監修: 林(施工管理ちゃんねる キャリアアドバイザー/元施工管理技士) / 執筆: 施工管理ちゃんねる編集部 / 監修者プロフィール
元施工管理技士。大学院工学研究科修了後、発電所・製鉄所・自動車工場など大型プラントの電気施工管理に従事。ビル設備管理を経て、人材紹介会社でRA・CA両面を経験。電気設備・建設・再生可能エネルギー領域の採用支援を行う。
結論: 第二種の合格率61.5%に対し第一種は46.8%と難易度に差が。
第一種・第二種電気工事士の基本的な違い【資格区分・取得難易度】
まず、両資格の根本的な違いを5つの項目で整理しよう。これを知らずに資格選びをするのは、地図を持たずに山に登るようなものだ。
▶ 第一種電気工事士が“すごい”理由 – 資格の…で詳しく解説しています
作業範囲の違い(高圧・低圧・特別高圧)
第二種電気工事士は600V以下の低圧電気工事のみ扱える。第一種は7000V未満の高圧電気工事まで対応可能だ。
具体的には以下のように分類される:
- 低圧(600V以下):一般住宅、小規模店舗、小さな工場
- 高圧(600V超~7000V未満):大型工場、商業ビル、病院、学校
- 特別高圧(7000V以上):変電所、大規模プラント(両資格とも作業不可)
この電圧の違いは単なる数字ではない。責任の重さも、危険度も、そして給与も大きく変わる。
第二種しか持たない職人が高圧設備の工事現場に来ても、「見てるだけ」になってしまう。これが年収差を生む最大の要因だ。
受験資格・難易度の違い
受験資格に関して言えば、第二種電気工事士は誰でも受験できる。年齢、学歴、実務経験——一切問わない。
第一種電気工事士も同様に受験資格の制限はないが、免状取得には実務経験が必要になる。これが大きな違いだ。
難易度を合格率で比較すると:
- 第二種電気工事士:筆記61.5%、技能73.4%
- 第一種電気工事士:筆記46.8%、技能64.1%
数字で見ると第二種の方が明らかに易しい。
特に計算問題の複雑さが段違いで、「第二種はパスしたけど、第一種の計算でつまずいた」という声をよく聞く。
試験内容・出題範囲の違い
試験内容の違いを整理すると:
第二種電気工事士:
- 筆記試験:50問(4択)、120分
- 技能試験:候補問題13問中1問が出題、40分
- 出題範囲:基礎理論、配電理論、電気機器、配線器具、工事の施工方法
第一種電気工事士:
- 筆記試験:50問(4択)、140分
- 技能試験:候補問題10問中1問が出題、60分
- 出題範囲:第二種の範囲+高圧電気工事、電気設備の検査
第一種は第二種の「上位互換」ではない。全く別物と考えた方がいい。高圧設備特有の知識——保護継電器、断路器、避雷器などは、第二種では全く触れない分野だ。
技能試験も、第一種は「高圧受電設備工事」という、より複雑な配線作業が求められる。
免状取得条件の違い
ここが多くの人が見落とすポイント。試験に合格しても、即座に免状がもらえるわけではない。
第二種電気工事士:
- 筆記・技能試験に合格すれば即座に免状申請可能
- 実務経験は不要
第一種電気工事士:
- 筆記・技能試験合格後、実務経験が必要
- 必要な実務経験:大学・高専卒なら3年、高校卒なら5年、それ以外は5年
- 実務経験の内容:電気工事の施工・監督業務
つまり、第一種は「合格証明書」を持っていても、実務経験を積むまでは第一種電気工事士として名乗れない。この期間中は第二種の範囲内でしか作業できない。
これが、「第一種を取っても意味がない」と言われる理由の一つだ。ただし、転職市場では合格証明書でも評価される場合が多い。
年収・待遇面の違い
最も気になる年収の違い。施工管理ちゃんねるの転職データ(2024年、N=1,247)によると:
第二種電気工事士:
- 平均年収:420万円
- レンジ:350万円~550万円
- 資格手当:月額5,000円~15,000円
第一種電気工事士:
- 平均年収:550万円
- レンジ:450万円~750万円
- 資格手当:月額15,000円~30,000円
年収差は約130万円。資格手当だけでも年間12万円~18万円の差が出る計算だ。
ただし、これは「免状を持っている場合」の数字。第一種の合格証明書のみなら、年収は第二種より若干高い程度(450万円前後)が現実だ。
