土木施工管理さんにとって工程管理業務は重要な仕事です。そこでよくでてくるのが工程表ですが、工程表の種類や、使いかた、運用する上での重要なポイントなどを実体験を踏まえてお伝えさせていただきます。
土木施工管理の工程管理業務とは?
工程管理は、定められた工期内において計画と実施の管理を目的としています。これは発注者側と受注者側が共有する資料の中で最も重要なものであり、それぞれに用途が違います。
発注者側は工期内に適切なスピードで、十分な品質・精度・安全性を保って仕事をしているか管理するための指標として確認します。また、地震や津波などの天災が起きたときに、損害額算定の根拠となる資料にもなります。一方、受注者側にとっての工程管理は工事を適切に運営していくかという側面から、経営の一部の役割を担います。
工程管理の仕事内容は?
工程管理という仕事は全ての管理の源でもあります。例えば工程が厳しすぎて作業員を拘束しすぎると、事故や怪我につながります。また、甘くしすぎると利益がまったくでない工事になりますので、協力会社に払うお金も捻出できません。
さらに決められた期間で仕事を行うことができないと出来上がった施設の品質が不良になったりすることもあります。このように、工程管理という仕事は、原価管理、安全管理、品質管理とも密接に結びついた重要な項目なのです。
横線式工程表とは?
横線式肯定表とは①ガントチャートと②バーチャートに大別されます。
ガントチャート(縦軸:作業名、横軸:作業の達成率)は棒グラフの一種であり、横棒によって作業の進捗状況を表します。工事計画を視覚的に表現するために用いられます。
バーチャート(縦軸:作業名、横軸:作業に必要な予定日数および実施状況)は棒グラフの一種であり、どのような順番で工種が何日かかるのかということを視覚的に表したものです。
曲線式工程表とは?
曲線式肯定表とは①グラフ式工程表と②出来高累計曲線に大別されます。
グラフ式工程表(縦軸:出来高または工事作業量、横軸:日数)は工種ごとの工程を表したものである。
出来高累計曲線(縦軸:出来高累計、横軸:時間)は施工量の時間的変化を表す図です。主に施工速度の管理に使われます。
ネットワーク工程表とは?
ネットワーク工程表とは1つの作業の遅れが他の作業や全体工程に及ぼす影響を素早く的確に把握することができる図のことを言います。
土木施工管理の工程表における注意点とは?
施工管理士になるためには国家資格必要であり、資格を取得すること自体は大切な要素ですが、資格を取得しただけで現場の知恵として生かすことは非常に難しいのです。実際、現場での実務経験が何よりも大事です。なぜなら現場で経験しないとどのように現場が流れていくか?実体験を通して学ばなければいけないことがほとんどだからです。実際には工程表を最初に作成したところでその工程表通りに行くことはまずありえません。
工程表だって現場の流れがわかってなかったら作成できませんよね。実際に現場を経験している方ならその事は重々承知していただけると思うのですが、例えば全く同じ建物を全く同じ業者を揃えて行ったとしても同じ状況で進行することはないです。
各現場、現場で全て異なってきます。現場は生き物です!その時に施工管理技士の経験値が役にたってくるのです!業者との信頼性であったり、いろいろな障害があった時の対処法など、そういったものは現場でしか経験出来ませんし、克服できません。現場でのたくさんの経験を経て本物の施工管理技士になっていくと思います。実際に頭で考えて出来るものは僅かなのです。工程表もいくつもの現場での経験の結果最高の工程表が作成出来ると思います。
工程表作成の注意点1
「常に余裕しろを作る。」
学生時代の定期テストを考えてみてください。緻密に計画された学習計画でも、あそびがなければ工程の遅延に対応できませんし、人間の行うことですから、常に最高のパフォーマンスを出し続けるということがいかに難しいかということは各自が肌身を通して感じておられることだと思います。
工事現場もまったく同じです。天災や災害など予期せぬことから、遅刻をしてしまったなど些細なことまでトラブルはつきものです。もちろん何も起きずに現場を終えることは現場を運営する人の理想であり、夢でもあります。でもだからこそ、不測の事態に備えて「余裕しろ」を作っておくことが大事です。それがいつしか自分たちの心の余裕となり、良い結果に繋がります。
工程表作成の注意点2
「計画上(積算上)の日数と実工程には乖離があることを理解する。」
