建築施工管理の仕事には、求められる役割やスキルがあります。ここでは、それらのほかに一日の流れや実際の休日・休暇所得の状況、その将来性について具体的に説明していきます。
建築施工管理の役割とは?
役割1:工事全体を把握する現場監督
建物ができる過程には、設計と施工という二つの段階があります。建築施工管理は、施工段階において工事全体を把握する現場監督としての役割があります。設計図の内容を熟知することはもちろん、現場での技術指導、工程管理、職人の手配など工事を円滑に進められるよう工事全体をコントロールする必要があります。
役割2:発注者の窓口
施工の現場では、設計図で描ききれない部分や仕上げ材の選定など、発注者との打ち合わせが必要になる場面があります。その際に発注者の窓口となり、打合わせのスケジュール調整や資料準備いった作業も重要な役割です。
役割3:現場の安全管理
建物の建設にあたっては様々な工種があり、複数の下請業者が同時進行で作業を行うことがあります。その際に業者ごとの安全管理だけでなく、材料の搬出入や仮設足場の利用状況など工事全体の安全管理を行う役割もあります。
建築施工管理に求められるスキルとは?
スキル1:調整力
建物をつくる際には、発注者や下請業者など多くの関係者とコミュニケーションをとることが必要不可欠です。その際に重要になるのが、こうした関係者とのやりとりを調整するスキルです。建築の現場では、下請業者に無理難題をお願いすることもあれば、逆に発注者から突発的な変更指示を受けることもあります。こうした事態を解決するために、的確な提案やそれを実現するための段取りができる「調整力」が求められます。
スキル2:高い技術力
昨今の建物はデザインや構造が複雑なものが多く、標準的なディテールや工法では対応しきれないことが多々あります。こうした際に問われるスキルが「技術力」です。実績のない材料や工法に対し、工学的な根拠をもって現場を指揮できるかがポイントです。
スキル3:フィードバック力
過去の失敗をにフィードバックし、次の現場に活かす能力も重要なスキルです。例えばコンクリート打放し仕上げの外壁で「誘発目地」の設置間隔を間違うと、引き渡し後すぐにひび割れが起きてしまうケースがあります。もし過去にこうした失敗を一度でもしたら、次の現場で同じミスを絶対に繰り返すことがないフィードバック力が重要です。具体的には「ひび割れのメカニズムを理解し、適正な間隔で目地を設ける」といった具合に、過去の失敗から教訓を見出し、その経験を蓄積できるスキルがとても大切です。
建築施工管理の働き方は?
建築施工管理の1日の流れは
7:30~ 8:00 メール確認および当日作業の事前確認
8:15~ 8:30 朝礼
8:30~12:00 下請け業者との連絡調整、施工図の確認・検討
12:00~13:00 現場事務所にて昼休憩
13:00~17:00 現場にて作業状況を確認・指導
17:00~17:30 終業に合わせ現場全体の安全確認
17:30~18:30 休憩・夕食
18:30~23:30 施工図チェック・コスト・工程整理
23:30~ 帰宅
建築施工管理の休日や休暇は?
ケース1:繁忙時の休日・休暇
現場の繁忙期では、週に1日休めるかどうかです。工程通りに工事が進捗すれば、長期休暇の取得も可能ですが、天候や作業の進捗に左右されるため予定が立てにくいのが実情です。
ケース2:休工時の休日・休暇
建築現場ごとの常駐がメインとなるため、建物が完成し次の現場が始まるまでの期間は、ほぼ暦通りの休日・休暇の取得が可能です。また、繁忙期でたまった代休を消化するため、長期の休みを取れる会社もあるようです。
ケース3:作業時間が限定される工事の休日・休暇
建築の現場では、下記のような特殊な条件のある工事があります。
○改修などで、昼間は営業しているため夜間しか作業ができない「夜間工事」
○工場の改修などで、工場の稼働が停止している年末年始しか作業ができない「年末年始工事」
このような作業期間が限定される工事の場合は、工事のスケジュールが最優先となるため、休日・休暇の取得は二の次になります。しかし、工事が終わればまとまった休みが取りやすい面もあります。
建築施工管理の仕事が激務と言われる理由
本当に激務なの?
