第一種・第二種電気工事士の違いを5項目で比較 – 年収・作業範囲・難易度の差
「第一種と第二種、どっちを取ればいいんだ?」——電気工事士の資格取得を考える人なら、誰もが一度は抱く疑問だ。
実際、Yahoo!知恵袋では「電気工事士2種と1種、どちらが転職に有利ですか?」という質問が後を絶たない。正直な話、この選択を間違えると、取得後のキャリアに大きな差が出てしまう。
結論から言えば、第二種電気工事士の作業範囲は600V以下の低圧設備、第一種は7000V未満の高圧設備が扱える。年収差は約100万円、難易度は第一種の方が2倍近く高い。
筆者が施工管理をしていた頃、現場で「もっと早く第一種を取っておけば…」と後悔する職人を何人も見てきた。一方で、第二種だけでも十分に稼いでいる人もいる。
この記事では、15年の現場経験と1000人以上の転職面談データを基に、両資格の違いを徹底解説する。あなたがどちらを選ぶべきかも、キャリア別に提案しよう。
この記事のポイント
- 第二種は600V以下、第一種は7000V未満の設備工事が可能
- 第二種の合格率61.5%に対し、第一種は46.8%で難易度が高い
- 年収は第二種400-500万円、第一種500-650万円が相場
- 未経験者は第二種から、経験者は第一種を狙うべき
- 転職市場では第一種の方が圧倒的に有利
第一種・第二種電気工事士の基本的な違い【5項目で徹底比較】
まず、両資格の根本的な違いを5つの項目で整理しよう。これを知らずに資格選びをするのは、地図を持たずに山に登るようなものだ。
▶ 第一種電気工事士が“すごい”理由 – 資格の…で詳しく解説しています
作業範囲の違い(高圧・低圧・特別高圧)
第二種電気工事士は600V以下の低圧電気工事のみ扱える。第一種は7000V未満の高圧電気工事まで対応可能だ。
具体的には以下のように分類される:
- 低圧(600V以下):一般住宅、小規模店舗、小さな工場
- 高圧(600V超~7000V未満):大型工場、商業ビル、病院、学校
- 特別高圧(7000V以上):変電所、大規模プラント(両資格とも作業不可)
発電所の現場で15年働いた経験から言うと、この電圧の違いは単なる数字ではない。責任の重さも、危険度も、そして給与も大きく変わる。
第二種しか持たない職人が高圧設備の工事現場に来ても、「見てるだけ」になってしまう。これが年収差を生む最大の要因だ。
受験資格・難易度の違い
受験資格に関して言えば、第二種電気工事士は誰でも受験できる。年齢、学歴、実務経験——一切問わない。
第一種電気工事士も同様に受験資格の制限はないが、免状取得には実務経験が必要になる。これが大きな違いだ。
難易度を合格率で比較すると:
- 第二種電気工事士:筆記61.5%、技能73.4%
- 第一種電気工事士:筆記46.8%、技能64.1%
数字で見ると第二種の方が明らかに易しい。ただ、筆者が面談した受験者の肌感覚では、第一種の難易度は第二種の「2倍以上」と感じる人が多い。
特に計算問題の複雑さが段違いで、「第二種はパスしたけど、第一種の計算でつまずいた」という声をよく聞く。
試験内容・出題範囲の違い
試験内容の違いを整理すると:
第二種電気工事士:
- 筆記試験:50問(4択)、120分
- 技能試験:候補問題13問中1問が出題、40分
- 出題範囲:基礎理論、配電理論、電気機器、配線器具、工事の施工方法
第一種電気工事士:
- 筆記試験:50問(4択)、140分
- 技能試験:候補問題10問中1問が出題、60分
- 出題範囲:第二種の範囲+高圧電気工事、電気設備の検査
第一種は第二種の「上位互換」ではない。全く別物と考えた方がいい。高圧設備特有の知識——保護継電器、断路器、避雷器などは、第二種では全く触れない分野だ。
技能試験も、第一種は「高圧受電設備工事」という、より複雑な配線作業が求められる。
免状取得条件の違い
ここが多くの人が見落とすポイント。試験に合格しても、即座に免状がもらえるわけではない。
第二種電気工事士:
- 筆記・技能試験に合格すれば即座に免状申請可能
- 実務経験は不要
第一種電気工事士:
- 筆記・技能試験合格後、実務経験が必要
- 必要な実務経験:大学・高専卒なら3年、高校卒なら5年、それ以外は5年
- 実務経験の内容:電気工事の施工・監督業務
つまり、第一種は「合格証明書」を持っていても、実務経験を積むまでは第一種電気工事士として名乗れない。この期間中は第二種の範囲内でしか作業できない。
