監修: 林 友貴(1級電気工事士・キャリアアドバイザー) / 執筆: 施工管理ちゃんねる編集部
林氏は1級電気工事士として10年の現場経験を持つキャリアアドバイザー。施工管理ちゃんねるで88名以上の転職支援実績。
結論: 電気工事士の平均年収は約380〜450万円(Indeed/厚生労働省調査)。ただし1級電気工事施工管理技士取得・高圧工事経験・再エネ分野への転向で600〜800万円台も現実的な射程圏に入る。
「5年目なのにまだ430万か」、そう打ち明けてくれたのは、異業種から電気工事会社に転職した37歳の男性だ。Yahoo!知恵袋にも同様の投稿がある。休日出勤や夜勤をこなしながら、給与は横ばいのまま。胸のざわつきは、「このままで本当にいいのか」という焦燥に変わっていく。
一方で、太陽光+系統用蓄電池の施工管理を手がける企業との法人面談では「1級電気工事施工管理技士で800万円、経験重視・年齢不問」という条件を直接聞いた。同じ電気工事士でも、年収は200万円以上の開きがある。
この記事は、施工管理ちゃんねる独自面談調査(N=88件)と公的統計をもとに、「なぜその差が生まれるか」と「どう縮めるか」を整理した実践ガイドだ。転職を考えているなら、資格・雇用形態・工事種別の三軸で自分の現在地を確認してほしい。
この記事のポイント
- 電気工事士の平均年収は380〜450万円。1級施工管理技士取得で600万円超が現実ライン(施工管理ちゃんねる面談データより)
- 雇用形態で年収構造が根本的に違う。一人親方は粗利600〜900万でも経費・保険で手取りが激減するリスクがある
- 再エネ・データセンター・EV充電インフラの3分野が2030年に向けて高単価工事を吸収する成長エリア
- AI・BIMは電気工事士の仕事を「奪う」のではなく「変える」。図面読みの自動化が進む一方、現場判断・施工品質は人間に残る
電気工事士の平均年収はいくら?職種・雇用形態・地域別に実態を整理する
電気工事士の年収を「平均」1本で語ると、必ずミスリードが起きる。職種・雇用形態・担当工事の種類によって、同じ資格でも年収は100〜200万円単位でブレるからだ。まず地図を描こう。
Indeed(2026年調査)によると、電気工事スタッフの全国平均年収は約377万円。東京都は約392万円、北海道は約338万円。一方、ライトハウス調べの「建築・土木系エンジニア(建築、設計、施工管理含む)」では平均580万円という数字が出ている。この差は職種の違いだ。「工事スタッフ=作業員層」と「施工管理層」では母集団が根本的に異なる。
第一種・第二種で年収に差はある?資格区分ごとの相場
第二種電気工事士のみ保有の正社員だと、年収の中央値は380〜420万円あたりに集まる。一種まで持つと430〜500万円が相場感だ。差は年間50〜80万円前後、数字にすると小さく見えるが、15〜20年積み上げると生涯収入で1,000〜1,500万円の差になる。
現役電気工事士のリアルな声として、Yahoo!知恵袋に次のような投稿がある。「資格より経験だ!資格なんて……という人もいるが、上に上がるためにはかなり頑張らないとダメ。2種程度だとダメ。1種は当然ながら、1級施工管理や消防設備も取得しましょう」。この視点は正しい。資格単体より、資格が「高単価工事への参入資格」として機能するかどうかが年収の分かれ目になる。
施工管理ちゃんねるの面談データでは、派遣会社の資格手当として「二種電工で月+5,000円、1級施工管理技士で月+60,000円」という実額が出ている。年換算すると、1級施工管理技士は手当だけで72万円のプレミアムだ。
正社員・一人親方・派遣、雇用形態が年収を大きく左右する理由
雇用形態は単なる「働き方」ではなく、年収構造そのものを決める変数だ。
正社員は安定した固定給に残業代・資格手当・賞与が乗る。転職会議の口コミでは「残業代が50時間までしかつかない」という不満も散見されるが、逆に言えば50時間分は確実に支払われる企業も多い。基本530万+残業30時間分で年収600万超、面談で具体的に確認できた数字だ。
一人親方は請負単価×稼働日数で収入が決まる。腕一本で年収700〜900万円に達する人もいるが、社会保険・道具代・材料費・車両維持費などを自己負担すると、手取りベースでは正社員と大差ないケースも少なくない。元一人親方が「正社員の方がマシ」と転職相談に来るケースは実際に増えている、というのが当サイトの現場感覚だ。
