ネットワーク工程表とは?クリティカルパス計算からエクセル作成まで施工管理の実務視点で解説
監修: 林 友貴(1級電気工事士・キャリアアドバイザー) / 執筆: 施工管理ちゃんねる編集部
林氏は1級電気工事士の資格を持ち、建設現場での実務経験10年。施工管理ちゃんねるで88名以上の建設業界キャリア相談を担当している。
ネットワーク工程表と聞いて、「まるで暗号のよう」と感じた経験はないか?多くの施工管理技士がそう思うのも無理はない。試験では毎年必ず出題される必須項目なのに、実際の現場では「バーチャートがほとんど」というのが実態だからだ。
ネットワーク工程表とは、作業間の順序関係を矢印で結んだ工程管理図のことで、クリティカルパス(工期短縮ができない重要工程)を明確に特定できる手法である。PERT(Program Evaluation and Review Technique)工程表とも呼ばれ、大規模プロジェクトの全体把握に威力を発揮する。
Yahoo!知恵袋では「どこの業者でも、上場会社でも使用せず、バーチャートがほとんどとの回答を得ました」という声がある一方で、X上では「足し算と引き算レベルだが、解き方を知らないと手が止まる」「30分〜1時間で攻略可能」という学習者の声も聞こえてくる。この理論と実践のギャップこそが、ネットワーク工程表の本質を物語っている。
この記事のポイント
- ネットワーク工程表は作業の依存関係とクリティカルパスを可視化する工程管理手法
- 計算は足し算・引き算レベルだが解法パターンの習得が必須(30分〜1時間で攻略可能)
- 実務では大規模工事以外はバーチャート工程表が主流だが全体把握にはネットワークが有効
- 一級施工管理技士試験の必出項目で毎年5〜10点の配点がある
- エクセルでの作成は6ステップで可能だが計算式の自動化がコツ
ネットワーク工程表とは?基本の仕組みと従来工程表との違い
ネットワーク工程表について正確に理解するには、まず基本構造から押さえておこう。多くの学習者が「暗号のよう」と感じるのは、この基本を飛ばしてしまうからだ。
ネットワーク工程表の基本構造
ネットワーク工程表は、円(ノード)と矢印(アロー)で構成される。円はイベント(作業の開始点・終了点)を表し、矢印は作業そのものを示す。この表記法をADM(Arrow Diagramming Method)と呼ぶ。
各要素の意味は以下の通りだ:
- ノード(円):作業の開始・終了を表すイベント
- アロー(矢印):作業内容と所要日数
- ダミー(破線):作業時間ゼロの依存関係表示
- ES(最早開始時刻):作業を最も早く開始できる時刻
- EF(最早終了時刻):作業を最も早く終了できる時刻
- LS(最遅開始時刻):全体工期に影響しない最も遅い開始時刻
- LF(最遅終了時刻):全体工期に影響しない最も遅い終了時刻
バーチャート工程表との3つの違い
実務で圧倒的に使われるバーチャート工程表と比較すると、ネットワーク工程表の特徴が明確になる。
1. 作業間の依存関係の表現力
バーチャートは時系列で作業を並べるが、どの作業がどの作業に依存しているかが見えない。ネットワーク工程表なら「基礎工事が完了しなければ躯体工事は始められない」といった関係が一目瞭然だ。
2. クリティカルパスの明確化
バーチャートではどの作業が遅れると全体工期に影響するかが分からない。ネットワーク工程表では計算によってクリティカルパス(余裕時間ゼロの重要工程)が特定できる。
3. 工期短縮の検討精度
バーチャートでは「なんとなく」作業を前倒しするが、ネットワーク工程表なら「クリティカルパス上の作業を短縮すれば確実に工期短縮できる」と論理的に判断できる。
実務での使用頻度の実態(監修者体験談)
筆者が施工管理をしていた頃、発電所建設という大規模プロジェクトでは確かにネットワーク工程表を使った。全体で3年、工程数200以上の複雑なプロジェクトでは、作業の依存関係を整理しないと収拾がつかなくなるからだ。
しかし、日常的な電気工事(ビル・マンション・工場など)では99%がバーチャート工程表だった。理由は単純で、「現場の職人がパッと見て分からない図は使い物にならない」からだ。
「どこの業者でも、上場会社でも使用せず、バーチャートがほとんどとの回答を得ました。まるで暗号のようで誰が見ても解りづらいと思います」
Yahoo!知恵袋の声
この声は実態を正確に表している。ネットワーク工程表は工程管理者(施工管理技士)が全体把握のために頭の中で整理するツールであり、現場で共有する工程表としてはバーチャートの方が実用的だというのが現実だ。
クリティカルパスの計算方法と解き方のコツ
クリティカルパスの計算は確かに「足し算と引き算レベル」だが、解法のパターンを知らないと試験本番で手が止まる。ここでは計算手順を具体例で解説する。
最早開始時刻(ES)と最早終了時刻(EF)の計算
