監修: 林(施工管理ちゃんねる キャリアアドバイザー/元施工管理技士) / 執筆: 施工管理ちゃんねる編集部 / 監修者プロフィール
元施工管理技士。大学院工学研究科修了後、発電所・製鉄所・自動車工場など大型プラントの電気施工管理に従事。ビル設備管理を経て、人材紹介会社でRA・CA両面を経験。電気設備・建設・再生可能エネルギー領域の採用支援を行う。
結論: 電気主任技術者は「やめとけ」と言われるが、電験三種保有者の年収は400〜600万円が相場で、需要は拡大中。選任義務と慢性的な人材不足が続くため、取得価値は十分ある。
「電気主任技術者はやめとけ」——そう検索して、この記事にたどり着いたあなたは、おそらく資格取得か転職かの岐路に立っている。
正直に言おう。この「やめとけ」という声には、半分は的を射ている部分があり、半分は古い情報や誤解が混ざっている。一括りにして判断するのは危険だ。
この記事のポイント
- 「やめとけ」と言われる理由は主に5つ。ただし、そのうち3つは対策可能な課題だ
- 電験三種保有者の年収は設備管理系で400〜600万円、30歳で700万円超の事例も口コミに存在する
- 電験廃止の噂は現時点で根拠なし。むしろ2030年以降の需要拡大が見込まれる
- 実務経験の積み方次第で、電気管理技術者として独立という選択肢も現実的になる
- 施工管理ちゃんねる独自の面談データ(N=88件)から見えた「転職で後悔する人・しない人」の分岐点
電気主任技術者「やめとけ」と言われる実態 — 現場経験者の証言
電気主任技術者がやめとけと言われる理由は、大きく分けると5つある。ただ、これらは「入ってから知った」という後悔の声が多い。入口で把握しておくだけで、覚悟が変わる。
理由1: 電験三種の難易度が異常に高い
電験三種の合格率は2024年度で約12〜14%(出典: 一般財団法人電気技術者試験センター)。科目合格制度があるとはいえ、全科目突破には平均3〜5年かかる人が珍しくない。Yahoo!知恵袋では「初学者で6ヶ月・1日4時間の勉強が最低ライン」という声もある。これを社会人が続けるのは、胃がキリキリするほどしんどい。
理由2: 取っても工事はできない
これは意外と知られていない盲点だ。電気主任技術者の資格は「電気設備の保安監督」の資格であり、電気工事士の資格がなければ電気工事自体はできない。第一種電気主任技術者の平(第一種電気主任技術者)が解説している通り、電験に合格しても工事への従事は別資格が必要になる。「電験を取れば何でもできる」と思っていた人には、肩の力が抜けるような拍子抜け感がある。
理由3: 一人当たりの負担が重い
転職会議の口コミには「電験持ちかつ実務経験がある人が不足していて、主任技術者一人当たりの負担が重くなっている」という声がある(出典: 転職会議)。保安協会や設備管理会社では、一人の電気主任技術者が複数施設を掛け持ちする「外部委託」が一般的で、緊急対応や深夜呼び出しも起こる。
理由4: 給与が思ったより低い職場も多い
OpenWorkには「年収350万円・基本給25万円・賞与0円」という電気主任技術者の実態が記載されている(出典: OpenWork)。資格を持っていても、職場によっては資格手当が月5,000〜1.5万円程度しかつかないケースがある(施工管理ちゃんねる独自調査)。「電験があれば高収入」という期待との落差が、やめとけ論を生む。
理由5: 責任の重さと精神的プレッシャー
電気事業法により、自家用電気工作物を設置する事業者には電気主任技術者の選任が義務づけられている。つまり選任された電気主任技術者は、法的な保安責任者だ。事故が起きれば責任を問われる可能性がある。「責任は重いのに給与が低い」という構造が、じりじりとした不満を生む。
電気主任技術者の年収・給料を独自データで検証
「やめとけ」と「やれ」の分岐点は、多くの場合「年収が見合うか」にある。実態を整理しよう。
| 就業形態 | 年収レンジ | 備考 |
|---|---|---|
| 設備管理系(ビルメン・保安協会) | 400〜600万円 | 電験三種保有が前提 |
| 電力会社・プラント系 | 550〜800万円 | 電験二種以上で優遇 |
| 外部委託・独立(電気管理技術者) | 600〜900万円 | 実務経験5年以上が条件 |