派遣(正社員型派遣)は、誤解されやすい雇用形態だ。「現場で任せてもらえない」と思っている人が多いが、施工管理ちゃんねるの面談データでは「決裁権以外は正社員と同じ仕事ができる」という実態がある。一方で36協定の制約により残業が物理的に制限されるため、サービス残業を強いられる正社員より「実質的な時給」が高くなるケースもある。
都市部vs地方:同じ資格でも年収が100万円以上変わるケース
Indeed調べの地域別データを並べると、東京が約392万円に対して北海道が約338万円。差は54万円だ。ただしこれは「電気工事スタッフ」の全体平均。高圧工事や施工管理になると地域差はさらに広がる。
面白いデータがある。沖縄を拠点とする米軍基地工事専門の総合建設業の法人面談では、「1級管工事・電気で年収650〜700万円(沖縄)」という条件が出た。転勤なし・出張ほぼなし・残業20時間。地方でもベテラン施工管理技士は都市部に引けを取らない年収を得られる、ただし「特殊な現場」に限った話ではある。
地方の一般的な電気工事士が年収を上げる現実的な方法は、「資格で単価を上げる」か「高単価現場のある企業に転職する」の二択に収斂する。地域に縛られる人ほど、資格の価値が大きくなる。
「安い」と感じるのは本当か、キャリアステージ別の年収推移と1000万円への道筋
電気工事士4年目・21歳の男性がYahoo!知恵袋に書いた。「工業高校卒業後に電工2種を取り、1種も合格して入社。現在の手取りは……」という内容で、回答者が「辞めなさい。いくら何でも安すぎる。私が電工を始めた32年前より安い」と返している。この生々しさは、入社初期の年収が「見えにくい」ことから生じるミスマッチそのものだ。
見習い〜5年目:低圧・内線工事から高圧・特高へ移るタイミングで年収が跳ねる
入社1〜3年目は、低圧の内線工事や軽微な設備工事が中心になる。この時期の年収は270〜320万円が現実的なラインだ。転職会議の口コミには「初年度240万円、ベアは年数百〜1,000円、年収300万円程度で頭打ち」という声もある。希望を持たせるだけ持たせて現実が伴わない会社が一部にあるのは事実だし、正直に言ってしまえばその環境は早めに見切った方がいい。
年収が跳ねるタイミングは「高圧・特高工事への参入」だ。高圧受電設備の工事は第一種電気工事士が必要で、工事単価が一気に上がる。施工管理ちゃんねるの面談では「高圧受電の案件に入れるようになってから月収が35万〜に上がった」という声を複数回収している。5年目を過ぎてもこの経験がない場合、年収は横ばいのまま推移しやすい。
逆に言えば、3〜5年目で意図的に高圧・特高の案件に入れる会社・現場を選ぶことが、10年後の年収を決める。この選択をしている人としていない人では、40代で100〜150万円の差が生まれていることが面談データから見える。
施工管理へのステップアップで年収はどう変わる?現場監督との比較
電気工事士(職人)から電気工事施工管理技士(管理側)へのキャリアチェンジは、年収の天井を一段上げる最も確実な方法だ。
太陽光+系統用蓄電池を手がける再エネ系企業の法人面談では、「職人から施工管理への転向採用(20〜30代)、年齢・年収次第で検討可」という方針を確認した。再エネ企業が「技術職をめちゃくちゃ必要としている」と言う背景には、施工管理人材の絶対的な不足がある。職人経験者は工程管理と技術の両方がわかるため、むしろ歓迎される。
2級電気工事施工管理技士で年収520〜580万円、1級で600〜700万円が標準的な相場感だ。面談で具体的に出た数字では「基本530万+残業30時間で年収600万超え」という条件の企業がある。残業代がフル支給される会社なら、残業時間次第でさらに上乗せされる。
「入社2年で年収100〜200万アップ」、これは夢ではなく、電気施工管理への転向で実際に起きている変化だ。ただし現場の段取り・原価管理・図面読み・業者折衝をまとめて引き受ける覚悟は必要になる。「楽になる」とは違う。仕事の質が変わる、という話だ。
独立・一人親方で年収1000万は現実的か、面談で見えた成功パターンと落とし穴
独立・一人親方で年収1,000万円、これは現実に起きている。ただし「夢の収入」として語られすぎていて、リスクが正確に伝わっていない。
成功パターンは明確だ。高圧・特高工事の経験があり、元請けかゼネコンのサブコンから直接仕事をもらえるルートがある人。1〜2人の職人を抱えて稼働日数を最大化できる人。この条件が揃えば、粗利600〜900万円は十分射程圏に入る。
落とし穴の方が話が多い。社会保険(国民健康保険+国民年金)の自己負担、道具・車両・材料費の立替、繁忙期と閑散期の収入波動、怪我したら即収入ゼロ、これらを差し引くと、手取り換算で正社員の600万円と大差ない、あるいは下回るケースもある。面談で「元一人親方が正社員の方がマシと転職相談に来る」ケースが増えているのはこの構造的な問題が背景にある。
