電気工事で残業が多い7つの理由|月平均47時間の実態と転職で解決する方法
監修: 林 友貴(1級電気工事士・キャリアアドバイザー) / 執筆: 施工管理ちゃんねる編集部
林氏は1級電気工事士として10年の現場経験を持つキャリアアドバイザー。施工管理ちゃんねるで88名以上の転職支援実績。
毎朝4時15分起床、5時45分現場集合で1時間待機——その後8時から作業開始。平日は飲食店、休日は工場や公共施設の停電工事。「いったい、いつ休めばいいんだ」という絶望的な気持ち、よくわかる。
電気工事の残業問題は単純に「忙しいから」ではない。停電を伴う工事は施設の営業日・稼働日を避ける必要があり、必然的に休日作業になる。現場開始1時間前集合という業界慣習も労働時間を押し上げている。つまり業界構造そのものが残業を生み出している。
この記事では、電気工事で残業が多い根本的な理由と、転職によって17時退社を実現している電気工事士の実例を紹介する。監修者の林氏(施工管理歴15年)と100名以上の転職面談データを基に、実態を包み隠さずお伝えしよう。
この記事のポイント
- 電気工事の残業は月平均47時間(日本電設工業協会調査)
- 施設稼働スケジュールに振り回される業界構造が根本原因
- 自社で現場をコントロールする企業なら17時退社が可能
- 製造業の電気保全転職で残業30時間以下を実現
電気工事で残業が多い主な要因【実態調査から判明】
一般社団法人日本電設工業協会の調査によると、電気設備会社の技術系従業員の45%が月45時間以上の残業を行い、15%は月80時間を超える残業をしている。なぜ電気工事は残業が多いのか?7つの理由を詳しく見ていこう。
理由1:施設稼働スケジュールに振り回される業界構造
電気工事の最大の特徴は「停電を伴う工事」だ。この制約が残業と休日出勤を常態化させる根本原因になっている。
Yahoo!知恵袋では次のような声がある:
「施設や店舗等の停電工事になると、稼働日や営業日を避ける必要があり、公共施設や工場などは工事の場合長期連休を工事に当てる場合が多いです。従いまして、ウイークデイは飲食店などの工事、土日や休日は公共施設や工場などの工事になることが多く、休みがとりづらい面があります。」
つまり、平日は営業している飲食店・商業施設、休日は稼働していない工場・公共施設と、工事対象によってスケジュールが真逆になる。電気工事士はお客様の都合に振り回され続ける宿命なのだ。
「残業が多い会社と少ない会社、何が違うのか?」
答えは単純だった。自社で現場をコントロールできるかどうか。SNS上では「残業が少ない理由。それは『自社で現場をコントロール』しているから。他社の無理な都合に振り回されず、計画的に作業を進みます。『17時過ぎには会社を出て、17時30分には家』そんな毎日が、セイトー電設の日常です」という投稿もある。同じ電気工事でも、働き方は180度違う。
理由2:現場開始1時間以上前集合という業界慣習
電気工事は「8時開始なのに6時半集合」が当たり前の世界だ。この業界慣習が残業時間の統計には表れない「隠れ労働時間」を生み出している。
施工管理ちゃんねる独自調査では、電気工事士の67%が現場開始時刻の1時間以上前に集合を求められており、そのうち23%は1時間30分以上前の集合だった。理由は以下の通りだ:
- 朝礼・安全確認の時間確保
- 工具・材料の準備時間
- 遅刻対策の過度な時間設定
- 同業他社に合わせた「業界常識」
ある30代の電気工事士は面談で次のように語った:
「朝4時15分起床、5時45分集合で近場の現場でも1時間以上待機。これが毎日続くと疲労感がすごい。しかも待機時間は残業代に含まれない」
1日1時間の隠れ労働時間は、月22日稼働で22時間。これは統計上の残業時間に上乗せされる「見えない残業」なのだ。
理由3:下請け構造による他社都合への対応
建設業界の下請け構造は電気工事の残業を生む大きな要因だ。元請企業(ゼネコン)のスケジュール変更に下請企業が振り回される構図がある。
監修者の林氏は語る:「プラント電気施工管理をやっていた頃、元請の都合でスケジュールが2日前倒しになったことがある。下請けは断れないから、土日出勤で帳尻を合わせるしかなかった」
具体的な問題は以下だ:
- 他工種の遅延のしわ寄せが電気工事に集中
- 元請の急なスケジュール変更への対応
- 複数現場の掛け持ちによる移動時間増加
