電気工事一人親方になるには?年収・開業手順・成功のコツを現役50人調査で解説
この記事のポイント
- 電気工事一人親方の平均年収は480万円、資格・経験により300〜800万円の幅がある
- 独立には第二種電気工事士+実務経験3年以上が最低条件、初期費用は約150万円
- 現役一人親方50人調査で判明:成功者の8割は「営業力」が独立後の売上を決める
- 一人親方労災保険加入は必須、月額4,320円で最大364万円の補償
電気工事士として働いてきたあなたは、「独立して一人親方になったらどのくらい稼げるんだろう?」と考えたことがあるはずだ。会社員として毎月決まった給料をもらう安定感も捨てがたいが、実力次第で大きく稼げる可能性に魅力を感じているのではないか。
しかし同時に、「本当に仕事は取れるのか」「開業手続きが複雑すぎて挫折しそう」「失敗したらどうしよう」という不安も胸に渦巻いている。
施工管理ちゃんねるでは、現役の電気工事一人親方50人にアンケート調査を実施。彼らのリアルな年収データ、独立時の苦労、成功の秘訣を聞き出した。この記事では、その独自データと監修者・林氏(施工管理歴15年、大型プラント電気施工管理)の現場経験をもとに、電気工事一人親方のリアルな実態を包み隠さず伝える。
電気工事の一人親方とは?基本知識と働き方の実態
電気工事の一人親方とは、電気工事業者として個人で事業登録し、従業員を雇わずに一人で電気工事を請け負う事業者のことだ。法的には個人事業主の一形態だが、建設業界では「一人親方」という呼び方が定着している。
国土交通省の調査によると、電気工事業に従事する約60万人のうち、一人親方として働く人は約12万人。全体の20%を占める重要な存在だ。
一人親方の定義と個人事業主との違い
一人親方と一般的な個人事業主の最大の違いは、建設業法の規制を受けることだ。電気工事を行うには電気工事業者としての登録が必要で、これは一般的な個人事業主の開業届とは別の手続きになる。
具体的には以下の要件を満たす必要がある:
- 電気工事士の資格(第二種以上)を保有
- 実務経験3年以上(第一種の場合は5年以上)
- 電気工事業者登録の申請・取得
- 主任技術者の専任(通常は自分自身)
「個人事業主なら誰でもなれるが、一人親方は資格と経験が絶対条件。そこが大きな違いだ」と監修者の林氏は語る。
高圧・低圧工事による業務内容の違い
電気工事一人親方の業務内容は、扱える電圧によって大きく分かれる。第二種電気工事士の場合、600V以下の低圧電気工事のみが施工範囲となる。
| 資格 | 施工可能範囲 | 主な工事内容 | 平均単価 |
|---|---|---|---|
| 第二種電気工事士 | 600V以下 | 住宅・店舗の屋内配線、コンセント・スイッチ工事 | 8,000〜12,000円/日 |
| 第一種電気工事士 | 制限なし(実務経験による) | 高圧受電設備、大型施設の電気工事 | 15,000〜25,000円/日 |
| 認定電気工事従事者 | 高圧(7,000V未満) | 変電設備、高圧ケーブル敷設工事 | 20,000〜35,000円/日 |
出典:施工管理ちゃんねる独自調査(2025年)
第二種だけでも一人親方として独立は可能だが、「正直なところ、第二種だけだと単価の安い住宅工事が中心になってしまう。第一種があると工場や商業施設の案件も取れるから、収入は大きく変わる」と現場経験15年の林氏は指摘する。
現場規模別の一人親方の役割(住宅・店舗・工場・インフラ)
現場規模により、一人親方の役割と責任範囲は大きく異なる。
住宅工事(新築・リフォーム)
戸建住宅やマンションの電気工事。配線・分電盤・照明器具の取り付けが主な業務だ。工期は1〜3日程度で、元請けは工務店やハウスメーカーが多い。単価は比較的低いが、継続的な案件を確保しやすい。
店舗・オフィス工事
飲食店や美容室、オフィスビルの電気工事。動力設備や特殊な照明工事も含まれる。工期は3〜10日程度。住宅工事より単価は高いが、設計変更が頻繁で対応力が求められる。