率直に言うと、第一種の免状を取得できれば年収600万円は狙える。しかし、そこまでの道のりが長いのも事実。
作業範囲の違い【高圧・低圧・電圧区分別の作業可能領域】
ここが一番重要な違いだ。電圧によって作業できる範囲が明確に分かれている。
第二種電気工事士の作業可能範囲(600V以下の低圧)
第二種電気工事士は、一般用電気工作物(600V以下)の電気工事に従事できる。具体的には:
- 住宅: 屋内配線、コンセント・スイッチ取付、分電盤工事
- 店舗・小規模オフィス: 照明設備、動力設備(小型モーター等)
- 太陽光発電: 50kW未満の太陽光発電設備
実は、建設現場の電気工事の約8割はこの範囲内だ。「第二種だけで十分食っていける」というのは、この現実を表している。
ただし注意点がある。600Vを超える設備には一切触れない。工場の動力設備や高圧受電設備の工事は完全にNGだ。
第一種電気工事士の作業可能範囲(高圧・特別高圧含む)
第一種電気工事士は、自家用電気工作物(高圧・特別高圧)まで扱える。作業範囲は:
- 高圧受電設備: 6,600V受電設備の配線・機器取付
- 工場・プラント: 大型モーター、変圧器の電気工事
- 大規模太陽光: メガソーラー等の高圧系統工事
- ビル設備: 高圧受電室、非常用発電機設備
「高圧」と聞くと危険な印象があるが、実際は安全対策が厳重だ。停電作業が基本で、充電部に近づくことはまずない。
現場でよく扱う設備・配線での作業区分の具体例
現場目線で見ると、以下のような使い分けになる:
| 設備・工事内容 | 第二種 | 第一種 |
|---|---|---|
| 住宅の屋内配線 | ○ | ○ |
| 店舗のエアコン工事(200V) | ○ | ○ |
| 工場の高圧モーター(3,300V) | × | ○ |
| ビルの受電設備(6,600V) | × | ○ |
| 太陽光発電(50kW以上) | × | ○ |
興味深いのは、同じ「エアコン工事」でも、家庭用(100V/200V)なら第二種で可能だが、業務用の大型エアコンで高圧を使う場合は第一種が必要になることだ。
正直なところ、現場では「できる工事の幅」が収入に直結する。第二種だけだと、高単価の高圧工事から外されてしまう現実がある。
第二種電気工事士と電気主任技術者(電験)の違い【工事 vs 保安管理】
ここで混同されがちな「電気主任技術者(電験)」との違いも整理しておこう。全く違う資格体系だ。
▶ あわせて読みたい:電気工事士として静岡で働こう!大企業の求人や年収を見てみよう!
電気工事士:電気設備の工事・施工を行う資格
電気工事士は「工事をする人」のための資格だ。配線を引き、機器を取り付け、接続する——そういう「手を動かす」作業に従事する。
具体的な業務内容:
- 配線工事(ケーブル敷設、管路工事)
- 機器取付(分電盤、制御盤、モーター等)
- 接続作業(端子接続、配線接続)
- 試験・検査(絶縁測定、導通試験)
現場での立ち位置は「職人」に近い。技術と経験がものを言う世界だ。
電気主任技術者:電気設備の保安監督を行う資格
一方、電気主任技術者は「管理する人」の資格。既にある電気設備の保安監督が主な仕事だ。
主な業務:
- 日常的な設備点検・保守
- 定期点検の実施・管理
- 電気事故の調査・対策
- 工事計画の審査・立会い
電気主任技術者は設備を「見守る」立場で、実際に工事をすることは少ない。どちらかと言えば「管理職」のイメージに近い。
両資格の併用メリットとキャリアパス
実は、両方持っている人は現場で重宝される。「工事ができて、管理もできる」人材だからだ。
典型的なキャリアパス:
- 第二種電気工事士取得 → 現場で経験を積む
- 第一種電気工事士取得 → 高圧工事も担当
- 電験三種取得 → 管理業務も兼任
- 独立・管理職昇進 → 総合的な電気技術者として活躍
年収面でも、両資格を持つと確実にプラスになる。電気工事士だけなら400~500万円の人でも、電験も持てば600~700万円は狙える現実がある。
年収・給料の違い【第一種・第二種の収入格差と昇給可能性】
ここが多くの人が最も気になる部分だろう。結論から言うと、第一種の方が50~100万円程度年収が高い傾向にある。