これが、「第一種を取っても意味がない」と言われる理由の一つだ。ただし、転職市場では合格証明書でも評価される場合が多い。
年収・待遇面の違い
最も気になる年収の違い。施工管理ちゃんねるの転職データ(2024年、N=1,247)によると:

第二種電気工事士:
- 平均年収:420万円
- レンジ:350万円~550万円
- 資格手当:月額5,000円~15,000円
第一種電気工事士:
- 平均年収:550万円
- レンジ:450万円~750万円
- 資格手当:月額15,000円~30,000円
年収差は約130万円。資格手当だけでも年間12万円~18万円の差が出る計算だ。
ただし、これは「免状を持っている場合」の数字。第一種の合格証明書のみなら、年収は第二種より若干高い程度(450万円前後)が現実だ。
率直に言うと、第一種の免状を取得できれば年収600万円は狙える。しかし、そこまでの道のりが長いのも事実。
作業可能な電気設備の違い【具体的な工事例付き】
資格の違いは分かった。では実際の現場で、何ができて何ができないのか?これを理解しないと、資格選びを間違える。
第二種電気工事士の作業範囲(600V以下の低圧設備)
第二種電気工事士が作業できるのは、一般用電気工作物と500kW未満の自家用電気工作物の低圧部分のみ。
具体的な工事例:
- 住宅関連:屋内配線工事、コンセント・スイッチ取付、分電盤工事、エアコン電源工事
- 店舗・小規模施設:照明設備工事、動力設備(小型モーター)、看板・広告灯設置
- 小規模工場:機械設備の電源工事(受電容量50kW未満)
現場での実感を言うと、第二種の仕事は「身近な電気工事」が中心だ。住宅の新築・リフォーム、小さな店舗の開店時など、日常生活に密着した工事が多い。
危険度は比較的低く、万が一のミスでも大事故にはなりにくい。初心者には取り組みやすい分野と言える。
ただし、作業範囲が限られているため、大きな現場では「補助作業」に回ることが多い。これが年収の頭打ちにつながる要因でもある。
第一種電気工事士の作業範囲(7000V未満の高圧設備)
第一種電気工事士は、第二種の範囲に加えて最大電力500kW以上の自家用電気工作物の工事も可能。
具体的な工事例:
- 高圧受電設備:キュービクル(高圧受電設備)の設置・配線工事
- 大型施設:病院、学校、商業ビル、工場の電気設備工事全般
- 産業設備:大型機械の電源工事、生産ライン設備
- インフラ設備:変電所の一部工事、送配電線工事(特別高圧は除く)
第一種の現場は、責任も報酬も桁違いだ。筆者がプラント現場で見てきた第一種電気工事士は、月収50万円以上も珍しくなかった。
一方で、高圧電気は人命に関わる。ちょっとしたミスが感電事故、最悪の場合は死亡事故につながる。精神的な負担も相当なものだ。
「第一種を持ってるから何でもできる」と思ったら大間違い。現場では慎重さと高い技術力が求められる。
両者で共通してできる工事・できない工事
意外と知られていないが、両資格に共通する制約もある。
共通してできる工事:
- 一般住宅の屋内配線工事
- コンセント、スイッチ、照明器具の取付・交換
- 分電盤の取付・配線(低圧部分)
- 小規模な動力設備工事
共通してできない工事:
- 特別高圧工事(7000V以上):電力会社や特殊な資格が必要
- ネオン工事:ネオンサイン工事士の資格が必要
- 非常用予備発電装置工事:内燃機関発電設備整備士の資格が必要
つまり、第一種を持っていても「電気の全て」ができるわけではない。専門分野によってはさらに特殊な資格が必要になる。
これを知らずに転職活動をして、「思っていた仕事と違った」となるケースも少なくない。
受験・取得プロセスの違い【未経験者向け解説】
資格取得までの道のりも、両者で大きく異なる。特に未経験者にとって、このプロセスの違いは重要だ。
第二種電気工事士:筆記→技能の2段階試験
第二種電気工事士の取得プロセスはシンプル。筆記試験をパスすれば技能試験、両方合格すれば即座に免状申請可能だ。
スケジュール(年2回実施):
- 上期:筆記試験5月、技能試験7月
- 下期:筆記試験10月、技能試験12月
- 免状申請:技能試験合格後すぐに可能
勉強時間の目安:
- 電気未経験者:150~200時間
- 電気系学科卒:100~150時間
- 現場経験者:50~100時間
筆者が転職相談を受けた未経験者の多くは、3~6ヶ月の準備期間で合格している。「働きながらでも取れる資格」として人気が高いのも頷ける。
技能試験の練習が鍵を握る。候補問題13問を全て作れるようになれば、ほぼ確実に合格できる。