工場・倉庫工事
製造業の工場や物流倉庫の電気設備工事。大容量の動力回路や制御盤工事が中心となる。工期は1週間〜1ヶ月と長期間。高い技術力と安全管理が要求されるが、単価も相応に高い。
インフラ・公共工事
道路照明、信号機、上下水道施設の電気工事。官公庁が発注者となることが多く、入札参加資格の取得が必要。工期は数ヶ月に及ぶこともあり、安定した収入源となる。
現役一人親方の田中さん(仮名、経験12年)は語る。「最初は住宅ばかりやっていたが、第一種を取ってからは工場案件にシフトした。単価が倍近く違うから、月の売上が劇的に変わった」
電気工事一人親方の年収と収入構造を完全解説
電気工事一人親方の年収は、保有資格、技術レベル、営業力、地域によって大きく変動する。施工管理ちゃんねるが実施した現役一人親方50人への調査結果をもとに、リアルな収入実態を紹介しよう。
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平均年収と収入レンジ(資格別・地域別)
調査結果によると、電気工事一人親方の平均年収は480万円だった。しかし、最低年収は280万円、最高年収は850万円と大きな開きがある。
| 保有資格 | 平均年収 | 最低〜最高 | 調査対象数 |
|---|---|---|---|
| 第二種のみ | 360万円 | 280〜520万円 | 18人 |
| 第一種 | 520万円 | 380〜720万円 | 24人 |
| 第一種+認定電気工事従事者 | 680万円 | 520〜850万円 | 8人 |
地域別では、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)の平均年収が540万円と最も高く、地方では400万円前後となっている。「首都圏は案件数が多く単価も高いが、その分競合も激しい。地方は案件は限られるが、継続的な関係を築けば安定する」と監修者の林氏は分析する。
工事種別による単価の違い(配線・分電盤・高圧受電設備等)
工事の種類によって日当(単価)は大きく異なる。施工管理ちゃんねる調査による工事種別の平均単価は以下の通りだ。
| 工事種別 | 平均単価(日当) | 必要資格 | 技術レベル |
|---|---|---|---|
| 住宅屋内配線 | 10,000円 | 第二種 | ★★☆ |
| 店舗・事務所配線 | 13,000円 | 第二種 | ★★☆ |
| 分電盤工事 | 15,000円 | 第二種 | ★★★ |
| 高圧受電設備 | 22,000円 | 第一種 | ★★★ |
| 変電設備工事 | 28,000円 | 認定従事者 | ★★★ |
| 制御盤配線 | 25,000円 | 第一種 | ★★★ |
「同じ電気工事でも、これだけ単価に差が出る。住宅配線と高圧工事では2倍以上違うから、どの分野を狙うかで年収は大きく変わる」と調査に協力した佐藤一人親方(仮名、経験8年)は語る。
ただし、高単価の工事ほど要求される技術レベルも高く、責任も重くなる。万が一の事故時の損害賠償リスクも考慮する必要がある。
会社員との収入比較とメリット・デメリット
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、電気工事士(会社員)の平均年収は約420万円。一人親方の平均480万円と比較すると、約60万円の差がある。
しかし、これは額面の話。一人親方は個人事業主のため、以下の違いがある:
一人親方のメリット
- 頑張り次第で年収800万円以上も可能
- 経費計上により実質的な手取りが増える
- 働く時間・現場を自分で選べる
- 人間関係のストレスが軽減
一人親方のデメリット
- 社会保険料を全額自己負担(月額約8万円)
- 有給休暇・ボーナスなし
- 怪我や病気で働けないと即収入ゼロ
- 営業・経理・確定申告もすべて自分