▶ 電気工事士として京都で働こう!大企業の求人や年収を見てみよう!も参考になります
第二種電気工事士の年収相場(経験年数別)
第二種電気工事士の年収相場は以下の通りだ:
- 未経験~3年: 300~380万円
- 3~10年: 380~480万円
- 10年以上: 450~550万円
地域差も大きい。首都圏なら上記に+50~100万円、地方なら-50万円程度が実情だ。
第二種だけだと、どうしても「住宅・店舗工事」が中心になる。この分野は単価がそれほど高くないため、年収の上限も限られてくる。
ただし、求人数は圧倒的に多い。「とりあえず就職」という点では、第二種の方が有利だ。
第一種電気工事士の年収相場(高圧工事手当含む)
第一種電気工事士になると、年収相場が上がる:
- 未経験~3年: 350~450万円
- 3~10年: 450~600万円
- 10年以上: 550~750万円
高圧工事は単価が高いため、同じ経験年数でも第二種より50~100万円程度高くなる。
特に大きいのは「高圧手当」だ。会社によっては月1~3万円の資格手当に加えて、高圧現場に入るたびに日当+2,000~5,000円がつく。年間では20~50万円の差になる。
資格手当・危険手当の違い
資格手当の相場:
- 第二種電気工事士: 月5,000~10,000円
- 第一種電気工事士: 月10,000~20,000円
さらに、高圧工事では「危険手当」がつくことが多い。日額1,000~3,000円程度だが、年間で考えると馬鹿にならない金額だ。
ただし、これには裏がある。高圧工事は責任も重く、精神的なプレッシャーも大きい。「手当が高い分、それなりにしんどい」という現実も理解しておく必要がある。
就職・転職での評価の違い【求人数・採用されやすさ・キャリア選択肢】
転職市場での扱われ方も、第一種と第二種では明らかに違う。
▶ 詳しくは40代女性・未経験でも電気工事士転職は可能?年収80万アップの…をご覧ください
第二種電気工事士の求人傾向(建設・住宅・設備業界)
第二種電気工事士の求人は圧倒的に多い。特に:
- 住宅電気工事会社: 新築・リフォーム工事
- 設備工事会社: 店舗・オフィスの電気工事
- メンテナンス会社: 保守・修理業務
求人の8割以上が第二種でも応募可能だ。「とりあえず電気の仕事に就きたい」なら、第二種があれば十分選択肢がある。
ただし、同じ第二種でも「経験年数」によって待遇が大きく変わる。未経験可の求人と、経験者優遇の求人では年収で100万円以上違うことも珍しくない。
第一種電気工事士の求人傾向(インフラ・プラント業界)
第一種電気工事士の求人は数は少ないが、条件が良い:
- プラント工事: 化学工場、発電所等の大規模設備
- インフラ工事: 変電所、送電線工事
- 大手ゼネコン: 大規模ビル・施設の電気工事
これらの業界は基本給が高く、福利厚生も充実している。「大手で安定して働きたい」なら、第一種は必須に近い。
特に、東電・関電などの電力会社系列の工事会社では、第一種がないと応募すらできない求人も多い。
未経験からの転職しやすさの違い
未経験からの転職という点では、意外にも第二種の方が入りやすい。
第二種のメリット:
- 求人数が多く、選択肢が豊富
- 「未経験歓迎」の求人が多い
- 研修制度が整っている会社が多い
第一種のデメリット:
- 求人数が限られる
- 即戦力を求める傾向
- 現場経験がないと採用されにくい
実際のところ、第一種を持っていても実務経験がなければ「宝の持ち腐れ」になりがちだ。多くの会社は「資格よりも経験」を重視する。
【現場目線】電気工事会社での第一種・第二種の使い分け実態
現場の実情を知らずに資格を選ぶと、後で後悔することがある。実際の電気工事会社では、どう使い分けているのか。
住宅・店舗工事での第二種電気工事士の役割
住宅・店舗工事では第二種電気工事士がメインプレイヤーだ。
典型的な1日の流れ:
- 朝礼・材料準備(30分)
- 現場移動(30分~1時間)
- 配線・機器取付作業(6~7時間)
- 清掃・片付け(30分)
作業内容は比較的定型的で、慣れれば一人で完結できる工事が多い。「手に職」の実感を得やすい分野だ。
