土木設計とはどのような職業かご存知でしょうか。
基本的に大学や大学院の土木系学科を卒業した方が土木構造物を設計する専門技術者です。
土木設計とはどのような仕事をしていくのか、勤務体系や給与等、土木設計の全てを解説していきます。
土木設計の役割とは?
建築設計と土木設計は、全く異なり卒業する大学の学科から、配属される部署まで異なります。建築設計は「建物を設計する」仕事です。土木設計は「橋」や「トンネル」、「ダム」などを設計する仕事です。
土木設計の役割についてご紹介します。
役割1:生活に役立つ構造物を作る
土木構造物の発注者は国や県、市町村がほとんどです。つまり公共事業となります。
人々が生活していく上では欠かせないダムや橋、トンネルなどを設計するので社会貢献度はかなり高い職業です。
「○○ができて便利になった、暮らしやすくなった」という声が一番聞こえやすいものを作る職業です。
役割2:街のランドマークデザイナー
橋は首都圏でも欠かすことのできない土木構造物です。
街のランドマーク的存在の1つで橋があります。橋の種類にはさまざまな構造があり、吊り橋やトラス橋、アーチ橋など、形が美しいものが多いです。そしてその美しい土木構造物が街のシンボルとなります。
大規模な橋等の土木構造物であれば、それを見るだけでどの都市かを判別することができるほどです。
役割3:ライフラインを守り支える
土木構造物は、人々の生活を支えている物がほとんどです。
そもそも日本中に建てられている建物は建築物、それ以外は土木構造物という分け方になるので、普段利用している道路や橋、トンネル、鉄道などのインフラは全て土木構造物となるわけです。
家を出発し、目的地へと向かう。家と目的地は建築物ですが、その道中にあるものは土木構造物です。
人々はその利用しているものを土木構造物とは知らずに利用しています。
その様々なものを設計しているのが土木設計者です。
さらには飲み水を支える水道関連から、ダムや、ガス、電気に関する物も設計します。
土木設計者は、人々のインフラ、ライフラインを支えているのです。
土木設計の仕事が激務と言われる理由
土木設計は激務といわれる業種のひとつです。人々の役に立つもの、後世に残る構造物を設計するという仕事は素敵な業種ですが、激務の影響から職を離れてしまうことも珍しいことではありません。
激務な職業は多くありますが、土木設計の業務とはどのようなものなのか解説していきます。
本当に激務なの?
通常の勤務時間は8時間で、残業時間も労働基準法によって決まっています。
労働基準法も、36協定で残業時間の操作も可能です。もちろん青天井ではありませんが、建設業の場合は残業時間を多く設定することが可能となっています。
近年の働き方改革で、以前よりも大幅に残業時間が緩和されていますが、ほかの業種に比べると残業時間が多いことは確かです。
ほとんどの土木設計者が法定内ギリギリの残業時間で仕事をし、休日出勤もしています。
激務と言われる理由は?
会社規定の定時で帰宅できることはまずありません。
少々の残業ではなく、徹夜になることもしばしばです。
土木設計は、一つの構造物を担当しているわけではありません。複数の構造物を設計し、同時進行していきます。
着工前の設計段階の設計では、納期に追われ各所の変更や要望に対応する為に業務に当たります。
さらには着工している土木構造物に関しては現場からの質問や変更事項の検討等の対応にも追われます。
その他、様々な業務に追われ、仕事に終わりが来ません。
1つの土木構造物の設計にひと段落すると、新しい案件が舞い込みます。
土木設計に求められる能力とは?設計職に採用される為には?
