建設業経理士1級・2級の難易度と年収を現場視点で解説 – 経営事項審査は本当に2点だけ?
監修: 林 友貴(1級電気工事士・キャリアアドバイザー) / 執筆: 施工管理ちゃんねる編集部
林氏は1級電気工事士として10年間現場、施工管理経験も持つキャリアアドバイザー。これまで88名以上の建設業界転職を支援してきた実績がある。
この記事のポイント
- 建設業経理士1級の合格率は20〜30%(科目別)、2級は40〜50%程度
- 年収アップ効果は限定的で、実務経験がなければ未経験者と待遇は変わらない
- 経営事項審査での加点は実際「たかだか2点程度」(現場の証言)
- 転職市場では建設業界内でのみ評価され、業界外では日商簿記が圧倒的有利
- 取得を推奨するのは建設業経理部門の実務担当者、管理職候補のみ
「建設業経理士を取れと会社から言われたが、本当に価値があるのか?」
Yahoo!知恵袋でこんな悩みを見かけることが多い。会社の指示で勉強を始めたものの、資格の価値が見えないまま勉強している人が意外に多いのが現実だ。
「1級取得者は経営事項審査で点数になりますので優遇されますが、基本的には個別原価計算と工事別の原価差異の分析や決算説明ができないと戦力になりませんから、未経験者と待遇は変わらないですよ」——これは、実際に建設業経理士1級を取得した現場経験者のコメントだ。
正直に言うと、この資格の実態は多くの人が想像するほど甘くない。当サイトの転職支援実績30,000名のデータと現場の生の声から、建設業経理士の本当の価値を明らかにする。
建設業経理士1級・2級の難易度比較【合格率・勉強時間・試験内容を徹底解説】
建設業経理士の難易度は級によって大きく異なる。まず結論から言えば、2級は簿記の基礎があれば3〜6ヵ月程度の勉強で合格可能。1級は実務経験がないと理解が困難な内容で、300〜500時間の学習が必要だ。
建設業経理士1級の難易度と合格率
建設業経理士1級の合格率は科目別で20〜30%程度。3科目すべてに合格する必要があるため、実質的な完全合格率はさらに低くなる。
試験科目と内容:
- 財務諸表論:建設業会計基準、完成工事原価の計算、進行基準・完成基準の使い分け
- 財務分析:建設業に特化した財務諸表分析、工事別採算管理
- 原価計算:個別原価計算、工事間接費の配賦、標準原価計算
実際の学習者からは「日商簿記1級を持っていても、建設業の特殊性に慣れるまで時間がかかった」という声がある。建設業の工事進行基準や完成工事原価の概念は、一般簿記とは大きく異なるためだ。
建設業経理士2級の難易度と合格率
建設業経理士2級の合格率は40〜50%程度で、日商簿記3級程度の基礎知識があれば取得は十分可能だ。
主な出題範囲:
- 建設業簿記の基本概念
- 完成工事原価と完成工事高の計算
- 工事未払金・前受金の処理
- 決算整理と財務諸表作成
学習期間の目安は3〜6ヵ月。ただし、簿記未経験者の場合は日商簿記3級から始めることを強く推奨する。建設業簿記は一般簿記の応用分野だからだ。
日商簿記との難易度比較【経験者の証言】
Yahoo!知恵袋では興味深い証言がある:「一般的には建設業経理士の認知度は低く、なおかつ難易度でも日商簿記>建設業経理士であるからです」
実際の難易度比較(偏差値換算):
- 日商簿記1級:偏差値65-67(合格率10%前後)
- 建設業経理士1級:偏差値58-60(科目別合格率20-30%)
- 日商簿記2級:偏差値50-52(合格率15-20%)
- 建設業経理士2級:偏差値45-48(合格率40-50%)
「日商簿記1級に1カ月専念すれば建設業経理士1級も取れるのでは?」という質問も見られたが、これは現実的ではない。建設業の実務知識がない状態で1ヵ月では、工事進行基準や原価計算の理解が追いつかない。
建設業経理士の年収相場と転職での実際の評価【30,000名の転職データから分析】
ここが最も重要な現実だ。建設業経理士を取得しても、実務経験がなければ年収アップは期待できない。これは当サイトの転職支援実績でも明確に表れている。
▶ 未経験者でも建築設計の職業につける?未経験からの…で詳しく解説しています
建設業経理士1級・2級別の年収相場
建設業経理士保有者の年収相場(当サイト調査・2024年実績):
| 資格・経験 | 平均年収 | 年収レンジ |
|---|---|---|
| 1級+実務経験5年以上 | 520万円 | 450-680万円 |
| 1級+実務経験3年未満 | 380万円 | 320-450万円 |
| 2級+実務経験3年以上 | 420万円 | 350-520万円 |
| 2級のみ(実務経験なし) | 300万円 | 280-350万円 |