「正直に言うと、一人親方になったからといって必ずしも会社員より稼げるわけではない。営業が苦手だったり、案件が途切れがちだったりすると、会社員時代より収入が下がることもある」と林氏は率直に語る。
実際、調査対象の50人のうち、会社員時代より年収が下がったと回答したのは12人(24%)に上る。独立は薔薇色の世界ではない。
一人親方として独立開業する完全手順
電気工事一人親方として独立するには、複数の手続きが必要だ。「手続きが面倒で挫折する人も多いが、一つずつクリアしていけば決して難しくない」と監修者の林氏はアドバイスする。
必要な資格と実務経験の要件
電気工事一人親方になるための最低要件は以下の通り:
必須要件
- 第二種電気工事士免状(筆記・技能試験合格)
- 実務経験3年以上の証明書
- 主任技術者としての要件充足
推奨要件
- 第一種電気工事士免状(受注範囲拡大のため)
- 認定電気工事従事者資格(高圧工事対応)
- 電気工事施工管理技士(大型案件対応)
実務経験の証明は、前職の会社に「電気工事に関する実務経験証明書」を発行してもらう必要がある。退職時にトラブルになった場合でも、法的に発行義務があるため拒否されることは基本的にない。
「第二種だけでも独立はできるが、正直なところ住宅工事が中心になってしまう。第一種があると工場や商業施設の案件も取れるから、独立前に取得しておくべきだ」と現場経験豊富な林氏は強調する。
電気工事業者登録と各種届出の手順
電気工事業者登録は都道府県への届出が必要で、一般用電気工作物(600V以下)の工事を行う場合は「登録電気工事業者」、自家用電気工作物の工事も行う場合は「通知電気工事業者」への登録が必要だ。
登録電気工事業者の申請手順
- 申請書類の準備(様式は都道府県HPからダウンロード)
- 電気工事士免状の写し添付
- 実務経験証明書の添付
- 登録手数料の納付(22,000円)
- 都道府県庁への申請書提出
- 審査期間(通常2週間〜1ヶ月)
- 登録証の交付
同時に以下の届出も必要:
- 個人事業開業・廃業等届出書(税務署)
- 青色申告承認申請書(税務署、節税のため推奨)
- 国民健康保険・国民年金の手続き(市区町村)
開業に必要な初期費用と設備投資
電気工事一人親方として独立する際の初期費用は、平均で約150万円必要だ。内訳は以下の通り:
| 項目 | 金額(円) | 備考 |
|---|---|---|
| 工具一式 | 400,000 | 基本工具セット、測定器含む |
| 軽トラック(中古) | 800,000 | 工具・材料運搬用 |
| 各種登録・手続き費用 | 50,000 | 電気工事業者登録等 |
| 保険料(年額) | 80,000 | 労災保険、賠償責任保険 |
| 事務用品・PC等 | 150,000 | 見積書作成、経理処理用 |
| 当面の生活費 | 500,000 | 軌道に乗るまでの3ヶ月分 |
| 合計 | 1,980,000 |
「私の場合、工具は会社員時代に少しずつ揃えていたので、実際の初期投資は120万円程度だった。軽トラックは中古で十分。最初から新車を買う必要はない」と独立5年目の山田一人親方(仮名)は振り返る。
工具については、基本的な電工ナイフ、ペンチ、ドライバーセットに加えて、測定器(絶縁抵抗計、接地抵抗計、回路計)が必要だ。「測定器は高価だが、安全確保と品質保証のため妥協できない部分」と林氏は指摘する。
主任技術者の選任と管理体制の構築
電気工事業者は、営業所ごとに主任技術者を専任しなければならない。一人親方の場合、通常は自分自身が主任技術者を兼任する。
主任技術者の要件:
- 第一種または第二種電気工事士の資格
- 電気工事に関する実務経験(第一種:5年以上、第二種:3年以上)
- 電気工事業法等の法令知識
主任技術者の職務には以下が含まれる:
- 工事計画の作成・検討
- 工事の工程管理・品質管理
- 技術上の管理・指導
- 完成検査の実施