| 化学・製造工場(自家用電気工作物) | 450〜700万円 | 設備規模で変動大 |
出典: 施工管理ちゃんねる独自調査・口コミデータ統合(2025年)
四国電気保安協会の口コミでは「電気主任技術者の年収533万円・範囲388〜850万円」(出典: ライトハウス)とある。転職会議では「30歳で年収700万、管理職以上だと1,000万超」という事例も確認できる(出典: 転職会議)。
監修者・林の見立てでは、「3年で電験三種が取れる。500万は十分射程圏」というのが現実的なラインだ。ただし「資格さえあれば稼げる」という単純な話ではない。資格手当は月5,000〜1.5万円が目安で、年収を上げるには職場選びと実務経験の積み方がセットで必要になる。
OpenWorkに記録された「年収350万円・賞与ゼロ」の事例は、資格取得後の職場選びに失敗した典型例だ。資格は入口に過ぎない。どこで使うかで、年収が2倍近く変わる。これは報われない、と感じた時の歯がゆさは相当なものだろう。
電気主任技術者「やめとけ」で後悔しないための判断基準
「自分には向いているのか」——この問いに答えないまま進むと、後悔する。施工管理ちゃんねるが独自面談データ(N=88件)から抽出した「後悔しない人・後悔する人」の分岐点は明確だ。
やめとけ寄りの判断基準(こんな人は立ち止まれ)
- 「電験さえ取れば転職できる」と資格ありきで考えている(実務経験なしでは選任されにくい)
- 勉強が苦手で、かつ試験の難易度を調べていない
- 「電気工事がしたい」のに電気主任技術者を目指している(工事と保安監督は別物だ)
- 給与300万台でも資格手当があれば十分、という職場に入り年収350万で止まる構造に入り込む
- 責任の重さに対して精神的な耐性が低い
進んでいい判断基準(こんな人には向いている)
- 電気設備の「仕組みを理解して管理したい」という欲求がある
- すでに電気工事士として現場経験があり、監督・管理側に回りたい
- 将来的に独立(電気管理技術者)を視野に入れている
- ビルメンや設備管理で腰を落ち着けてキャリアを積みたい
- 電力会社・プラント系でガツンと稼ぎたい気概がある
ある30代の電気工事士との面談でこんな言葉があった。「今の会社に勤めていても未来が見えない。夜勤2ヶ月で手当が2万弱。お盆休みも1日もなかった」——この状況から電気主任技術者へのキャリアシフトを検討していたが、まず実務経験をどこで積むかが課題だった。資格取得の意志は十分。ただ「取ったあと」の設計がなかった。
正直なところ、「電気主任技術者になりたい」という動機だけでは選考を通りにくい職場もある。「なりたい理由」と「なった後のキャリア像」がセットで語れる人が、転職で勝つ。
電気主任技術者への転職で成功する人・失敗する人の違い
施工管理ちゃんねる独自の面談データ(N=88件)から見えた「転職成功者の共通点」は2つある。
成功する人の共通点
1. 実務経験ありの状態で転職活動を開始している
電気主任技術者として選任されるには、実務経験が必要な場合が多い(試験合格者は即時選任可だが、認定取得者は実務5〜3年が必須)。電験三種の試験合格者でも、「合格はしたけど実務未経験」の状態で転職しようとすると選択肢が狭まる。実務と資格をセットで持ち込める人は、転職市場で圧倒的に強い。
2. 職場選びの基準が「資格手当額」ではなく「キャリアパス」にある
X(旧Twitter)では「電気主任技術者3大やめとけ会社」というリストが話題になることもある。「やめとけ」と言われる職場に共通するのは「資格を持った人を安く使う構造」だ。成功者は面接で「5年後の自分はこの会社でどうなれるか」を必ず確認している。
失敗する人のパターン
失敗パターンで最も多いのは、「電験三種を取れば職場が選べる」という過信だ。確かに希少性は高い。ただし、保安協会や設備管理会社の一部では、採用段階で「実務経験が積めたら辞める人」と見抜かれるケースがある。あるキャリアアドバイザーの言葉が刺さる。「実務経験のハンコがもらえるか面接段階で質問してくる人は、その年数だけ働いたら辞めると一発でわかる」——採用側もプロだ。
もう一つ。給与交渉を自分でやろうとして失敗する人も多い。ある30代の電気工事士は「年収のベースの交渉は絶対にできなかった。エージェントだからこそ言える本音がある」と語った。実際、転職エージェント経由で年収440万→520万(+80万円)の転職を成功させた事例もある(施工管理ちゃんねる面談データ)。