注目すべきは、1級を持っていても実務経験が3年未満であれば年収380万円程度に留まることだ。資格手当は月1〜3万円程度が相場だが、基本給のベースアップにはつながりにくい。
転職市場での実際の評価と採用ニーズ
建設業経理士の転職市場での実態は厳しい。Yahoo!知恵袋の現場経験者は率直にこう証言している:
「1級取得者は経営事項審査で点数になりますので優遇されますが、基本的には個別原価計算と工事別の原価差異の分析や決算説明ができないと戦力になりませんから、未経験者と待遇は変わらないですよ」
転職市場での評価実態:
- 建設業界内:実務経験があれば評価される。ただし資格だけでは不十分
- 建設業界外:認知度が低く、日商簿記の方が圧倒的に評価される
- 公認会計士事務所:建設業クライアントを持つ事務所では重宝される
実際の求人を見ると、「建設業経理士1級必須」の条件でも「実務経験3年以上」が併記されているケースが大半だ。
年収アップに繋がるケース・繋がらないケース
年収アップに繋がるケース:
- 建設業の経理部門での実務経験が3年以上ある
- 工事別原価管理システムを使いこなせる
- 決算業務を一人で完結できる
- 経営事項審査の申請書類作成ができる
年収アップに繋がらないケース:
- 資格だけ取得して実務経験がない
- 一般事務から建設業経理への転職を狙う
- 建設業界以外での転職を考えている
- 「とりあえず資格を取れば昇進できる」と考えている
当サイトの面談データでも、「建設業経理士を取ったけれど思うように転職が決まらない」という相談が多い。資格は入り口に過ぎず、実務能力が評価の大部分を占めるのが現実だ。
建設業経理士を取得する主なメリット【経営事項審査の加点効果の実態】
では建設業経理士に価値はないのか?そうではない。適切な人が適切な目的で取得すれば、確実にメリットがある。
経営事項審査での加点効果【実際は2点程度】
まず最も誤解されがちな経営事項審査(経審)での加点効果から整理しよう。
Yahoo!知恵袋のリアルな証言:「加点されるといってもたかだか2点とかそのぐらいだったと思いますが」
経営事項審査での建設業経理士の評価点:
- 1級保有者:2点/人(技術職員数の区分で評価)
- 2級保有者:1点/人
- 評価上限:同一区分内での人数に比例(上限あり)
つまり、1級保有者1人が会社にいても経審の総合評点に与える影響は微々たるものだ。にも関わらず、なぜ企業は取得を推進するのか?
企業が建設業経理士取得を推進する本当の理由
経審での加点が少ないのに企業が取得を推進する理由は他にある:
- 建設業法の要件クリア:許可要件として経理責任者の配置が必要
- 金融機関への信用向上:資格保有者がいることで建設業会計の理解度をアピール
- 内部統制の強化:工事原価の適正管理による利益率向上
- 監査対応の円滑化:会計事務所とのコミュニケーション向上
- 人材育成の指標:経理部門のスキル向上を測る物差し
「経審の点数のため」という説明は分かりやすいが、実際は上記の理由が本質だ。つまり、企業にとってのメリットと個人にとってのメリットは必ずしも一致しない。
転職・昇進での実務的メリット
個人レベルでのメリットは以下の通り:
- 建設業経理部門での転職優位性:実務経験があれば確実に評価される
- 昇進・昇格の条件クリア:管理職登用の要件に含まれることが多い
- 専門性の証明:建設業会計の理解度を客観的に示せる
- 業務範囲の拡大:決算業務、原価管理業務を任されやすくなる
- 転職時の差別化:同等の経験者との差別化要因になる
監修者の林氏(建設業界15年)は「建設業経理士は”あって当たり前”の資格。ないと管理職になれない会社も多い」と指摘する。
ただし、これらのメリットを享受できるのは建設業界内に限定される点は理解しておく必要がある。
建設業経理士が「意味ない」と言われる主な要因【取るべき人・不要な人を明確化】
「建設業経理士は意味ない」という声が絶えないのには、明確な理由がある。
建設業経理士が不要な職種・ケース
1. 建設業界外での転職を考えている人
Yahoo!知恵袋の証言が端的に表している:「一般的には建設業経理士の認知度は低く、なおかつ難易度でも日商簿記>建設業経理士であるからです」
建設業界以外では、圧倒的に日商簿記の方が評価される。製造業、サービス業、IT業界への転職を視野に入れているなら、建設業経理士の勉強時間を日商簿記に回すべきだ。
2. 現場職・技術職として働き続ける人
施工管理技士、現場監督、職人として働き続ける予定なら、建設業経理士の優先度は低い。むしろ以下の資格の方が直接的に年収アップにつながる:
- 1級施工管理技士(年収+100〜200万円)
- 電気工事士(現場での対応力向上)