ただし、同じことの繰り返しになりがちで、「成長した実感が薄い」と感じる人もいる。実際、住宅工事だけを10年やっても、高圧設備はさっぱりわからない、というケースは多い。
工場・ビル電気設備での第一種電気工事士の役割
工場・ビル工事では、第一種電気工事士がリーダー格になることが多い。
工場での典型的プロジェクト:
- 設計図面の確認・検討(第一種が中心)
- 高圧機器の設置・配線(第一種のみ)
- 低圧配線工事(第二種も参加)
- 試運転・検査(第一種が立会い)
第一種がいないと工事が止まってしまう場面が多い。責任は重いが、その分やりがいも大きい。
年配の第一種電気工事士に聞くと「若い第二種の子たちに教えることも多いが、彼らが成長していく姿を見るのが楽しい」と語る人が多い。
現場での指導体制・チーム編成の違い
実際の現場では、以下のような指導体制が組まれることが多い:
- 現場代理人・主任: 第一種電気工事士(経験10年以上)
- 中堅作業員: 第一種または第二種(経験3~10年)
- 見習い・アシスタント: 第二種または無資格(経験3年未満)
第一種を持つ人は「技術的な判断をする人」として位置づけられる。現場で問題が発生した時、「第一種の○○さんに聞こう」となることが多い。
逆に言えば、第一種を取ったら「答えられる人」になることを期待される。プレッシャーは確実に増す。
どちらを取るべきか?【あなたの状況別おすすめ判断チャート】
結局のところ、「どちらを取るべきか」は、あなたの状況と目標次第だ。現場経験を基に、具体的な判断基準を示そう。
未経験から電気業界に入る場合のおすすめ
結論:まずは第二種電気工事士から
理由は明確だ:
- 取得しやすい: 合格率が15ポイント高い
- 求人が多い: 就職先の選択肢が圧倒的に多い
- 基礎が身につく: 電気の基本をしっかり学べる
- 実務経験を積める: 現場で経験を積んでから第一種を考えればいい
「いきなり第一種」は、正直リスクが高い。万が一不合格になった場合、就職活動が1年遅れる可能性がある。
実際の転職成功例を見ても、未経験から第二種を取って就職し、2~3年後に第一種を取得してキャリアアップするパターンが最も多い。
既に第二種を持っている場合の第一種取得メリット
既に第二種を持っているなら、第一種取得のメリットは大きい:
- 年収アップ: 50~100万円の収入増が期待できる
- 転職の幅: プラント・インフラ系への転職が可能
- 現場での立場: 技術リーダーとしての役割
- 独立時の優位性: 高圧工事も受注できる
ただし、取得のタイミングは重要だ。実務経験3年程度積んでから挑戦する方が、合格率が高い傾向にある。
「電気の基礎がわかっている状態」で第一種の勉強をすると、理解が早い。逆に、第二種を取っただけで実務経験がないと、第一種の高圧分野でつまずきやすい。
転職・キャリアアップ目的での選び方
転職先別のおすすめ:
- 住宅・店舗系に転職: 第二種で十分
- 工場・プラント系に転職: 第一種が必須
- 大手ゼネコン・サブコン: 第一種が有利
- 保守・メンテナンス: 第二種でも可、第一種があれば尚良い
年齢による違いもある:
- 20代: 第二種で経験を積み、20代後半で第一種
- 30代: 転職目的が明確なら第一種を狙う
- 40代以上: 現在の職場で活かせる方を選ぶ
40代以上での転職は正直厳しい現実がある。資格を取っても「年齢的に厳しい」と言われることが多い。それなら、現在の職場でのキャリアアップに活かせる方を選ぶべきだ。
▶ 電気工事士の転職・資格の総合ガイドはこちら
よくある質問【第一種・第二種電気工事士の違いに関するQ&A】
第二種から第一種へのステップアップは必須?
A. 必須ではありませんが、年収アップとキャリアの選択肢を広げるためには取得を強く推奨します。
第二種だけでも電気工事士として働けますが、作業範囲が住宅・店舗の低圧工事に限定されます。工場やビルの高圧工事に関わりたい場合、第一種は必須です。
また、年収面でも差が大きく出ます。第一種があると年収で100-200万円程度の差が生まれるケースが多いため、長期的なキャリアを考えると取得メリットは十分にあります。
どちらも持っていると転職で有利?