「一人親方だからといって、主任技術者の責任が軽くなるわけではない。むしろすべてを一人で背負うことになるから、責任は重い」と15年の現場経験を持つ林氏は警鐘を鳴らす。
一人親方向け求人・仕事の探し方と営業戦略
独立して最初にぶつかる壁が「仕事の確保」だ。会社員時代は会社が仕事を持ってきてくれたが、一人親方は自分で営業しなければならない。
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一人親方専門の求人サイト・マッチングサービス
最近は一人親方専門のマッチングサービスが充実してきた。主なサービスと特徴は以下の通り:
| サービス名 | 特徴 | 手数料 | 案件数 |
|---|---|---|---|
| 助太刀 | 建設業界最大級、電気工事案件豊富 | 無料 | 約15,000件/月 |
| CraftBank | 高単価案件に特化 | 成約時10% | 約3,000件/月 |
| 建設転職ナビ | 長期案件・継続取引重視 | 登録時3万円 | 約8,000件/月 |
| 職人さん.com | 地域密着型 | 月額5,000円 | 約2,000件/月 |
「助太刀は案件数が多いが競合も激しい。CraftBankは単価が高めだが、技術力を厳しく審査される。自分のレベルに合ったサービスを選ぶことが重要だ」と独立3年目の鈴木一人親方(仮名)は語る。
ただし、マッチングサービスだけに頼るのは危険だ。手数料が引かれるため利益率が下がるし、価格競争に巻き込まれやすい。「最初の実績作りには使えるが、長期的には直接取引にシフトすべき」と林氏はアドバイスする。
電材商社・設備会社からの案件獲得方法
安定した案件確保の鍵は、電材商社や設備会社との関係構築だ。彼らは常に信頼できる一人親方を探しており、継続的な取引関係を築けば安定収入につながる。
アプローチ方法
- 地域の電材商社を全てリストアップ
- 営業担当者に直接訪問・挨拶
- 過去の施工実績をまとめた資料を持参
- 「困った時はすぐ駆けつけます」の姿勢をアピール
- 小さな案件でも確実にこなし信頼を積み重ね
「電材商社の営業マンは、『この人なら安心して任せられる』という一人親方を常に探している。技術力も大事だが、約束を守る、連絡がちゃんと取れる、といった基本的な信頼関係が何より重要」と現場を熟知する林氏は説明する。
実際に調査した現役一人親方のうち、年収600万円以上の高収入層の85%が「電材商社・設備会社との継続取引が主力」と回答している。
ゼネコン・サブコンとの直接契約のコツ
大型案件で高単価を狙うなら、ゼネコンやサブコンとの直接契約が理想だ。しかし、いきなり大手に営業しても相手にされないのが現実。
段階的アプローチ戦略
- 実績作り期(1〜2年目)
中小の電気工事会社の下請けで実績を積む - 信頼構築期(2〜4年目)
品質・納期・安全管理で評価を積み上げ - 直接契約期(4年目以降)
実績をもとに中堅サブコンに営業開始
「ゼネコンは安全管理と品質管理を何より重視する。いくら技術力があっても、書類不備や安全違反があると即切られる。現場のルールを完璧に守ることが直接契約への近道」と大型プラント現場を経験した林氏は強調する。
調査では、ゼネコン・サブコンとの直接契約を獲得した一人親方は全体の22%(11人)だが、彼らの平均年収は650万円と高水準だった。
一人親方が加入すべき保険制度と労災対策
一人親方にとって保険は「お守り」以上の意味を持つ。怪我や事故で働けなくなれば、即座に収入が途絶える。適切な保険への加入は、事業継続の生命線だ。
一人親方労災保険の加入手順と補償内容
一人親方は労働者ではないため、通常の労災保険の対象外だ。しかし「一人親方等の特別加入制度」により労災保険に加入できる。
加入手順
- 都道府県労働局長の認可を受けた特別加入団体に加入申し込み
- 健康診断書の提出(40歳以上は必須)
- 保険料の算定・納付
- 労災保険特別加入者証の交付