まず前向き計算(Forward Pass)でESとEFを求める。計算は左から右に進める。
| 作業 | 所要日数 | 先行作業 | ES | EF |
|---|---|---|---|---|
| A | 3日 | なし | 0日 | 3日 |
| B | 2日 | A | 3日 | 5日 |
| C | 4日 | A | 3日 | 7日 |
| D | 2日 | B,C | 7日 | 9日 |
計算ルール:
- ES = 先行作業のEFの最大値
- EF = ES + 所要日数
- 複数の先行作業がある場合は、最も遅く終わる作業のEFを採用
作業Dの場合、先行作業BのEF=5日、先行作業CのEF=7日なので、ES=7日(大きい方)となる。
最遅開始時刻(LS)と最遅終了時刻(LF)の計算
次に後向き計算(Backward Pass)でLSとLFを求める。計算は右から左に進める。
| 作業 | 所要日数 | 後続作業 | LF | LS |
|---|---|---|---|---|
| D | 2日 | なし | 9日 | 7日 |
| C | 4日 | D | 7日 | 3日 |
| B | 2日 | D | 7日 | 5日 |
| A | 3日 | B,C | 3日 | 0日 |
計算ルール:
- 最終作業のLF = EF(プロジェクト完了日)
- LS = LF – 所要日数
- 複数の後続作業がある場合は、最も早く始まる必要がある作業のLSを採用
フリーフロートとトータルフロートの求め方
フロート(余裕時間)は工程管理の核心概念だ。計算式は以下の通り:
- トータルフロート(TF) = LS – ES または LF – EF
- フリーフロート(FF) = 後続作業の最早ES – 自作業のEF
トータルフロートがゼロの作業がクリティカルパスを構成する。上記の例では作業A→C→Dがクリティカルパスとなる(すべてTF=0)。
計算ミスを防ぐ3つのチェックポイント
X上でも「YouTube『ネットワーク工程表 解き方』で30分で理解」という声があるが、計算ミスで失点するケースが多い。以下のチェックポイントで確実に得点しよう。
チェックポイント1:前向き計算の合流点
複数の作業が同じノードに流入する場合、必ず最大値を選ぶ。「早く始められる方」を選ぶと間違う。
チェックポイント2:後向き計算の分岐点
1つの作業から複数の作業が分岐する場合、必ず最小値を選ぶ。「遅く始められる方」を選ぶと間違う。
チェックポイント3:クリティカルパスの連続性
クリティカルパス上の作業は開始から終了まで途切れなく続く。途中で途切れている場合は計算ミス。
エクセルでネットワーク工程表を作成する6つのステップ
実務でネットワーク工程表を作成する場合、専用ソフト(MS Project等)もあるが、まずはエクセルでの作成方法を習得しておこう。大半の現場で使えるのはエクセルだからだ。
作業の洗い出しと依存関係の整理
ステップ1:WBS(Work Breakdown Structure)の作成
まず全作業を洗い出し、階層構造で整理する。電気工事の例:
- 1.0 仮設工事(1日)
- 2.0 配管工事(3日)- 先行:1.0
- 3.0 配線工事(5日)- 先行:2.0
- 4.0 機器取付(2日)- 先行:3.0
- 5.0 試験調整(1日)- 先行:4.0
- 6.0 検査・引渡(1日)- 先行:5.0
ステップ2:依存関係マトリックスの作成
エクセルのマトリックス表で、縦軸に全作業、横軸にも全作業を並べる。依存関係があるセルに「1」を入力する。これで漏れや矛盾をチェックできる。
エクセルでのネットワーク図描画方法
ステップ3:図形描画機能でノードとアローを配置
エクセルの「挿入」→「図形」→「円」でノードを作成。「矢印」でアローを描画する。ノードには番号、アローには作業名と所要日数を記載。
ステップ4:レイアウトの最適化
左から右に時系列で配置し、交差線を最小化する。見やすさが実用性に直結するため、何度も修正を重ねる。
計算式の設定と自動化のコツ
ステップ5:計算表の作成
別シートに計算専用表を作成。以下の列を設定:
| 作業ID | 作業名 | 所要日数 | 先行作業 | ES | EF | LS | LF | TF |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 基礎工事 | 3 | – | =MAX(先行作業のEF) | =ES+所要日数 | =LF-所要日数 | =MIN(後続作業のLS) | =LS-ES |
ステップ6:条件付き書式でクリティカルパスを強調
TF列で「=0」の行に赤色を適用。これでクリティカルパスが一目で分かる。図形側も手動で赤線にして視覚化を完成させる。
このエクセルテンプレートがあれば、作業リストを変更するだけで自動的にクリティカルパスが更新される。中小規模の工事なら十分実用的だ。