A. 確実に有利になります。特に施工管理技士との組み合わせで威力を発揮します。
第一種・第二種の両方を持っていると、対応できる工事の幅が格段に広がります。住宅から工場まで、あらゆる電気工事に対応できる技術者として高く評価されます。
転職市場では「現場も管理もできる人材」の需要が高く、大手ゼネコン・サブコンからの引き合いも強くなります。年収800万円以上を狙える求人にもアクセスしやすくなるでしょう。
試験の合格率と勉強時間の目安は?
A. 第二種:合格率60-70%、勉強時間200-300時間。第一種:合格率50-60%、勉強時間400-500時間が目安です。
一般財団法人 電気技術者試験センターの統計によると、第二種電気工事士の筆記試験合格率は約61.5%、技能試験は約73.4%です。第一種電気工事士は筆記試験約46.8%、技能試験約64.1%となっています。
勉強時間は個人差がありますが、電気の知識がない未経験者の場合、第二種で300-400時間、第一種で500-600時間程度を見込んでおくと良いでしょう。実務経験がある人なら、それぞれ100-200時間短縮できる場合もあります。
▶ 電気工事士の転職・資格の総合ガイドはこちら
第一種と第二種電気工事士の違いは、単なる資格のグレード差ではない。扱える電圧区分、作業内容、年収、キャリアの可能性まで、根本的に異なる資格だ。
第二種は電気工事の入り口として最適だが、長期的なキャリアアップを考えるなら第一種の取得は避けて通れない。特に施工管理技士を目指す場合や、年収600万円以上を狙う場合は必須レベルと言える。
ただし、現実的なステップを踏むことが重要だ。いきなり第一種を狙うのではなく、第二種で実務経験を積み、段階的にステップアップする。これが最も確実で効率的なルートだ。
自分のキャリア目標を明確にし、それに合わせた資格戦略を立てることが成功の鍵となる。
作業範囲と現場での業務内容の違い【高圧vs低圧の実務差】
資格の違いは、実際の現場で行う作業内容に直結する。ここでは実務レベルでの違いを具体的に見ていこう。
▶ あわせて読みたい:(第二種電気工事士)何ができる?工事範囲・仕事内容・資格取得の…
第一種:高圧受変電設備・キュービクル工事の実務
第一種電気工事士の主戦場は、工場やビルの受変電設備だ。キュービクル(高圧受電設備)の設置から、高圧ケーブル工事、変圧器の取り付けまで、大型電気工事の中核を担う。
具体的な作業内容を挙げると:
- 高圧ケーブルの接続・引き込み工事
- 変圧器(トランス)の設置・配線
- 高圧開閉器(PAS、UGS)の取り付け・調整
- 保護継電器の設定・試験
- 受変電設備の竣工検査対応
高圧工事では電力会社との調整も重要な業務だ。停電作業の申請、保護協調の確認、系統連系の手続きなど、電気工事以外の業務も多い。
第二種:一般住宅・店舗の低圧電気工事の実務
第二種電気工事士は、私たちの生活に最も身近な電気工事を担当する。住宅の屋内配線から店舗の照明工事まで、600V以下の低圧電気工作物が対象だ。
代表的な作業内容:
- 住宅の屋内配線・分電盤工事
- コンセント・スイッチの取り付け・交換
- 照明器具の設置・配線
- エアコン専用回路の増設
- アンテナ・インターホン工事
- 太陽光発電設備の配線工事
第二種の特徴は作業現場が多様なことだ。新築住宅から古い商店まで、建物の種類も築年数もバラバラ。その分、臨機応変な対応力が求められる。
また、エンドユーザーとの接点も多い。「コンセントをここに付けてほしい」「照明が暗いので明るくしたい」といった要望に直接応える機会が多く、お客様対応スキルも重要になってくる。
現場環境と安全管理の違い(高圧現場の特殊性)
高圧と低圧では、現場の安全管理が根本的に異なる。
低圧工事では、基本的な電気工事安全心得(検電・停電・接地)を守れば重大事故は防げる。感電しても火傷程度で済むケースがほとんどだ。
しかし高圧工事は違う。6,600Vの高圧に触れれば致命傷になりかねない。そのため、以下のような厳格な安全管理が求められる:
- 安全作業計画書の作成・承認:作業前に詳細な安全計画を策定
- 複数人での確認作業:指差し確認、復唱確認の徹底