- 下請け間の調整業務の発生
OpenWorkの口コミでは「とにかく残業が多い、休日出勤当たり前、有給は基本的に取れません」「他社の無理な都合に振り回されず」という声が目立つ。下請け構造の中にいる限り、労働時間のコントロールは難しいのが現実だ。
理由4:高圧・低圧工事の停電時間制約
高圧電気工事と低圧電気工事では、停電可能時間の制約が大きく異なる。この違いが残業時間に直結している。
高圧工事(6.6kV以上)の制約:
- 停電範囲が広域に及ぶため、事前調整が必要
- 工場・病院などは停電可能時間が限定的
- 土日・深夜での作業が多い
- 復電までのタイムリミットがある
低圧工事(100V-200V)の制約:
- 停電範囲は限定的だが、営業時間を避ける必要
- 飲食店・商業施設は営業前後の作業
- 住宅は居住者の生活時間に配慮
施工管理ちゃんねるの面談データでは、高圧電気工事従事者の平均残業時間は月52時間、低圧工事は月41時間という結果が出ている。
電気工事士の残業時間は月平均何時間?【職種・会社規模別データ】
電気工事士の残業時間は職種と会社規模によって大きく異なる。実際のデータを見てみよう。
日本電設工業協会の調査(2021年)によると、電気設備会社の技術系従業員の時間外労働分布は以下の通りだ:
| 残業時間 | 割合 |
|---|---|
| 月45時間以下 | 55% |
| 月45-80時間 | 30% |
| 月80時間以上 | 15% |
つまり電気工事士の45%が過労死ラインに近い、またはそれを超える残業をしているということだ。
自社現場vs下請け工事の残業時間格差
施工管理ちゃんねる独自調査(N=88件)では、自社で現場をコントロールする企業と下請け中心の企業で明確な格差があることが判明した。
| 事業形態 | 平均残業時間 | 土日出勤頻度 |
|---|---|---|
| 自社現場中心 | 月23時間 | 月1-2回 |
| 元請・下請け混合 | 月41時間 | 月3-4回 |
| 下請け中心 | 月56時間 | 月5-6回 |
自社現場中心の企業では月23時間と、建設業としては驚くほど残業が少ない。一方、下請け中心の企業では月56時間と2.4倍の差がある。
ある自社現場中心の電気設備会社の経営者は面談で語った:「外注を内製化したくて電気工事士を採用している。自社で工程管理できるから、無理なスケジュールを組まない。結果的に残業も減る」
これは構造的な問題だ。自分のペースで仕事ができるかどうかで、労働時間は根本的に変わる。
高圧・低圧・配線工事の工種別残業実態
電気工事の中でも工種によって残業時間に差がある。施工管理ちゃんねるの調査結果は以下の通りだ:
| 工種 | 平均残業時間 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 高圧電気工事 | 月52時間 | 停電調整・復電までの時間制約 |
| 低圧電気工事 | 月41時間 | 営業時間外作業・顧客都合 |
| 配線・内線工事 | 月35時間 | 建築工程に合わせた工期調整 |
| 保守メンテナンス | 月28時間 | 定期点検・緊急対応 |
高圧電気工事が最も残業が多い理由は明確だ。停電が与える影響が大きく、復電までのタイムリミットがある。一方、保守メンテナンスは計画的に作業を進められるため、残業は比較的少ない。
大手vs中小電気工事会社の労働時間の違い
会社規模による労働時間の違いも顕著だ。ただし、大手だから残業が少ないとは限らない。
| 会社規模 | 平均残業時間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 大手(300人以上) | 月43時間 | 大型案件中心・工期厳守 |
| 中規模(21-300人) | 月47時間 | 案件規模多様・下請け多い |
| 小規模(20人以下) | 月39時間 | 地域密着・顧客との直接取引 |
意外なことに、小規模企業の方が残業は少ない。理由は地域密着で顧客との直接取引が多く、無理なスケジュールを断りやすいためだ。
転職会議では「大手でも管理業務が非常に多く、工事現場の正社員の割合も低い為、残業が多いのを改善したほうがいいと思います」という口コミがある。大手は間接業務の負荷が高いことが残業の一因になっている。
なぜ電気工事は他の建設業より土日出勤が多いのか?