建築施工管理の現場は、少なめに言っても「激務」であることは間違いありません。工事の少ない閑散期であればそこまでではありませんが、一度現場が始まれば工事期間中は仕事に全てを注ぐくらいの覚悟がないと現場監督は務まりません。
激務と言われる理由は?
第一は自分ひとりの裁量で仕事をコントロールできないことです。多くの関係者との調整だけでなく、天候や災害といった第三者的なものの影響を受けるため、常に不足の事態に備え準備する必要があります。そのため、必然的に現場での拘束時間が長くなり、実際に不足の事態が起きた際には、現場監督としてのスキルを問われるため激務と言われています。
建築施工管理の年収は?
年齢別の平均年収
建築施工管理の平均年収は、20代で約390万円、30代で約500万円、40代以上では約550万円以上と言われています。会社の規模や役職によって大きく異なるところもありますが、おおよその目安になります。
経験年数別の年収
経験年数による年収の目安は、未経験〜10年で約330〜450万円、経験年数20年で500〜550万円、経験年数20年以上で550万円以上(会社の規模によっては1000万円以上)となります。
職種別:建築施工管理技士の年収
建築施工管理技士の職種には、ハウスメーカー、工務店、ゼネコン、建築系メーカーなど様々なものがあります。会社の規模によってばらつきがあるところですが、業界全体の平均年収は約500万円と言われています。ただし大手のハウスメーカーやゼネコンとなると、激務な分その年収が1000万円を超えてくるケースもあります。
建築施工管理の将来性は?
激務のイメージが定着していますが、昨今の働き方改革やIT化により確実に現場の状況は変わりつつあります。必須スキルである技術力や経験値の部分がAIの学習機能で補うことができ、調整力に関しても各種ITツールにより劇的に効率化されてきています。
これまでアナログが主流だった業種のため、IT化により将来性は大いに期待できます。ただし、退職や若い年齢の離職といった問題を抱えており、生産性を上げざるを得ないという事情もあります。
建築施工管理の年収をあげるには?
資格をとる
代表的なものとして、1・2級建築施工管理技士があります。1級の難易度が高いという方であればまず2級を取得することをおすすめします。さらに上を目指したい方であれば1級建築士があります。施工管理だけでなく設計・監理など建築全体のプロとして活躍できるため、会社によっては年収アップの対象になり得ます。
経験を積む
建築施工管理における重要な要素として「経験の蓄積」があります。建物の種類には病院や工場、学校や庁舎というように様々なタイプがあり、それぞれのタイプごとに「ノウハウ」が存在します。具体的には、工場であれば重量物に耐える床仕様や、病院であれば抗菌対応の内装などです。
このような経験値は資格のよう試験で得られるものでなく、実際にその現場に身を置いて初めて得られるものです。こうした経験値を蓄積しオンリーワンの存在として自分の価値を高めることで年収UPにつながる可能性があります。
転職をする
選択肢のひとつとして、転職するという方法もあります。転職先の会社が大きく業績がよければ,年収をあげることも可能です。ただし、現状よりも激務になる可能性もあるため、ワークライフバランスを考慮して検討することも必要です。
最後に
建築施工管理は、激務ではあるものの「地図に残る仕事」として達成感のある仕事です。
しかし激務であるが故に自分の労働環境や年収に対して、客観的に見直す余裕がないことがほとんどです。そのため、自分のキャリアに対して適正な労働条件となっていないケースもあります。特に建築施工管理は、会社の規模で労働条件が大きく左右される業種です。
自分の置かれた状況に少しでも疑問を感じるようであれば、選択肢のひとつとして転職を検討し、自分のキャリアを最大限に活かすのも有効な方法です。
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