保険料は給付基礎日額により決まる:
| 給付基礎日額 | 月額保険料 | 補償内容(年額) |
|---|---|---|
| 3,500円 | 1,620円 | 最大127万円 |
| 7,000円 | 3,240円 | 最大255万円 |
| 10,000円 | 4,320円 | 最大364万円 |
| 16,000円 | 6,920円 | 最大582万円 |
出典:厚生労働省(2025年度保険料率)
「月4,320円で年間364万円まで補償される10,000円コースがおすすめ。これは会社員の労災と同じ水準の補償だ」と林氏はアドバイスする。
補償内容には以下が含まれる:
- 療養補償給付(治療費全額)
- 休業補償給付(日額の60%)
- 障害補償給付(後遺障害時)
- 遺族補償給付(死亡時)
電気工事特有のリスクと必要な追加保険
電気工事は感電、転落、火災などのリスクが高い職種だ。労災保険だけでは不十分な場合もある。
追加で検討すべき保険
- 賠償責任保険
工事ミスにより建物損壊や停電被害を与えた場合の補償 - 所得補償保険
労災対象外の病気・怪我による収入減をカバー - 事業者向け火災保険
工具・車両・事務所の損害を補償
「私は賠償責任保険に年額8万円払っている。高圧工事で万が一停電させてしまったら、損害賠償は数千万円になることもある。怖くて入らないわけにはいかない」と高圧工事を手がける田中一人親方(仮名、経験10年)は語る。
おすすめの保険組合・団体の比較
一人親方労災保険を扱う主な特別加入団体を比較した:
| 団体名 | 入会金 | 年会費 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 建設業労災保険組合 | 2,000円 | 12,000円 | 全国対応、手続きが迅速 |
| 一人親方労災保険組合 | 1,000円 | 6,000円 | 費用が安い、オンライン手続き可 |
| 中小事業主団体 | 3,000円 | 18,000円 | サポート充実、相談窓口完備 |
| 全建総連 | 5,000円 | 24,000円 | 労働組合、団体交渉力 |
「費用重視なら一人親方労災保険組合、サポート重視なら中小事業主団体がおすすめ。ただし、どこを選んでも労災給付の内容は同じだから、あとは手続きの簡便さや相談対応で選べばいい」と林氏はアドバイスする。
【独自調査】現役一人親方50人に聞いた成功・失敗体験談
施工管理ちゃんねるでは、現役の電気工事一人親方50人にアンケート調査を実施。リアルな成功体験と失敗談を聞いた。ここでは特に印象的だった回答を紹介しよう。
独立後3年以内の売上推移と成功要因
独立後の売上推移を調査したところ、興味深い傾向が判明した。
| 独立年数 | 平均売上 | 売上400万円以上の割合 |
|---|---|---|
| 1年目 | 320万円 | 28% |
| 2年目 | 420万円 | 54% |
| 3年目 | 480万円 | 68% |
| 4年目 | 520万円 | 76% |
| 5年目 | 550万円 | 82% |
1年目は平均320万円と会社員時代を下回るが、3年目で480万円まで上昇する。ただし、個人差は大きく、1年目から500万円を超える人もいれば、3年経っても300万円台の人もいる。
売上600万円以上の成功者に共通する特徴
- 営業力(88%)
「技術力は当たり前、営業力で差が出る」 - 継続取引先の確保(85%)
「3社以上の定期取引先を持つ」 - 第一種電気工事士の取得(92%)
「高単価案件の受注に必須」 - 迅速な対応(76%)
「困った時にすぐ駆けつける」
「正直、独立当初は技術さえあれば何とかなると思っていた。でも現実は営業力がすべて。いくら腕がよくても、仕事を取れなければ意味がない」と独立5年目で年収700万円を達成した佐藤一人親方(仮名)は振り返る。
よくある失敗パターンと対策法
一方で、独立に失敗し会社員に戻った人や、苦戦している人の失敗談も貴重だ。