電気主任技術者の5年後キャリアパス
電気主任技術者のキャリアは「選任→外部委託→独立」という一本道だけではない。5年スパンで考えると、分岐が見えてくる。
パス1: 大手電力・プラント系でスペシャリストへ
関電工・きんでん・九電工などの大手電気工事会社やプラントエンジニアリング会社(日揮・東洋エンジニアリング等)では、電験二種以上を持つ技術者の需要が旺盛だ。再生エネルギー建設や半導体工場の電気設備管理への需要が2030年以降も続く見通しで、これらの企業のIRでも設備投資拡大が明記されている。5年後の年収は600〜800万円が現実的な射程圏だ。
パス2: ビルメン・保安協会で安定路線
四国電気保安協会・関東電気保安協会などでは、電験三種+実務経験でキャリアが安定する。ただし、転職会議の口コミにあるように「活気がない職場環境」「オフィス内が静かで話してはいけない雰囲気」という声もある(出典: 転職会議)。安定と引き換えに刺激が少ない、というトレードオフはある。これはネガティブな現実として受け止めておいた方がいい。
パス3: 電気管理技術者として独立
実務経験5年以上を積んだ後、電気管理技術者として独立するルートがある。複数の自家用電気工作物をフリーランスで受託し、年収600〜900万円を狙う。X(旧Twitter)でも「フリーランスで育児と仕事を両立している電気主任技術者もいる」という声がある。ただし独立後の顧客獲得と、緊急対応への一人での対処は、相当の覚悟が必要だ。
電気主任技術者の実務経験の積み方
電気主任技術者になる道は2つある。「試験合格」か「認定取得」か。認定ルートは大学の電気系学科+実務経験3〜5年が必要だ。どちらのルートでも、実務経験の質が後のキャリアを左右する。
実務経験として認められる職場の種類
- 自家用電気工作物の保安管理業務(ビル・工場・病院等の高圧受電設備の点検・保守)
- 電力会社・発電事業者での電気設備管理
- 保安協会での外部委託業務(関東電気保安協会・四国電気保安協会等)
- 大手電気工事会社での施工管理(電気系)
実務経験を積む際の落とし穴
ここが競合記事に書かれていない肝だ。実務経験の「認定」は、会社が証明書にハンコを押してくれるかどうかが前提になる。Yahoo!知恵袋には「電気管理技術者を目指す場合、ビルメン等はあまりおすすめしない。採用する側から見ると、実務経験のハンコがもらえるか面接段階で質問してくる人は、実務経験年数働いたら辞めると一発でわかる」という回答がある(出典: Yahoo!知恵袋、2024年4月)。
つまり、「実務経験を積んで辞める」という前提が透けて見える転職活動は、採用側にバレる。施工管理ちゃんねるの面談データでも、この「出口ありきの入口」で採用を断られた事例が複数あった。
スマートな実務経験の積み方
- まず電験三種の試験合格を優先する(認定より選任のハードルが低くなる)
- 電気施工管理技士の資格と組み合わせて、施工管理職から設備管理職へのキャリアシフトを狙う
- 保安協会より、自社で電気主任技術者を選任している工場・病院・大規模ビルを狙う(ハンコをもらいやすい)
- 入社前の面接で「実務経験証明書を将来発行してもらえるか」を確認する(聞き方に注意)
監修者・林は「やめても施工管理の資格と電験の経験があれば選択肢が多い。ただ実務経験の積み方だけは最初に設計しておかないと、後から取り返せない」と言い切る。この設計なしに動くと、3年後に「実務経験が認められなかった」という最悪のシナリオが待っている。
電気主任技術者の仕事はきつい — 何がきつくて、何はきつくないのか
「仕事がきつい」という声は多い。ただ「何がきついか」を分解すると、対策できるものと、そうでないものに分かれる。
本当にきつい部分
緊急対応・夜間呼び出し: 自家用電気工作物で事故・停電が発生した場合、電気主任技術者は責任者として即時対応が必要だ。深夜に電話が鳴り、現場に駆けつける。これは「役職と責任の重さ」そのものだ。年収600万でこれが続くなら報われる感覚があるが、年収350万で同じことをするのは、居ても立ってもいられない理不尽さがある。
法定点検・書類業務の多さ: 年次・月次の点検記録、保安規程の管理、経済産業省への報告業務。電気工事の現場に慣れた人ほど、この書類の山に「もっと手を動かしたいのに」という苛立ちを覚える。
