率的な活用を促進する
現場技術者の将来的な減少を見据え、技術者配置要件の合理化を検討。

以上、「建設業働き方改革加速化プログラム」についてみてきました。国も人材不足という問題が深刻化していることを受けて、積極的にテコ入れをする段階にきています。「建設業働き方改革加速化プログラム」以外にも、県ごとに様々な取り組み(例:労働環境や条件の改善に取り込む建設企業に対し、補助金を出す(富山県))も行われているようです。

具体的な実施例

先述のような国の方針がある中、実施されている(予定も含む)取り組みをご紹介します。

●資格試験:受験機会の拡大
【具体例】
・受験要件の緩和
・試験回数の増設(2級建築・土木施工管理技術検定を「年1回」から「年2回」に(この2種は先行的に実施)/ 平成30年度より、「年2回を」全6種目(土木・建築・電気工事・管工事・造園・建設機械)に拡大(確定))

●社会保険 未加入業者の排除

【具体例】
・未加入企業は、国土交通省直轄の工事を受注できない
・社会保険未加入の技能労働者は国の公共事業に入場できない
(この流れは、地方自治体にも波及していく見込みです。)

●週休2日の推進

・国土交通省、農林水産省、防衛省の直轄工事では、率先して「週休2日対象工事」を発注

●「技士補(仮称)(=補助技術者)」の新設、活用(検討段階)

・「技士補(仮称)」:監理技術者の補佐的役割を担う技術者
・現場技術者配置要件の合理化(技士補を活用し、1人の監理技術者が複数の工事現場を兼務することを認める等)
・1・2級施工管理技士「学科」試験合格者に対し「技士補」の付与を検討。技士補として一定期間の実務経験を積むことで、1級「実地」の受験要件を緩和する等も検討中。
・国土交通省や地方公共団体の総合評価方式の入札において、現在、若手技術者の活用に評価点を付与する仕組みがあるが、「技士補(仮)」も対象にすることも検討中。

具体的な施策等々、気になった方は国や各自治体のホームページ等もチェックしてみるのもいいと思います。

建設業界の人材確保=「若手」人材の確保

「建設業界の人材不足」という問題を解決していくためには、短期的にみればベテラン人材の確保は非常に即効性はありますが、長期的な視点でいえば、とくに「若手人材の確保」=「若手入職者の増加」と「離職率の改善」を実現していかなくてはいけません。

建設業=3K?

人材不足という問題が加速化している背景として、一般的にリーマンショックや特需が要因であることについては前項でも述べてきましたが、そもそも、建設業は人気業種ではない=建設業界に対するイメージがあまり良くないといった実態について目を背けてはいけません。こういった実態は、一時的な景気要因(特需など)よりも深刻な問題といえ、抜本的な対策が必要になってきます。

今後、より多くの若年層に建設業界を志すようになってもらうためには、

◉建設業=3K※(きつい・汚い・危険)というイメージの払拭
(※さらに3つ(給料が安い、休暇が少ない、かっこ悪い)加わり、6Kと呼ばれることもあるそうです。)

◉労働環境の改善(労働時間、賃金、福利厚生等の改善)

は必須となってくるでしょう。
収入水準の見直しやワークライフバランスの改善により、負のイメージを払拭し、若年層にとって憧れの職種となり得ることが、建設業界の将来にとっては不可欠であり、根本的な解決策となってくるのではないでしょうか。

まとめ

◉人材不足の要因は「リーマンショック」からの「特需」
リーマンショックによる建設業界の需要激減、景気低迷。
→特需(東日本大震災からの復興事業、アベノミクスによる公共事業の増加、東京五輪(2020年)等)による景気回復
→案件の増加

◉現場の数だけ、建築施工管理技士が必要
建築施工管理技士の不足は、建設業界、国家にとって大きな問題

◉国土交通省による「建設業働き方改革加速化プログラム」策定
「長時間労働の是正」「給与・社会保険」「生産性向上」の3つの分野における施策

◉これからの建設業界にとって、「若手人材の確保」が重要
「3K」のイメージ払拭・労働環境の改善

転職の絶好のチャンス

ここまでみてきたように、建設業界の人材不足は深刻化しており、大手企業ですら、採用難に陥っている状況にあります。こうした背景の中、各社の人材争奪戦は激化しており、この先もまだまだ続くことが予想されます。建築施工管理技士は「売り手市場」であるのは間違いなく、今は、高待遇をゲットできる絶好のタイミングだといえます。若者は入職や転職がしやすく、ベテラン勢にとっても、待遇面の改善や向上を図るチャンスといえるでしょう。
「建築施工管理技士は今アツい!」のです。

また、東京オリンピック後の建設業界の動向について不安視されている方もいると思います。しかしながら、建設業界の仕事が急激に減ることも考えられません。2027年に開業が予定されているリニア新幹線の関連工事の他、老朽化建物・インフラの改修工事、耐震工事、修繕工事、公共工事等についても需要はあるとみられています。新規工事に限らず、建物・インフラが存在している限り、建設業界の仕事がなくなることはないのです。

建設業界は、今後も一定の需要が維持される業界といえます。みなさんも、この好機に自身の待遇や職場環境等について見直されてはいかがでしょうか。今よりも、満足できる環境を手に入れるチャンスが待っています。

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