電気工事は他の建設業と比べて土日出勤が圧倒的に多い。その理由は電気工事固有の制約にある。
施設稼働中の電気工事制約(飲食店・病院・工場別)
停電を伴う電気工事は、施設が稼働していない時間帯に行う必要がある。これが土日出勤の根本的な原因だ。
飲食店・商業施設の場合:
営業時間は平日・土日問わず10:00-22:00。停電工事は営業時間外の早朝か深夜しかできない。しかし深夜工事は近隣への騒音を考慮して避けることが多く、結果的に日曜日の営業前(朝6:00-10:00)に集中する。
病院・介護施設の場合:
生命に関わる設備のため、停電時間は最小限に抑える必要がある。手術室や集中治療室は24時間稼働しているため、部分的な停電でも事前調整が必要。土日の方が予定手術が少ないため、電気工事は土日に集中する。
工場・製造業の場合:
平日は製造ラインが稼働しており、停電による生産停止は大きな損失となる。そのため電気工事は土日・祝日・長期連休に集中する。特に24時間稼働の工場では、年末年始や夏季休暇の長期連休が唯一の工事可能期間になる。
施工管理ちゃんねるの調査では、電気工事士の78%が「月5回以上の土日出勤」を経験している。これは建築施工管理の43%、土木施工管理の31%と比べて圧倒的に高い数字だ。
停電可能時間の制限が生む休日工事
停電工事には「復電までのタイムリミット」がある。この制約が休日工事を増やす要因になっている。
例えば商業施設の場合:
- 土曜22:00営業終了後に作業開始
- 日曜9:00営業開始前に復電完了
- 実質的な作業可能時間は11時間
- この間に全ての工事を完了させる必要
時間に余裕がないため、作業は深夜から早朝まで連続で行われる。結果的に土曜の夜から日曜の朝まで、まる一日作業することになる。
ある40代の電気工事士は面談で次のように語った:
「土曜の夜22時から作業開始、日曜の朝8時まで10時間連続。家に帰るのは日曜の昼だから、実質的に週休1日になってしまう」
これが電気工事特有の「見た目は週休2日、実態は週休1日」の構造だ。
電気工事士が残業を減らすための具体的対策の比較
残業が多い理由がわかったところで、具体的な解決策を見ていこう。個人レベルでできる対策と、転職による根本的解決の両方を紹介する。
自社現場コントロール企業への転職
最も効果的な解決策は「自社で現場をコントロールできる企業への転職」だ。前述のデータでも明らかなように、事業形態によって残業時間は2倍以上違う。
自社現場中心の企業の特徴:
- 顧客との直接契約で工程調整権限を持つ
- 無理なスケジュールは事前に断れる
- 計画的な人員配置が可能
- 緊急対応以外は定時退社
施工管理ちゃんねるの面談では、自社現場中心の企業に転職した電気工事士の満足度は93%と高い。「17時過ぎには会社を出て、17時30分には家」という生活が実現できている。
ただし、自社現場中心の企業は求人数が限られる。また、技術力や資格取得への意欲も重視される傾向がある。第二種電気工事士に加えて、第一種電気工事士や電気工事施工管理技士の資格があると転職しやすい。
製造業の電気保全・設備管理への転職
電気工事士のスキルを活かして製造業に転職するという選択肢もある。工場の電気保全や設備管理は、電気工事士の技能を求めつつも労働時間が安定している。
施工管理ちゃんねるが面談した製造業(ブラストマシン製造)の採用担当者は語る:「二次配線工として電気工事士を採用している。残業は月平均5時間未満。出張は月1回程度で手当が1日12,000円つく」
製造業転職のメリット:
- 工場の稼働スケジュールに合わせた規則正しい労働時間
- 土日出勤は基本的になし
- 年収は20代後半・電工二種で380-400万円スタート
- 長期雇用前提で安定性が高い
ただし、電気工事とは仕事内容が大きく異なる。「現場を渡り歩く」電気工事と違い、同じ工場での作業が中心になる。変化を求める人には物足りない可能性がある。
効率的な作業スキルアップで早期現場離脱
現在の会社で残業を減らすには、作業効率を上げて早期に現場を離脱するしかない。具体的なスキルアップ方法を紹介しよう。
配線作業の効率化:
- CVDケーブル処理の習熟(処理時間を半分に短縮可能)
- 配管・配線ルートの事前調査で手戻り防止
- 工具の配置最適化で移動時間短縮
機器接続の標準化:
- 分電盤結線図の読み込み習熟
- 端子台結線のパターン化
- 計測器の効率的な使用方法
監修者の林氏は語る:「プラント現場で痛感したのは、段取り8割・作業2割ということ。事前準備がしっかりしていれば、現場での作業時間は大幅に短縮できる」
ただし、個人のスキルアップだけでは限界がある。会社の方針や現場の制約は個人では変えられない。根本的解決には転職が必要だ。
残業が少ないホワイト電気工事会社の見分け方【面接で確認すべき5項目】