第一種電気工事士:筆記→技能→実務経験→免状交付
第一種は取得プロセスが複雑。試験合格後も実務経験を積まなければ免状を取得できない。
スケジュール(年1回のみ):
- 筆記試験:10月
- 技能試験:12月
- 実務経験:学歴により3~5年
- 免状申請:実務経験証明後
つまり、最短でも試験合格から3年後にようやく「第一種電気工事士」になれる。この長期戦が第一種取得のハードルを上げている。
実務経験の認定条件:
- 電気工事の施工に従事
- 電気工事の監督に従事
- 電気工事の設計・積算に従事(一部)
注意すべきは、「電気関係の仕事」であっても、実務経験として認められない業務もあること。事前に確認しないと、せっかく働いても「実務経験にならなかった」という悲劇が起こる。
どちらから取得すべきか【キャリア別推奨ルート】
「結局、どっちから取ればいいんだ?」——転職面談で最も多い質問がこれだ。
第二種から取得すべき人:
- 電気未経験者:まずは基礎知識を身につける
- すぐに転職したい人:半年で資格取得→転職が可能
- 住宅・店舗系の仕事を希望:第二種で十分な現場が多い
- 副業・独立を考えている人:小規模工事から始められる
第一種から狙うべき人:
- 電気系学科卒・現場経験あり:基礎知識があるなら一気に上を狙う
- 大手企業・高年収を目指す人:第一種の方が転職で有利
- 長期的なキャリア構築を重視:5年後の年収差を考慮
- 施工管理職を目指す人:第一種は管理職への道筋が明確
個人的な推奨ルートは、未経験者は第二種→実務経験→第一種の段階的取得だ。
理由は単純——第二種で基礎を固めてから第一種に挑む方が、確実性が高いから。第一種の勉強で挫折して、結果的に資格ゼロになるリスクを避けられる。
電験3種・電験2種との違い【電気系資格の位置づけ】
電気工事士と混同されがちなのが「電験(電気主任技術者)」だ。同じ電気系資格でも、役割は全く違う。
▶ あわせて読みたい:電気工事士と施工管理の違いを徹底解説!仕事内容・資格・キャリアパスを比較
電気工事士:「工事」の資格
電気工事士は「手を動かして工事をする」ための資格。現場での施工・取付作業がメインだ。
具体的な業務:
- 配線工事の実施
- 電気機器の取付・交換
- 配電盤・制御盤の組立
- 電気設備の施工管理
言ってしまえば「職人」の資格。自分の手で配線を這わせ、機器を取り付け、設備を作り上げる。
現場では作業着を着て、工具を使い、時には高所で作業することもある。体力的な負担はそれなりにある。
ただし、「モノを作る」実感がある仕事だ。完成した設備に電気が通った時の達成感は、他では味わえない。
電験:「保安・管理」の資格
電験(電気主任技術者)は「電気設備の保安・管理」をする資格。既にある設備を安全に運用・管理するのが仕事だ。
具体的な業務:
- 電気設備の日常点検・定期点検
- 電気設備の保守・修理計画策定
- 事故時の原因調査・対策
- 官庁への報告書作成
分かりやすく言えば「管理者」の資格。デスクワークが多く、現場に出ても点検・確認が中心。実際に配線工事をすることは少ない。
年収は電験の方が高い傾向にある(電験3種で平均年収500~600万円)が、求人数は電気工事士の方が圧倒的に多い。
ダブルライセンスのメリット・キャリア戦略
電気工事士と電験の両方を持つ「ダブルライセンス」は、電気業界では最強の組み合わせだ。
ダブルライセンスのメリット:
- 年収アップ:両資格合わせて年収700万円超も可能
- 転職の幅拡大:工事会社・管理会社・メーカー全てに対応
- 独立時の強み:設計から施工、保守まで一貫対応可能
- キャリアの安定性:一つの分野が不況でも他でカバー可能
おすすめの取得ルート:
- 第二種電気工事士で基礎固め
- 電験3種で理論を深める
- 第一種電気工事士で応用力を付ける
- 余力があれば電験2種で完成形
このルートで行けば、5年後には電気業界のエキスパートとして高い評価を受けられる。
ただし、すべて取得するには相当な覚悟と時間が必要。「あれもこれも」と手を広げすぎて、結局中途半端になるケースも少なくない。
まずは1つの資格を確実に取得してから、次のステップを考える方が現実的だ。
年収・求人市場での評価の違い【2025年最新データ】
転職を考えているなら、年収と求人市場での評価は無視できない要素だ。リアルなデータを基に解説しよう。
▶ 電気工事士として静岡で働こう!大企業の求人や年収を見てみよう!も参考になります
第二種電気工事士の年収相場・求人傾向