「風呂敷を広げずに小さい工事から地に足つけて独立する」、これが面談で語られる現実解だ。いきなり大きな案件を取りに行って、回収サイクルが合わずに資金ショートするパターンが一番多い。
電気工事士が年収を上げるために今すぐ動ける3つの打ち手
「何をすればいいか」を最初に言う。①1級電気工事施工管理技士の取得、②高単価現場のある会社への転職、③成長分野(再エネ・DC)への業種移動、この3つだ。以下で順番に解説する。
電気工事施工管理技士1級の取得が単価交渉の最短ルートである理由
1級電気工事施工管理技士を持っているかどうかは、求人票の条件欄に直接書いてある。「1級保有者:基本給○万円」「1級保有者優遇」、この表記は、資格が単価交渉の根拠として機能している証拠だ。
派遣会社の資格手当で「1級施工管理技士で月+60,000円」という実額が出ている(施工管理ちゃんねる面談データ)。年換算72万円のプレミアム。しかもこれは手当のみで、配属される現場の格も上がるため、実質的な年収差はさらに大きい。
「3年で2級が取れる。500万は十分射程圏」、これは面談でよく出るフレーズだ。2級取得→高圧工事経験→1級受験というルートを5〜7年で走れれば、30代前半で年収500〜600万円は現実的なラインになる。
注意点を一つ。1級の受験には実務経験要件がある(一次試験合格後、二次試験は監理技術者補佐または特定実務経験1年以上など要件が複数あり、2023年制度改正で経路が増えた)。自分がどの経路に該当するかを早めに確認する必要がある。資格取得の計画は、転職検討と並行して動いた方がいい。
「単身で高単価現場に1年」は本当にアリか、転職希望者の声から見る現実解
施工管理ちゃんねるの面談で、ある30代の既婚男性(電気施工管理歴あり)がこう話した。「名古屋の現場スタートと聞いて……僕が単身で1年間そっちに行くっていうパターンでもいいのかなと思ってるんですけど、ちょっと現実味があるかどうかグレーなところ」。パートナーが転居できない事情があり、単身赴任で年収アップを取りに行くか迷っている、という状況だ。
この「単身で1年、高単価現場に入る」という選択は、年収600〜700万円を狙うための有効な打ち手になり得る。ただし条件がある。
- 住居費用を会社が負担するかどうか(再エネ系企業の法人面談では「住居費用会社負担で全国から転職可」という条件を確認)
- 単身期間が1〜2年で明確に区切られているか
- その1年で得た経験(高圧・特高・大型現場のPM経験等)が次の転職で武器になるか
「選択肢はなるべく広げたい」というのが転職希望者の本音だし、それは正しい。ただ、単身赴任のコスト(精神的・関係的)を年収差で回収できるかは、冷静に数字で確認する必要がある。住居手当がなければ月10〜15万円の追加支出が生まれ、年収が100万増えても手取りは大差ない、というケースもある。
ぶっちゃけ言う。「高単価現場に1年」は確かに効く。だが前提条件が揃っていない状態で飛び込むと、年収は増えても「選択肢を縛った」結果になりやすい。
電気工事士の将来性、2030年に向けて需要が増す現場と消える現場
結論を先に言う。電気工事士の仕事は2030年に向けて「全体として増える」。ただし均一に増えるわけではない。高単価工事が集中する分野とそうでない分野が明確に分かれていく。
再エネ・EV・データセンター、高単価工事が集中する3つの成長分野
再生可能エネルギー(太陽光・蓄電池)は、2030年に向けた政府の脱炭素目標(再エネ比率36〜38%)を達成するための工事需要が膨大だ。太陽光+系統用蓄電池を手がける再エネ企業の法人面談では「技術職をめちゃくちゃ必要としている」という直接の言葉があった。1級電気工事施工管理技士で800万円、経験重視・年齢不問という採用方針は、需要の逼迫度を示している。
データセンターは、AIの学習・推論インフラとして国内外の大規模投資が続いている。関電工・きんでん・九電工といった大手電気工事会社がIRで「データセンター関連工事の受注拡大」を明記している。大規模データセンターの電気設備工事は高圧・特高の設備が必須で、対応できる技術者が不足している。単価は一般建築工事の1.5〜2倍以上になるケースもある。
EV充電インフラは、国が2030年までに急速充電器30万口・普通充電器120万口の整備目標を掲げている(経済産業省)。マンション・商業施設・高速道路SAへの設置工事が急増しており、第一種電気工事士の資格を持つ施工者の需要が拡大している。