土木構造物を設計するにあたり、さまざまなスキルが要求されます。
建築設計であれば、意匠設計(デザイン)、構造設計、設備設計と大まかに分けると、これらの設計担当が分担して設計を行います。
土木設計は、構造的なことをメインで考えながらデザインも検討します。
より良いものを設計するにあたり、数多くのことが要求されます。
スキルも大事ですが、設計職に採用されなければスタート地点には立てません。
土木設計職に採用される為の能力をご紹介します。
能力1:大学の授業内容+αの知識
新卒採用の入社試験には、大学の講義で学ぶ知識からさらに一歩進んだ知識を問われることがります。
建築士や、技術士の試験問題に類する問題などに対応する能力も必要となってきます。
土木系学科となると、力学系は構造力学、土質力学、水理学等多くの難易度の高い科目がありますが、それぞれの基礎力から応用力まで備えておく必要があります。材料力学等も例外ではありません。
また、卒業研究や修士論文の成果も大きな武器になります。
設計職は人気職のひとつですので、成果に応じて面接官の印象も変わってきます。
自身がやっている研究を十分に理解しておくことが必要です。
能力2:図面を描きながら構造をイメージする能力
現代では、CADを使用し図面を描きます。
CADを使いこなすことは重要なことです。CADソフトも多く存在するなか、どのCADソフトを利用できるかは重要な場合もあります。
構造については、大まかな構造を先行で仮決定しています。
しかし、実際に設計するものは、現実的な重量、大きさにより何度も構造計算を行いますので、初めの段階であらかじめ構造がイメージできていると、仕事がスムーズに進むことも多いです。
新卒採用の場合は、CADソフトについて、重要視されることは少ないですが、中途採用の場合は即戦力となるためどのCADを使用できるか重要視されることが多いです。
能力3:細部まで確認できる能力
図面は何枚も描かれます。
そのため整合性が合っていなかった場合、取り返しのつなかいことになります。
細かいところまで気付くことができる能力があると良いでしょう。
図面の中で、矛盾点がないか、寸法は正しく記載されているか、記号や文言の記載ミスはないか、等図面上でのミスは致命的となります。
何度も修正作業をしていると、「修正していると思い込む」部分が出てきてしまう恐れがあります。このような細部まで確認することが非常に重要となります。
集中力が必要な仕事が多くありますので、集中力は鍛えておくと良いでしょう。
土木設計の働き方は?
激務と呼ばれる土木設計職の皆様はどのような日常を暮らしているのでしょうか。
実際に働いている方の生活スタイルをイメージすることにより、ご自身がどのように生活していくかイメージしやすいのではないでしょうか。
土木設計職の方の生活スタイルをご紹介します。
土木設計の1日の流れは/h3>
人物:30代男性
勤務先:大手ゼネコン
職業:土木設計職
キャリア:入社10年
8:30 出勤 メールチェック
9:00 就業開始
10:00 打ち合わせ
11:00 要望・問い合わせに対する設計検討
12:00 昼食
13:00 打ち合わせ
14:00 抱えている案件の設計
17:30 定時 仕事がある場合は残業
19:00 施工中物件の設計問い合わせに関する検討
引き続き担当物件の設計
22:30 退社
24:00 就寝
人物:20代男性
勤務先:大手コンサル
職業:土木設計職
キャリア:入社5年
9:00 出勤 メールチェック
9:30 問い合わせに対する検討
10:30 担当物件の設計業務
12:00 昼食
13:00 施工中の担当物件へ設計監理
15:30 打ち合わせ
18:00 打ち合わせに関する内容のまとめ、検討
20:30 担当物件の設計業務
23:00 退社
24:30 就寝
それぞれのとある一日を探ってみました。かなりハードなスケジュールとなっています。
少々余裕がある場合は、19時~20時あたりに退社、かなり忙しい時は徹夜の場合もあります。
土木設計の休日や休暇は?
土木設計の休日は出勤することも多いです。
仕事を山ほど抱えている技術者は休日出勤をして仕事をやりくりしています。
休日出勤をすると、代休として平日を休む一般の方に対し、土木設計者はなかなか代休をとることが難しい現状があります。
最低でも週1は休んでいる方が多いです。
土木設計の年収は?