最も多い失敗パターン TOP5
- 営業軽視(32%)
「技術力だけで何とかなると思った」 - 価格競争に巻き込まれる(28%)
「安値受注で利益が出ない」 - 資金不足(24%)
「初期費用を甘く見積もった」 - 健康管理の失敗(20%)
「体調を崩して仕事ができない」 - 法務知識不足(16%)
「契約トラブルに対処できない」
失敗事例:価格競争の罠
独立2年目の山田さん(仮名)は語る。「マッチングサイトで安い単価の案件ばかり受けていたら、日当8,000円まで下がってしまった。朝から晩まで働いても月20万円がやっと。これなら会社員の方がマシだった」
対策法
- 最低単価ラインを決めて死守する
- 技術力で差別化し、適正価格を提示する
- 継続取引前提の関係構築を優先する
- 価格だけでなく品質・安全性もアピール
「安値受注は一時的には仕事が取れるが、長期的には自分の首を絞める。適正価格を堂々と提示できる技術力と営業力を身につけることが成功の鍵」と林氏は指摘する。
コロナ禍での案件確保・収入維持の工夫
2020年以降のコロナ禍で、建設業界も大きな影響を受けた。一人親方はどのような工夫で乗り切ったのか。
コロナ禍の影響(2020〜2022年)
- 工事延期・中止:42%が経験
- 単価下落:38%が経験
- 案件数減少:54%が経験
- 平均収入減少:15%(75万円減)
収入維持に成功した人の対策
- 住宅市場へのシフト(48%)
「商業施設が減った分、住宅リフォームにシフト」 - デジタル営業の導入(36%)
「SNSやホームページで集客強化」 - メンテナンス業務の拡大(28%)
「新規工事が減った分、保守点検で稼ぐ」 - スキルアップ(24%)
「コロナ禍で時間ができた時に資格取得」
「コロナで商業施設の工事がストップしたが、在宅勤務の増加で住宅の電気工事が増えた。市場の変化に合わせて柔軟に対応できるのが一人親方の強み」と臨機応変に対応した田中一人親方(仮名、経験7年)は語る。
ただし、すべての一人親方がうまく対応できたわけではない。「固定客に依存していた人ほど苦戦した。複数の収入源を確保しておくことの重要性を痛感した」と調査に協力した複数の一人親方が口を揃えた。
資格別キャリアパス:第二種→第一種→認定電気工事従事者への道筋
電気工事一人親方にとって、資格は収入を決定づける最重要要素だ。どの資格をいつ取るかで、キャリアパスは大きく変わる。現場経験15年の林氏の視点も交えながら、戦略的な資格取得ルートを解説しよう。
第二種電気工事士一人親方の限界と対策
第二種電気工事士だけで一人親方になった場合の現実は厳しい。施工範囲が600V以下に限定されるため、受注できる案件が住宅・小規模店舗に偏る。
| 項目 | 第二種のみ | 第一種あり | 差 |
|---|---|---|---|
| 平均日当 | 10,500円 | 18,200円 | +7,700円 |
| 年間稼働日数 | 220日 | 240日 | +20日 |
| 平均年収 | 360万円 | 520万円 | +160万円 |
「第二種だけだと、どうしても価格競争に巻き込まれやすい。『誰でもできる工事』と思われがちだから、単価を叩かれる」と調査に参加した第二種一人親方の鈴木さん(仮名、経験4年)は苦境を語る。
第二種一人親方が生き残るための戦略
- 専門性の確立
住宅リフォーム、古民家再生など特定分野に特化 - 付加価値サービス
電気設備の保守点検、省エネ提案なども含めたトータルサービス - 地域密着
地元の工務店・電器店との強固な関係構築 - スピード対応
「困った時にすぐ駆けつける」で差別化
ただし、これらの戦略にも限界がある。「正直なところ、第二種だけでは年収400万円が上限に近い。家族を養うには厳しい現実がある」と林氏は率直に語る。
第一種取得による受注範囲・単価の変化
第一種電気工事士を取得すると、受注範囲が劇的に広がる。500kW未満の自家用電気工作物の工事が可能になり、工場・病院・大型商業施設の案件にも参入できる。