施工管理業務におけるネットワーク工程表の活用場面と限界
理論的には優秀なネットワーク工程表だが、実際の施工管理業務での使い分けはどうあるべきか。筆者の実務経験を交えて率直に語る。
▶ 施工管理の残業実態 – 長時間労働は本当?原因と対策を徹底…で詳しく解説しています
大規模工事での工程管理における活用例
筆者がプラント建設(工期3年、総工程数200以上)に携わった際、ネットワーク工程表は確実に威力を発揮した。特に以下の場面で有効だった:
設計変更時の影響分析
設備仕様が変更された時、「どの工程に何日の遅れが生じ、最終的にプロジェクト全体に何日影響するか」をクリティカルパスから即座に算出できた。バーチャートでは「なんとなく2週間遅れそう」という感覚論になりがちだ。
リソース配分の最適化
クリティカルパス上の作業には最優先で人員を投入し、余裕のある作業(フロート大)は後回しにする判断が論理的にできた。
発注者への説明責任
「なぜこの作業を急ぐのか」「なぜ人員を増やす必要があるのか」をクリティカルパスの概念で説明すると、発注者も納得しやすかった。
日常業務でバーチャート工程表が選ばれる理由
しかし、筆者が担当した電気工事の90%以上はバーチャート工程表だった。理由は明確だ:
現場での理解しやすさ
職人さんに「来週はどの作業をやりますか?」と聞かれた時、バーチャートなら1秒で答えられる。ネットワーク図を見せても「よくわからん」となる。
進捗管理の簡単さ
「今日でここまで終わった」という報告をバーチャートに書き込むのは簡単だが、ネットワーク図での進捗更新は面倒だ。
変更への対応
現場では急な変更が日常茶飯事。バーチャートなら線を引き直すだけだが、ネットワーク図は依存関係の見直しから必要になる。
「全体の流れを把握するにはネットワークのほうが分かりやすい」
Yahoo!知恵袋の実務経験者の声
この声も的確だ。施工管理者自身が頭の中で全体を整理する際はネットワークの考え方が有効だが、現場運用はバーチャートの方が現実的ということだ。
工程表選択の現場判断基準(監修者の実例)
筆者が実際に使っていた判断基準を紹介する:
ネットワーク工程表を使う場合
- 工期6ヶ月以上かつ工程数50以上
- 複数の専門工事業者が複雑に絡む工事
- 設計変更が頻繁に発生する可能性が高い工事
- 発注者に工程説明を求められる重要工事
バーチャート工程表で十分な場合
- 工期3ヶ月以下の標準的な電気工事
- 過去に同様の工事経験が豊富
- 作業順序が比較的単純
- 現場職人との情報共有を重視する工事
要は適材適所。両方の特徴を理解して使い分けることが、実務では最も重要だと感じている。
一級施工管理技士試験でのネットワーク工程表攻略法
実務では使い分けが重要だが、試験では確実に得点する必要がある。一級施工管理技士試験でのネットワーク工程表は毎年出題される「サービス問題」とも言える。解法パターンを習得すれば確実に得点できる。
頻出パターンと配点の傾向分析
過去5年間の試験問題を分析すると、ネットワーク工程表は以下のパターンで出題されている:
| 出題パターン | 配点 | 出題頻度 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| クリティカルパスの特定 | 5点 | 100% | 基礎 |
| ES・EF・LS・LFの計算 | 3点 | 80% | 基礎 |
| フロートの計算 | 2点 | 60% | 標準 |
| 工期短縮の検討 | 3点 | 40% | 応用 |
最低でも8点、最大で13点の配点がある。合格ライン60点に対して10点以上を確実に取れれば、他の分野での失点をカバーできる。
特に「クリティカルパスの特定」は毎年必出で、かつ最も配点が高い。ここを確実に押さえることが合格への第一歩だ。
時間短縮のための計算テクニック
X上で「30分〜1時間で攻略可能」という声があるが、試験本番では時間勝負。効率的な計算テクニックを紹介する。
テクニック1:表形式での一括計算
問題用紙の余白に以下の表を書く:
| 作業 | 日数 | ES | EF | LS | LF | TF | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 3 | 0 | 3 | 0 | 3 | 0 | CP |
この表に沿って機械的に計算すれば、計算漏れや転記ミスを防げる。
テクニック2:クリティカルパスの先読み
前向き計算の段階で「工期が最も長くなりそうなルート」を予想しておく。後向き計算で答え合わせをする際、予想と一致すれば計算ミスの可能性は低い。
テクニック3:部分点狙いの戦略
時間が足りない場合、クリティカルパスの特定だけに集中する。5点満点を確実に取る方が、全部やって2点しか取れないより戦略的だ。
「NW工程表」略語表記は技術士試験で使えるか?