働くうえで、年収はかなり気になるところです。
土木設計職といっても、所属している会社によって差は大きく、大手の方が多い傾向にあるのは事実です。
今回は、平均的な土木設計職の年収をご紹介します
年齢別
20代:300万円~400万円
30代:450万円~550万円
40代:600万円〜700万円
50代:700万円~800万円
このようになっておりますが、大手の技術者の場合は、40代で1000万円を超えているかたもいます。
経験年数別
経験年数と年齢は同じようにアップしていきます。
入社初年度~5年目:300万円程度
5年目以降~10年目:400万円~500万円程度
10年目からは500万円~600万程度の年収の方が大部分を占めます。
15年目以降で役職がつく場合:700万円以上も可能
大企業の管理職クラスであれば課長クラスで900万円、部長クラスになると1200万円という方もいます。
たいして、中小企業の場合は、課長でも400万円台、部長クラスでも600万円に届かない方もいます。
夢や目標はとても大切ですが、できるだけ大きい企業に就職した方が、比較的給与を多くもらえます。
職種別:土木設計技士
土木設計技師とは、一級建築士のような国家資格ではなく、民間資格ですが企業によっては必須の資格となることもあります。
この資格を所持していた場合の中途採用募集要項での平均年収は400万円~500万円程度です。
資格の所持も必須ですが、経験年数が問われることが多いです。
職種別:技術士
技術士の平均年収はおよそ510万円程度です。
これは、土木設計職に限らない年収です。
技術士の資格を保有することにより、会社規定の資格手当を設けている会社もあります。
月に1万円~3万円程度のところが多いです。
社内評価は格段と上がりますが、基本給が大幅に上がることは少ない傾向にあります。
土木設計の将来性は?
冒頭でもご紹介しましたとおり、土木は公共事業であることが多いです。
そのため、なくなることはまずありません。
土木設計の将来性はかなり高いです。
土木設計の年収をあげるには?
できるだけ年収が高い方が良いですが、努力によって少しでも年収を揚げることは可能す。
900万以上となると、企業レベルもかなり高くなってきますが、600万円、700万円台は夢ではありません。
年収をあげるにはどのようにしたらよろしいでしょうか。
資格をとる
土木設計職では、技術士や土木設計技士といった資格が有効です。
土木設計には建築設計と異なり、資格がなければ仕事ができない、もしくは差し支えるといった国家資格等はありません。
しかし、資格をとることにより会社からの印象や転職時に有利に働きます。
また資格を取ることにより、資格手当が月に数万円支給されます。
それだけで年収が十数万円~30万円程度アップします。
土木技術者は、技術士を保有している方が多いです。現場の施工管理職は1級土木施工管理技師の資格を保有していますが、設計職では少ないです。
一級建築士も受験資格を得られます。一級建築士は土木設計者である限りでは有効に活用する場面は少ないですが、国家資格であり、難関資格であるため人物評価に繋がることもあります。
資格保有により、会社からの信頼度もあがり、給与がアップしていくこともあります。
経験を積む
経験を積むことにより、必然的に基本給や技術給がアップしていきます。
新しいことにどんどんチャレンジして多くの経験を積んでください。
設計から、設計監理、その他の設計士の仕事出の経験、さらには、橋や道路等、種類が偏ることなく様々な種類の経験をしておくことが大切です。
あまりそのようなチャンスがなければまずはそのようなチャンスを得られる職場への転職を検討してください。
また、転職するにあたり偏った種類の設計をしている場合はその種類のスペシャリストとなり、次のステップに進むとよりうまくいきやすくなるでしょう、
経験を積むことによって、次のステップに進むこともできます。
転職をする
より給与体系が良い企業に転職することもひとつの選択肢です。
ステップアップするには、資格、経験は絶対条件です。
転職で100万円、200万円以上年収がアップすることもあります。
土木設計職はどの会社も激務です。同じように働くのであれば少しでも給与が高い方がよりやりがいがあるのではないでしょうか。
ただし、ご自身で転職する際は、企業情報を十分に得る必要があります。
給与や福利厚生面で、失敗したという事例も多いです。
このリスクを回避するには、転職エージェントの活用が有効です。
転職エージェントは、プロの「転職案内人」の為、様々な企業情報、企業比較に非常に特化している為、転職希望者による希望にできるだけ近い企業を紹介してもらえます。
また、転職エージェントは、企業側の欲しい人材についても理解しています。
転職者の希望と企業側の希望がマッチしていることがベストとなるので、そのベストに近い転職活動をサポートしてくれるのです。
できるだけ失敗したくない方は、転職エージェントの活用をお勧めします。
最後に
土木設計は建築設計に比べあまり目立たない職業かもしれません。しかし、人々の生活を支え、便利にしていくかなり魅力的な職業です。
誰にでもできるような職業ではありません。
激務であることは確かですが、特殊な知識や経験も身につき、家族や知人にも自慢できるような構造物をつくる職業です。
設計が好き、力学が好き、物を作りたい、と考えているかたは是非、土木設計者になってみてはいかがでしょうか。
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