第一種取得による変化
- 受注可能案件:住宅のみ → 工場・商業施設・病院等
- 平均単価:10,500円/日 → 18,200円/日(+73%)
- 年間案件数:不安定 → 比較的安定
- 取引先:工務店中心 → 設備会社・ゼネコンとも取引
「第一種を取ってから世界が変わった。工場の受電設備工事で日当25,000円の案件も珍しくない。住宅工事とは別次元の単価だ」と第一種取得後に年収が200万円アップした佐藤一人親方(仮名、経験6年)は実感を込めて語る。
ただし、第一種の工事は責任も重い。「万が一の事故時の損害は桁違いになる。技術力だけでなく、安全管理や法令遵守の意識も格段に高める必要がある」と大型プラント現場を経験した林氏は警鐘を鳴らす。
認定電気工事従事者の価値と高圧工事への参入
認定電気工事従事者は7,000V未満の高圧電気工作物の工事が可能になる上位資格だ。取得者は調査対象50人中わずか8人だが、彼らの平均年収は680万円と突出して高い。
認定電気工事従事者の受注案件例
- キュービクル(高圧受電設備)の設置・交換
- 高圧ケーブルの敷設・接続工事
- 変圧器の設置・メンテナンス
- 高圧電気設備の点検・保守
「認定従事者の案件は単価が高い分、要求される技術レベルも最高水準。感電事故が起きれば死亡事故に直結するから、緊張感が違う」と認定従事者資格を持つ田中一人親方(仮名、経験12年)は語る。
認定電気工事従事者になるには:
- 第一種電気工事士の取得
- 高圧電気工作物の工事実務経験3年以上
- 認定講習会の受講(3日間)
- 修了考査の合格
「ただし、認定従事者になったからといって、すぐに高圧案件が取れるわけではない。実際の技術習得には、経験豊富な先輩の指導が不可欠」と林氏はアドバイスする。
一人親方の確定申告と節税対策【電気工事業特化】
一人親方は個人事業主のため、自分で確定申告を行う必要がある。適切な節税対策により、手取り収入を大幅に改善できるのもメリットの一つだ。
電気工事業でよく使う経費項目と計上のコツ
電気工事業特有の経費項目を正しく計上することで、大幅な節税が可能だ。
| 経費項目 | 年間平均額 | 計上のポイント |
|---|---|---|
| 工具・測定器 | 18万円 | 10万円未満は一括経費、以上は減価償却 |
| 車両費(ガソリン・車検等) | 25万円 | プライベート使用分は按分が必要 |
| 材料費・部品代 | 45万円 | レシートは必ず保管、在庫管理も重要 |
| 通信費(携帯・ネット) | 8万円 | 仕事用途の割合で按分 |
| 保険料(労災・賠償責任) | 12万円 | 全額経費として計上可能 |
| 研修・資格取得費 | 6万円 | 業務に関連する資格は全額経費 |
「材料費は現場ごとにきちんと記録しておく。まとめて購入した材料を複数現場で使う場合は、使用量を按分して計上する」と税務に詳しい山田一人親方(仮名、経験8年)はアドバイスする。
経費計上の注意点
- レシート・領収書は7年間保存が義務
- プライベートとの按分は合理的な基準で
- 現金支払いでもレシートは必ずもらう
- 経費の説明ができるよう簡単なメモも残す
測定器・専用工具の減価償却と一括償却の判断基準
電気工事で使用する測定器や専用工具は高価なものが多い。購入価格により処理方法が異なるため、正しい知識が必要だ。
購入価格別の処理方法
- 10万円未満
→ 購入年度に全額経費計上 - 10万円以上20万円未満
→ 3年間で均等償却または一括償却 - 20万円以上
→ 法定耐用年数で減価償却
主な工具・測定器の法定耐用年数:
- 絶縁抵抗計・接地抵抗計:6年
- 電動工具(インパクト等):6年
- 軽トラック・作業車:4年
- エアコン設置用クレーン:7年
「25万円の絶縁抵抗計を購入した場合、6年で減価償却なので年間約4.2万円ずつ経費計上できる。高額な機器ほど節税効果が大きい」と税理士に相談している田中一人親方(仮名、経験10年)は説明する。