Yahoo!知恵袋で話題になった「NW工程表」の略語使用について、技術士試験での注意点を整理しておく。
「読者が仲間内でないなら説明せずに『NW工程表』を使うのは乱暴です」
Yahoo!知恵袋の回答
この指摘は正しい。技術士試験の業務経歴書では以下の対応が適切:
- 初出時は正式名称:「ネットワーク工程表(以下、NW工程表)」
- 文字数制限時の優先順位:略語を使う前に他の冗長な表現を削る
- 業務内容の核心:「NW工程表を使った」ことより「クリティカルパス管理で工期短縮を実現した」成果を強調
技術士試験では専門用語の正確な理解が問われる。略語の使用自体は減点対象ではないが、読み手への配慮も評価される。
ネットワーク工程表の落とし穴|現場でよくある失敗パターン3選
ネットワーク工程表は強力な管理ツールだが、使い方を間違えると逆効果になる。施工管理の現場で実際に起きた失敗パターンを紹介する。
失敗1:ダミー作業の設定ミスでクリティカルパスが狂う
ダミー作業(点線矢印)の向きや接続先を間違えると、本来クリティカルでない経路がクリティカルパスと判定される。結果、重要でない作業にリソースを集中し、本当のボトルネックが放置されるリスクがある。
失敗2:フロート(余裕日数)を使い切って工期遅延
「フロートがあるから大丈夫」と油断し、非クリティカル作業を後回しにした結果、天候不良や資材遅延でフロートを使い果たし、全体工期に影響した事例は少なくない。フロートは「使っていい余裕」ではなく「不測事態への保険」だと考えるべきだ。
失敗3:工程表を作って満足し更新しない
着工時に完璧な工程表を作っても、実際の進捗を反映して更新しなければ意味がない。「工程表と現場が乖離しているのに気づかず、竣工2週間前に致命的な遅延が発覚した」という失敗は、現場監督なら一度は経験があるはずだ。
よくある質問
Q: ネットワーク工程表は実務で本当に使われているのですか?
A: Yahoo!知恵袋の指摘通り、日常的な電気工事では「バーチャートがほとんど」というのが実態です。しかし大規模工事(工期6ヶ月以上、工程数50以上)では確実に威力を発揮します。筆者の経験では、プラント建設のような複雑なプロジェクトでは設計変更時の影響分析や発注者への説明で必須のツールでした。適材適所で使い分けることが欠かせない。
Q: ネットワーク工程表の計算が難しく感じるのですが、効率的な学習方法はありますか?
A: X上でも推奨されている通り、YouTubeで「ネットワーク工程表 解き方」と検索して動画学習することをおすすめします。計算自体は「足し算と引き算レベル」ですが、解法パターンの習得を見落とせない。30分〜1時間で基本は理解できるので、その後は過去問を繰り返し解いて計算スピードを上げることに集中してください。表形式での一括計算を習慣化すると確実に得点できます。
Q: 技術士試験でNW工程表と略語で書いても大丈夫ですか?
A: 初出時は「ネットワーク工程表(以下、NW工程表)」と正式名称を併記することを強く推奨します。Yahoo!知恵袋でも指摘されている通り、説明なしでの略語使用は「乱暴」と受け取られる可能性があります。文字数制限がある場合も、略語使用より他の冗長な表現を削ることを優先してください。技術士試験では読み手への配慮も評価されるため、正式名称での表記が無難です。