複数施設の掛け持ち(外部委託): 電気管理技術者として独立した場合、担当施設が増えるほど日程管理と移動が複雑になる。「1日2〜3件叩ける」状態を作れれば収入は上がるが、体力と精神のすり減り方も比例する。
思ったほどきつくない部分
肉体的な過酷さは、電気工事の現場作業より格段に低い。ある現役電気工事会社社長が動画で話していたように、「70代・80代でも元気に活躍している電気主任技術者がいる」のが実態だ(YouTube: いたくら社長【電気工事は楽しい】相互電業)。身体への負担という意味では、長く続けられる職業だと言える。
また、X(旧Twitter)で話題になる「やめとけ3大会社」のような特定企業を避ければ、職場環境はコントロールできる。問題の多くは「業種」ではなく「職場選び」に起因する。
電験廃止の噂は本当か — 制度変更の現状と今後
「電験廃止」という言葉を見かけることがある。結論から言えば、2025年時点で電験三種・二種・一種の廃止は予定されていない。
廃止の噂が出た背景
2023年頃から「電験三種の受験資格や試験制度が変わる」という情報が広がった。実際に起きたのは「廃止」ではなく、試験回数の増加(年2回実施)と科目合格制度の整備という「使いやすくする方向への改革」だ。試験をなくすどころか、受験しやすくする方向に動いている。
電験の将来性 — むしろ需要が拡大している
電気事業法が改正されない限り、自家用電気工作物への電気主任技術者選任義務は続く。そしてデータセンター、半導体工場、再生エネルギー施設の建設ラッシュが続く中で、高圧受電設備を持つ施設は増え続けている。関電工・きんでん・九電工のIRでは、データセンター向け電気設備工事の受注拡大が明記されており、これらの施設には電気主任技術者が必要だ。
Yahoo!知恵袋には「電気主任技術者の将来性が心配」という質問があるが、回答の多くは「資格=お金に直結しないが、需要は確実にある」という内容だ(出典: Yahoo!知恵袋、2025年4月)。「電験廃止」を心配するより、取得後の使い方を考える方が生産的だ。
認定制度の変化には注意が必要
一方、認定取得ルート(大学の学歴+実務経験)については、実務経験の認定基準が厳格化される動きがある。「認定で楽に取れる」という時代ではなくなりつつある。試験合格ルートの価値が相対的に上がっている、とも言える。
よくある質問
Q. 電験三種を持っていると、電気工事もできますか?
A. できません。電気主任技術者の資格は「電気設備の保安監督」のための資格であり、電気工事士の資格なしに電気工事を行うことは電気工事業法に抵触します。電気工事もしたい場合は、第一種電気工事士を別途取得する必要があります。ただし、電気主任技術者が選任されている施設の電気工作物については、法令上は無資格でも工事が可能な例外があります(電気主任技術者が監督責任を負う場合)。
Q. 電験三種の実務経験なしで転職はできますか?
A. 試験合格者であれば、実務経験なしでも電気主任技術者として選任される可能性はあります。ただし、実際の現場では「実務未経験の電験三種合格者」を選任したがらない企業も多い。特に小規模な保安管理業務では、即戦力が求められます。電験三種合格後、まず電気工事士や施工管理の実務を積みながら保安管理の経験を加えていくルートが、転職成功率を上げる現実的な方法です。
Q. 電験廃止はいつ頃の話ですか?
A. 現時点(2025年)で電験三種・二種・一種の廃止は予定されていません。むしろ試験は年2回実施に拡大され、科目合格制度も整備されています。電気事業法の改正がない限り、自家用電気工作物への選任義務は続くため、資格の需要が消えることはありません。「廃止」という情報は根拠のない噂として受け止めてください。
Q. 電気主任技術者と電気施工管理技士、どちらを先に取るべきですか?
A. 目指すキャリアによって異なります。「設備管理・保安監督・独立」を目指すなら電験三種を先に。「大規模工事の現場管理・ゼネコン・サブコン」を目指すなら電気施工管理技士を先に取るべきです。両方持てば市場価値は大幅に上がりますが、電験三種は難易度が高く取得に年数がかかるため、施工管理技士で実績を作りながら電験を並行学習する人が施工管理ちゃんねるの面談では最も多いパターンです。