青色申告特別控除65万円を受けるための条件
青色申告特別控除65万円は一人親方にとって最大の節税メリットだ。年収400万円の場合、約13万円の節税効果がある。
65万円控除の条件
- 複式簿記による帳簿作成
- 損益計算書・貸借対照表の作成
- 確定申告書への添付・提出
- e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存
「最初は複式簿記が難しく感じたが、会計ソフトを使えば自動で仕訳してくれる。年間65万円の控除を考えれば、ソフト代の数万円は安い投資」と独立5年目の佐藤一人親方(仮名)は語る。
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ただし、複式簿記による記帳は毎日の積み重ねが重要だ。「領収書を溜め込んで年末に一気に処理しようとすると挫折する。毎日5分でいいから記帳する習慣をつけることが成功のコツ」と林氏はアドバイスする。
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よくある質問|電気工事一人親方のリアルな疑問
電気工事一人親方を目指す人からよく寄せられる質問とその回答をまとめた。
未経験から一人親方になれるか?
A. 法的には不可能です。電気工事業者登録には実務経験3年以上が必須条件だからです。
電気工事業法により、電気工事業者になるには以下の要件が必要:
- 電気工事士の資格(第二種以上)
- 実務経験3年以上の証明
- 主任技術者の専任
「未経験からいきなり一人親方は無理。まずは電気工事会社で経験を積み、技術と人脈を身につけることが先決」と林氏は断言する。
会社員時代より収入は上がるか?
A. 人によります。調査では76%の人が収入アップを実現していますが、24%は減少しています。
収入アップの主な要因:
- 営業力による高単価案件の獲得
- 第一種電気工事士等の上位資格取得
- 継続取引先の確保による安定収入
- 経費計上による実質手取りの増加
一方、収入が下がった人の特徴:
- 営業が苦手で案件確保に苦労
- 価格競争に巻き込まれて安値受注
- 第二種のみで高単価案件を取れない
「独立すれば必ず稼げるわけではない。営業力と技術力の両方が必要」と調査に協力した複数の一人親方が強調した。
繁忙期・閑散期の仕事量の変化は?
A. 3~5月と9~11月が繁忙期、12~2月と7~8月が閑散期になる傾向があります。
建設業界の季節変動により、電気工事も大きく影響を受ける:
繁忙期(3~5月、9~11月)
- 新築工事・リフォーム工事が集中
- 案件数・単価ともに高水準
- 休日出勤も多く、月収50万円超も可能
閑散期(12~2月、7~8月)
- 新規着工が減少
- メンテナンス・修理工事が中心
- 月収20万円台になることも
「閑散期の収入減を見込んで、繁忙期に貯蓄することが重要。また、閑散期は資格取得の勉強時間に充てる人も多い」と独立8年目の山田一人親方(仮名)は語る。
現場でのトラブル対応はどうする?
A. 技術的なトラブルは即座に専門家に相談、事故・クレームは保険会社と弁護士への連絡が基本です。
一人親方は現場で一人になることが多く、トラブル時の対応が重要だ。
技術的トラブル
- 先輩一人親方・電材商社に即座に相談
- メーカーの技術サポートセンターを活用
- 無理せず、わからないことは素直に聞く
事故・怪我
- 119番通報(救急要請)
- 労災保険組合への連絡
- 元請け・施主への報告
クレーム・トラブル
- 冷静に事実確認
- 賠償責任保険会社への連絡
- 必要に応じて弁護士相談
「一人だからこそ、何かあった時の相談先を複数確保しておくことが大切。プライドを捨てて、わからないことは素直に聞く姿勢が事故防止につながる」と15年の現場経験を持つ林氏は強調する。