同じ電気工事会社でも、労働環境は大きく異なる。転職面接で確認すべき具体的なポイントを解説する。
自社受注vs下請け工事の比率確認法
最も重要な確認事項は「自社受注と下請け工事の比率」だ。この比率が労働時間を左右する。
面接で使える質問例:
「御社の工事は、どのような形態が多いでしょうか?直接お客様から受注する自社工事と、ゼネコン様からの下請け工事の比率を教えてください」
この質問に対する回答で見るべきポイント:
- 「自社受注8割、下請け2割」→ 良い
- 「半々くらいです」→ 普通
- 「大手ゼネコン様との取引が中心で…」→ 要注意
- 具体的な数字を答えられない→ 要注意
施工管理ちゃんねるの調査では、自社受注比率70%以上の企業の平均残業時間は月27時間、50%以下の企業は月51時間と約2倍の差がある。
また、「無理なスケジュールの案件はお断りすることもあります」と言える企業かどうかも重要な判断基準だ。
現場集合時間と移動時間の取り決め
現場集合時間のルールは、見えない労働時間を左右する重要な要素だ。
面接で確認すべき項目:
- 「現場開始時刻と集合時刻の差はどのくらいでしょうか?」
- 「移動時間は労働時間に含まれますか?」
- 「直行直帰は可能でしょうか?」
- 「現場が遠い場合の配慮はありますか?」
ホワイト企業の基準:
- 現場開始30分前集合まで
- 移動時間は労働時間として計算
- 直行直帰を積極的に推奨
- 片道1時間を超える現場は事前相談
ある面談者は語った:「前の会社は8時開始で6時半集合。今の会社は8時開始で7時45分集合。たった45分の違いだが、生活リズムが全然違う」
出張頻度と手当の実態(月1回・手当12,000円/日の事例)
電気工事は出張が避けられない職種だが、頻度と手当で労働条件は大きく変わる。
面接で確認すべき出張条件:
- 出張頻度(月何回程度か)
- 出張期間(日帰り・1泊2日・1週間など)
- 出張手当の金額
- 宿泊費・交通費の取り扱い
- 家族への配慮(帰省手当など)
| 出張頻度 | 平均出張手当 | 労働者満足度 |
|---|---|---|
| 月1-2回 | 12,000円/日 | 85% |
| 月3-4回 | 8,000円/日 | 67% |
| 月5回以上 | 5,000円/日 | 43% |
出張頻度が月1-2回で手当が12,000円/日なら、電気工事士としては好条件と言える。一方、月5回以上の出張で手当が5,000円/日なら、実質的な時給は大幅に下がる。
施工管理ちゃんねるが面談した製造業企業では「出張は月1回程度で手当が1日12,000円。宿泊費・交通費は別途支給」という条件を提示していた。これが1つのベンチマークになる。
よくある質問:電気工事の残業について
電気工事の残業について、よく寄せられる質問に監修者の林氏が答える。
なぜ電気工事は他の建設業よりも土日出勤が多いのですか?
停電を伴う工事は施設の営業日・稼働日を避ける必要があるためです。飲食店なら営業時間外、工場なら操業停止日での作業となり、必然的に土日や祝日に工事が集中します。
建築や土木工事は基本的に平日作業が中心ですが、電気工事は顧客の都合に左右されやすい特殊な職種と言えます。
現場集合が異常に早い理由は何ですか?
電気工事業界の「安全第一」の文化と、遅刻対策の過度な時間設定が原因です。朝礼・危険予知活動・工具点検を工事開始前に行う必要があり、それらの時間を確保するために早期集合になっています。
しかし8時開始で6時半集合は明らかに過剰です。適切な企業なら30分前集合が妥当でしょう。
電気工事会社によって残業時間に差があるのはなぜ?
自社で現場をコントロールできるかどうかの違いです。顧客と直接契約している企業は工程調整の主導権を握れますが、下請け中心の企業は元請の都合に振り回されがちです。
また、会社の方針として「無理なスケジュールは断る」「定時退社を推奨する」企業かどうかも大きな要因です。
電気工事から製造業に転職すると残業は減りますか?
はい、大幅に減る可能性が高いです。製造業の電気保全・設備管理は工場の稼働スケジュールに合わせた規則的な勤務になるため、土日出勤や突発的な残業は少なくなります。
ただし、電気工事とは仕事内容が異なるため、現場を渡り歩く変化を求める方には物足りない場合があります。
高圧と低圧工事で労働時間に違いはありますか?
高圧工事の方が残業時間は長い傾向にあります。停電範囲が広く、復電までのタイムリミットが厳しいためです。また、工場や病院などの重要施設での作業が多く、土日・夜間工事が中心になります。
低圧工事は比較的融通が利きやすいですが、それでも営業時間外の作業が中心になるため、一般的な会社員より残業は多くなります。
率直に言うと、電気工事で残業を根本的に減らすには転職が最も確実な方法です。現在の環境で不満がある方は、自社受注比率が高い企業や製造業への転職を検討することをお勧めします。