- 監理技術者資格(現場責任者として必須)
3. 実務を伴わない資格コレクター
「資格を取れば何とかなる」と考える人には向かない。建設業経理士は実務と密接に関連する資格で、実際の工事原価計算や決算業務を経験しなければ、その価値を発揮できない。
取得を強く推奨する人の特徴
一方で、以下に該当する人には強く推奨する:
- 建設業の経理部門で働いている人:昇進・昇格の必要条件
- 建設業界内での転職を考えている人:差別化要因として有効
- 将来的に管理職を目指す人:多くの建設会社で管理職要件に含まれる
- 独立・開業を視野に入れている人:建設業許可取得時の経理責任者要件
- 会計事務所で建設業クライアントを担当する人:専門性向上に直結
当サイトの転職支援でも、上記に該当する人は確実に年収アップを実現している。
建設業経理士vs日商簿記【どっちを取るべき?転職プロが本音で回答】
最も多い質問が「建設業経理士と日商簿記、どちらを取るべきか?」だ。転職支援の現場で見てきた実態をもとに、本音で回答する。
転職市場での企業ニーズの違い
転職市場での企業ニーズは明確に分かれる:
| 業界 | 建設業経理士 | 日商簿記2級 | 日商簿記1級 |
|---|---|---|---|
| 建設業 | ◎ 必須レベル | ○ 歓迎 | ◎ 高評価 |
| 製造業 | × ほぼ無評価 | ◎ 必須 | ◎ 高評価 |
| サービス業 | × 認知度低 | ◎ 必須 | ○ 歓迎 |
| 会計事務所 | ○ 専門性評価 | ◎ 必須 | ◎ 高評価 |
建設業界での転職を考えているなら建設業経理士が圧倒的に有利。それ以外の業界なら日商簿記一択だ。
監修者の林氏は転職相談でこう伝えている:「建設業界で食べていく覚悟があるなら建設業経理士。選択肢を広げたいなら日商簿記。迷ったら日商簿記を推奨している」
キャリア目標別の最適な資格選択
パターン1:建設業界で管理職を目指す
推奨ルート:日商簿記3級 → 建設業経理士2級 → 建設業経理士1級
建設業の管理職には建設業経理士が事実上必須。ただし、基礎として日商簿記3級程度の知識は必要だ。
パターン2:転職の選択肢を広げたい
推奨ルート:日商簿記3級 → 日商簿記2級 → (必要に応じて)建設業経理士2級
汎用性を重視するなら日商簿記を優先すべき。建設業経理士は「あれば有利」程度の位置づけで十分だ。
パターン3:現在建設業で実務経験あり
推奨ルート:建設業経理士2級 → 建設業経理士1級
既に建設業で経理実務を経験しているなら、建設業経理士を最優先で取得すべき。転職時の差別化に直結する。
パターン4:完全未経験から経理職を目指す
推奨ルート:日商簿記3級 → 日商簿記2級 → 実務経験積む → 建設業経理士検討
完全未経験なら、まず日商簿記で基礎を固めることが最優先。建設業経理士はその後の専門性向上として検討すればよい。
正直に言うと、多くの人にとって最初に取るべきは日商簿記だ。建設業経理士はその後の専門性向上として位置づけるのが現実的である。
よくある質問
Q. 建設業経理士1級を取得しても年収は上がらないのでしょうか?
A. 実務経験がなければ年収アップは期待できません。Yahoo!知恵袋の現場経験者も「基本的には個別原価計算と工事別の原価差異の分析や決算説明ができないと戦力になりませんから、未経験者と待遇は変わらないですよ」と明言しています。資格手当として月1〜3万円程度は見込めますが、基本給のベースアップには実務能力が必要です。
Q. 経営事項審査での加点効果は実際どの程度なのでしょうか?
A. 実際の加点は「たかだか2点程度」(Yahoo!知恵袋より)というのが現場の証言です。1級保有者1人につき2点、2級保有者1人につき1点の加点ですが、経審の総合評点に与える影響は微々たるものです。企業が取得を推進する理由は、むしろ建設業法の要件クリアや金融機関への信用向上にあります。
Q. 日商簿記と建設業経理士、どちらを先に取得すべきでしょうか?
A. 転職の選択肢を広げたいなら日商簿記を先に取得することを推奨します。Yahoo!知恵袋でも「一般的には建設業経理士の認知度は低く、なおかつ難易度でも日商簿記>建設業経理士であるからです」という指摘があります。建設業界で長期的に働く確固たる意志があるなら建設業経理士優先でも構いませんが、迷ったら日商簿記から始めるのが無難です。
建設業経理士は「取る人を選ぶ資格」だ。建設業界での専門性向上には確実に価値があるが、万人におすすめできる資格ではない。
あなたのキャリア目標と現在の状況を冷静に分析し、本当に必要な資格かどうかを判断することが重要だ。「会社に言われたから取る」ではなく、自分の将来にとって価値があるかどうかで決めてほしい。