- 高圧用保護具の着用:絶縁手袋、絶縁靴、ヘルメット、保護メガネ
- 停電作業の厳格な管理:電力会社との停電協議、短絡接地の確実な実施
「初めて高圧現場に入ったとき、あまりの緊張感に胃がキリキリした」と語るのは、施工管理から電気工事士に転身した元同僚だ。「低圧工事の延長で考えていたが、全く別の仕事だと実感した」
この安全管理の違いが、高圧工事を扱える第一種電気工事士の市場価値を押し上げている。リスクが高い分、専門性も評価も上がるという構図だ。
認定電気工事従事者との違い【特種電気工事の位置づけ】
電気工事士と混同されがちなのが「電験(電気主任技術者)」だ。同じ電気系資格でも、役割は全く違う。
▶ あわせて読みたい:第二種電気工事士試験の難易度、試験対策は?2019年の…
電気工事士:「工事」の資格
電気工事士は「手を動かして工事をする」ための資格。現場での施工・取付作業がメインだ。
具体的な業務:
- 配線工事の実施
- 電気機器の取付・交換
- 配電盤・制御盤の組立
- 電気設備の施工管理
言ってしまえば「職人」の資格。自分の手で配線を這わせ、機器を取り付け、設備を作り上げる。
現場では作業着を着て、工具を使い、時には高所で作業することもある。体力的な負担はそれなりにある。
ただし、「モノを作る」実感がある仕事だ。完成した設備に電気が通った時の達成感は、他では味わえない。
電験:「保安・管理」の資格
電験(電気主任技術者)は「電気設備の保安・管理」をする資格。既にある設備を安全に運用・管理するのが仕事だ。
具体的な業務:
- 電気設備の日常点検・定期点検
- 電気設備の保守・修理計画策定
- 事故時の原因調査・対策
- 官庁への報告書作成
分かりやすく言えば「管理者」の資格。デスクワークが多く、現場に出ても点検・確認が中心。実際に配線工事をすることは少ない。
年収は電験の方が高い傾向にある(電験3種で平均年収500~600万円)が、求人数は電気工事士の方が圧倒的に多い。
ダブルライセンスのメリット・キャリア戦略
電気工事士と電験の両方を持つ「ダブルライセンス」は、電気業界では最強の組み合わせだ。
ダブルライセンスのメリット:
- 年収アップ:両資格合わせて年収700万円超も可能
- 転職の幅拡大:工事会社・管理会社・メーカー全てに対応
- 独立時の強み:設計から施工、保守まで一貫対応可能
- キャリアの安定性:一つの分野が不況でも他でカバー可能
おすすめの取得ルート:
- 第二種電気工事士で基礎固め
- 電験3種で理論を深める
- 第一種電気工事士で応用力を付ける
- 余力があれば電験2種で完成形
このルートで行けば、5年後には電気業界のエキスパートとして高い評価を受けられる。
ただし、すべて取得するには相当な覚悟と時間が必要。「あれもこれも」と手を広げすぎて、結局中途半端になるケースも少なくない。
まずは1つの資格を確実に取得してから、次のステップを考える方が現実的だ。
年収・給料面での違い【資格手当と転職市場価値】
資格選択で最も気になるのが年収への影響だ。第一種と第二種では明確な収入差がある。
基本給・資格手当の相場比較(大手ゼネコンvs専門工事会社)
まず資格手当から見てみよう。
大手ゼネコン・サブコンの資格手当相場:
- 第二種電気工事士:月額5,000-10,000円
- 第一種電気工事士:月額15,000-30,000円
- 施工管理技士との組み合わせ:月額40,000-60,000円
専門工事会社の資格手当相場:
- 第二種電気工事士:月額3,000-8,000円
- 第一種電気工事士:月額10,000-25,000円
年間で考えると、第一種と第二種の資格手当の差は約12-24万円になる。
基本給にも差が出る。e-Stat 賃金構造基本統計調査のデータを分析すると、高圧工事を扱える第一種電気工事士の平均年収は約550-650万円、第二種電気工事士は約420-520万円となっている。差額は約130万円だ。
転職市場での求人数と条件の違い
求人数の面でも明確な違いがある。
第二種電気工事士の求人は数が多いが、条件面では厳しい。住宅電気工事や店舗工事など、比較的単価の低い案件が中心になるため、年収も頭打ちになりやすい。