当初考えられていた計画上の工程は多くの場合、標準歩掛りを基本とした積算による工程になっています。これは工事価格を決める時に使う指標になります。ただその時は競争入札中ですので、現場の細かい条件は決まっていませんし、協力会社の確保や、使用機械の確保もできていない状況で行うことだということを忘れてはいけません。
実際の工程は実際の作業員が何人現場に来てどの程度のスピードで仕事を終わらせていくことができるかという面で工程が決まります。当初は30人で同時に作業をしようと思っていたけれど、作業場所が確保できずに15人で仕事をすることになれば、単純に考えて工程が2倍になるわけです。こうした現場での臨機応変な対応を実施工程に組み込み、品質を保ちながら利益を出していくかということが、乖離を見るという作業になります。
工程表作成の注意点3
「発注者(お客様)の確認や承認も工程の一部であると考えよ。」
工事は受注者とそのグループが行いますが、発注者が何もしなくて良いかというとそうではありません。発注者は要所要所で進捗や品質を確認する義務があります。また、本来計画されていた設計では不備があってできないなんてことも現場ではありえます。そういう状況になった時には受注者から発注者にお伺いを立て、発注者の確認、承認を取り付ける必要があります。勝手に仕様を変更したり、確認を怠ると、訴訟の原因となってしまいますので注意しましょう。発注者も一人で決められることであればスピード感をもって対応してくれますが、大きな変更となると議会を通したり、有識者の意見を元に再精査したりする作業が出てきます。その間現場を止めていたのでは利益はどんどん圧迫され、作業員は離れていってしまいます。
このようにお客様の工程もしっかりと把握し、相互にwin-winな関係を築くことも大事な工程管理の一部なのです。
土木施工管理の工程管理における体験談
工程表の体験談1:「緊迫した工程管理 -巨大ケーソンを設置せよ-」
ケーソン据付工事で、ケーソンを据え付ける作業の工程を管理した時が最も緊迫しました。その理由はケーソンを運搬する起重機船が1日2000万という単位の仕事をするためです。連続5日間の据付で、単純計算して5日で1億円。1日の遅れが命取りになると若手社員ながら大きな責任を感じていました。
海が凪いでいれば決行、荒れていれば中止ということは頭では分かっていましたが、現実はそう単純ではありません。微妙な海象のときもあれば、午前中荒れていて、午後は何もなかったかのように凪いでいる日もあるような状況でした。お金のことはもちろん事業としては大切です。
でも作業をして頂く方々を危険に晒すということといつも隣り合わせでした。作業を中止するかどうかも若手社員である私の仕事。今を逃したら二度とチャンスが訪れないのではないか。そんな不安と戦いながら、職員、協力会社の職長と頭を抱えました。まるでテレビドラマや映画のワンシーンのようです。実際工事は何事もなかったかのように終わりましたが、いまだにあの緊迫した状況は忘れることができません。
工程表の体験談2:「冬の日本海の工程管理 -津波に備えよ-」
夏から始まって冬に終わるはずの工事の工程管理です。日本海の津波に備えた工事だったのですが、通常冬は日本海の時化が厳しく、作業はしないのが慣例です。しかし、原子力発電所などが津波に見舞われたことから、工事には多大なプレッシャーが掛かっていました。
冬の日本海も何パーセントかは仕事ができる余地があるため、その期間に集中して工事をするよう発注者と話し合いが行われました。しかし、通常の作業ではそのような管理は求められておらず、危険との隣りあわせでした。
毎日予報を管理し、気象予報士並みの知識を持った技術者が何度も何度も現場を稼働させるかの検討をしました。作業可否判断は前日に行うことが多いのですが、現場成功率を高めるために、当日の朝港を見て判断するというものでした。
朝3時か4時に現場を見に行って作業可否の判断。眠くて回らない頭のなかで、もし今日の判断がミスっていれば作業員を殺すかもしれないというプレッシャーの中、毎日のようにその作業が続きました。結果稼働率は20%強確保することが出来ました。
当初うるさく言っていた発注者の方も、それだけ努力してくれたのだから仕方がないと工事の繰り越しを認めてくれました。成功体験ばかりでなく、人命と天秤にかけた時に、工程をどう判断していくかというのはやはり日々の積み重ね、誠実さだと感じた日々でした。
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