これら3分野に共通するのは「高圧・特高の経験者が優遇される」ことだ。低圧内線工事だけのキャリアでは、この波に乗り切れない。今のうちに高圧工事の経験を積む、あるいはそれができる職場に移ることが、2030年に向けた最大の準備になる。
AI・BIMの普及は電気工事士の仕事を奪うか、変えるだけか
「AIに仕事を奪われる職種ランキング」系の記事で電気工事士が出てくることはほぼない。なぜか。現場作業は身体性を伴うからだ。配線を引く・接続する・試験する、これらはロボット技術が現場レベルで実用化されるまでは、人間の手が必要だ。
ただし「変わらない」は嘘だ。変わる部分がある。
BIM(Building Information Modeling)の普及により、図面作成・施工計画の一部が自動化・効率化される。「Tfas」「AutoCAD」を使った電気設備の図面作成は、AIアシストで作業時間が半減するケースが出ている。施工管理の書類業務も、AI活用で1日1〜2時間の短縮が現実的になってきた。
これは「仕事が奪われる」ではなく、「繰り返し作業が自動化されて、判断が必要な仕事の比率が増える」という変化だ。現場でのトラブル対応・職人との折衝・工程変更の判断、こうした「人間の経験と判断が必要な仕事」は、むしろAI普及後に価値が上がる。
2024年4月から建設業にも適用された時間外労働上限規制(2024年問題)は、現場の人員需給をじわじわ変えている。工期延長と人員分散化が進み、「1人の熟練技術者」の代替コストが上がっている。「7割見回りやったり、いろんな人と話したりで、3割書類、ゲームみたいな感じ」と言える施工管理の仕事は、AIで完全代替できる仕事ではない。
正直に言えば、AIが「電気工事士の仕事を奪う」議論は10年早い。今の現場人材不足と高齢化の方が、ずっとリアルな問題だ。
よくある質問
Q. 電気工事士の平均年収は他の建設職種と比べて高い?低い?
A. 作業員レベルでは建設職種の平均並みかやや低め。施工管理技士になると建築・管工事と同水準(580〜650万円前後)になる。ライトハウス調べでは建築・土木系エンジニアの平均が580万円で、電気工事施工管理技士の相場(1級で600〜700万円)はこれと同水準だ。電気は設備系の中でも高圧・特高の専門性がある分、経験者は市場価値が高い。
Q. 第二種電気工事士だけで年収400万円超えは可能ですか?
A. 可能だが、条件が限られる。二種のみで400万円超えを実現しているケースは「残業が多い会社で残業代がフル支給される」か「勤続年数が長く基本給が上がっている」パターンが中心だ。製造業の二次配線工として転職した場合、20代後半で380〜400万円スタートという法人面談データがある。長期的には一種取得・施工管理資格の取得が年収の天井を上げる唯一の方法だ。
Q. 未経験から電気工事士に転職した場合、最初の年収はいくら?
A. 未経験・正社員の初年度は240〜300万円が現実的なラインだ。施工管理ちゃんねるの面談データでは、未経験の施工管理候補者に提示された賃金として月収205,000円(A型)〜265,000円(B型)という具体数字が出ている。候補者本人が「安いですね」と率直に感想を言ったケースだ。ただしそこから1級施工管理技士を取得して3〜5年経験を積めば、500万円は十分な射程圏に入る。
Q. 電気工事士は将来なくなる仕事ですか?
A. なくならない。再エネ・EV・データセンターの設備工事需要が2030年に向けて大幅に増加する見通しで、電気工事士の需要は構造的に拡大している。AIやロボットによる現場作業の代替は技術的・コスト的に10年以上先の話だ。むしろ高齢化による技術者不足が深刻で、経験を持つ電気工事士の市場価値は上昇している。
Q. 高圧工事の経験がないと転職市場で不利になりますか?
A. 不利は不利だ、と正直に言う。再エネ・データセンター・大型商業施設の施工管理求人では「高圧受電経験者優遇」と明記されているケースが増えている。ただし「未経験だから転職できない」ではなく、「高圧工事に入れる現場に転職してから経験を積む」という順番の人も多い。面談では「今の現場が低圧しかない→高圧案件のある会社に移る→2〜3年で経験を積む→再度転職」というルートを歩む人が少なくない。まず動くこと。経験は後からついてくる。


コメント
コメント一覧 (1件)
世間一般では不足していると言われているが、求人を見る限りきちんと探せばよい企業に巡り会えることがわかる記事だった。
実際応募させていただいたが、非常に役に立つ情報が多く、定期的に紹介していただきたく思っている。