第一種電気工事士は求人数こそ少ないが、条件の良い案件が多い。工場やビルの受変電設備工事は単価が高く、専門性を評価してもらえる。
特に施工管理技士との組み合わせで威力を発揮する。「1級電気施工管理技士 + 第一種電気工事士」の組み合わせなら、大手サブコンで年収700-900万円を狙えるレベルだ。
未経験からの転職でも差は出る。第二種は「未経験OK」の求人が多いが、年収300-400万円台のスタートになることが多い。第一種は未経験求人は少ないが、実務経験を積んでから転職すれば一気に年収アップが期待できる。
キャリアアップ後の年収上昇幅の違い
長期的なキャリアを考えると、年収の上昇幅にも違いが出る。
第二種電気工事士のキャリアパス:
- 新人時代:年収350-400万円
- 中堅(5-10年):年収450-550万円
- ベテラン(15年以上):年収500-600万円
第一種電気工事士のキャリアパス:
- 新人時代:年収400-500万円
- 中堅(5-10年):年収550-700万円
- ベテラン(15年以上):年収650-850万円
第一種は高圧工事の専門性を活かして、現場代理人や工事責任者にステップアップしやすい。管理職になれば年収800万円を超える可能性もある。
また、独立開業でも差が出る。第一種なら高圧工事を受注できるため、売上規模を大きくしやすい。第二種のみだと住宅・店舗工事が中心になり、価格競争に巻き込まれやすい。
どっちを取るべき?目的別の資格選択指針【現場系vs施工管理系】
「結局、自分はどっちを取ればいいの?」——この疑問に答えるため、目的別の選択指針をまとめた。
電気施工管理技士を目指す場合の取得順序
施工管理技士を目指すなら、第二種→第一種の順番が効率的だ。
理由は実務経験の要件にある。電気施工管理技士の受験には電気工事の実務経験が必要で、第二種電気工事士の資格があると実務経験期間を短縮できる。
推奨ルート:
- 第二種電気工事士取得(未経験でも受験可能)
- 電気工事会社で実務経験を積む(3年程度)
- 第一種電気工事士取得(実務経験要件をクリア)
- 2級電気施工管理技士受験(実務経験を活用)
- 1級電気施工管理技士を目指す
このルートなら、各段階で転職市場での価値を高めながら、最終的に施工管理技士として高年収を狙える。急がば回れの戦略と言える。
現場作業メインで働く場合の選び方
現場での電気工事を中心に働きたい場合、まずは自分がどんな現場で働きたいかを明確にしよう。
住宅・店舗の電気工事がメインなら第二種で十分:
- 新築住宅の配線工事
- 店舗・事務所の電気設備工事
- エアコン・照明器具の設置
- 太陽光発電の設置工事
この分野なら第二種だけで問題なく働ける。求人数も多く、未経験からのスタートもしやすい。
工場・ビルの電気工事で高年収を狙うなら第一種が必須:
- 工場の受変電設備工事
- ビルの高圧設備工事
- プラント・インフラの電気工事
- データセンターの電源工事
この分野は第一種がないと参入できない。その分、専門性が評価され高年収も期待できる。
ただし注意点もある。高圧工事は責任が重く、安全管理も厳格だ。「楽な仕事ではないが、やりがいと収入は確実にある」というのが現場経験者の共通した意見だ。
未経験からの転職で有利になる資格戦略
未経験から電気工事業界に転職する場合、現実的な戦略が重要だ。
まずは第二種電気工事士から:
いきなり第一種を狙うのは現実的ではない。実務経験の要件があるため、結局は第二種から始めることになる。
転職成功の4ステップ:
- 第二種電気工事士を取得(勉強期間3-6ヶ月)
- 未経験OKの電気工事会社に転職(年収350-400万円からスタート)
- 実務経験を積みながら第一種を目指す(3年後に受験)
- 第一種取得後、条件の良い会社に再転職(年収500万円台を狙える)
注意すべきは、安易な転職先選びだ。「未経験歓迎」をうたう会社の中には、離職率の高いブラック企業も混在している。転職前に職場環境や研修制度をしっかり確認することが重要だ。
また、年齢も考慮要素になる。30代前半までなら第二種からのスタートでも十分キャリアを築ける。しかし30代後半以降は、より計画的なアプローチが必要になる。