第二種電気工事士の年収相場は350万円~550万円。地域と経験年数で大きく差が出る。
施工管理ちゃんねる調べ(2024年転職データ、N=847):
- 首都圏:420万円~580万円
- 関西圏:380万円~520万円
- 地方都市:350万円~480万円
- 未経験:300万円~380万円
求人傾向を見ると:
- 求人数:月間約15,000件(Indeed調べ)
- 主な就職先:住宅系工事会社(40%)、設備工事会社(30%)、電気工事会社(20%)
- 雇用形態:正社員80%、契約社員15%、派遣5%
第二種の求人は「数は多いが単価が低い」のが特徴だ。住宅関連の小規模工事が多く、1件あたりの工事金額が限られるため、年収もそれなりになってしまう。
ただし、安定性は高い。住宅の新築・リフォーム需要は底堅く、景気に左右されにくい。「食いっぱぐれのない資格」と言われる理由だ。
実際、転職面談で会った第二種保有者の多くは「年収は高くないけど、安定してる」と話す。家族を養うには物足りないかもしれないが、副業と組み合わせれば十分生活できるレベルだ。
第一種電気工事士の年収相場・求人傾向
第一種電気工事士(免状保有者)の年収相場は450万円~750万円。第二種との差は歴然だ。
施工管理ちゃんねる調べ(2024年転職データ、N=312):
- 首都圏:550万円~800万円
- 関西圏:500万円~720万円
- 地方都市:450万円~650万円
- プラント・大型案件:600万円~1,000万円
求人傾向:
- 求人数:月間約4,000件(第二種の約1/4)
- 主な就職先:大手電気工事会社(35%)、プラント会社(25%)、設備管理会社(20%)
- 雇用形態:正社員95%、契約社員3%、派遣2%
第一種の特徴は「求人数は少ないが高単価」。大型案件・責任ある仕事が多く、それに見合った報酬が期待できる。
特にプラント関係の求人では、年収800万円~1,000万円の案件も珍しくない。ただし、地方への転勤や出張が多いのも事実だ。
転職市場では第一種保有者は「引く手あまた」。複数社から内定をもらうケースも多く、条件交渉もしやすい。
資格手当・昇進への影響度比較
資格手当の相場も、両者で大きな差がある。
資格手当(月額):
- 第二種電気工事士:5,000円~15,000円
- 第一種電気工事士:15,000円~30,000円
- 第一種(合格証明書のみ):8,000円~20,000円
年間で考えると、第一種は第二種より12万円~18万円多くもらえる計算だ。
昇進への影響も無視できない:
- 第二種:主任クラスまでが現実的
- 第一種:管理職(係長・課長)への道筋が明確
大手電気工事会社では、「管理職になるには第一種が必須」という暗黙のルールがあることも多い。
現場監督から施工管理職、さらに工事部長クラスを目指すなら、第一種は避けて通れない資格と言える。
正直な話、「資格手当だけで年収100万円アップ」は大げさだが、キャリア全体で見れば第一種の価値は十分にある。
現場作業環境・働き方の違い【施工管理者視点】
資格の違いは、日々の働き方にも大きく影響する。15年間複数の現場を見てきた立場から、リアルな作業環境を伝えよう。
第二種電気工事士の主な現場(住宅・店舗・小規模工場)
第二種電気工事士の現場は「生活に身近な場所」が中心。住宅、店舗、小さな工場での作業が多い。
典型的な現場例:
- 戸建住宅:新築の配線工事、リフォーム時の増設工事
- マンション:共用部分の照明工事、宅内の電気工事
- 店舗・オフィス:テナント工事、照明・コンセント増設
- 小規模工場:機械設備の電源工事(50kW未満)
働き方の特徴:
- 勤務時間:8時~17時が基本(残業は比較的少なめ)
- 現場環境:屋内作業が多く、天候に左右されにくい
- 移動距離:地元中心、日帰り作業が基本
- チーム構成:2~5人の小チーム
第二種の現場で実際に働いた経験者に聞くと、「アットホームな雰囲気」と表現する人が多い。お客さんとの距離も近く、完成した時に直接感謝される機会も多い。
ストレスは比較的少ないが、その分「やりがい」や「達成感」も控えめ。毎日同じような作業の繰り返しになりがちで、「成長を実感しにくい」という声も聞く。
第一種電気工事士の主な現場(工場・ビル・大型施設)
第一種電気工事士の現場は「大規模・高責任」。工場、商業ビル、病院、学校など社会インフラに関わる設備が対象だ。
典型的な現場例:
- 大型工場:生産ラインの電気設備、高圧受電設備
- 商業ビル:テナント全体の電気設備、非常用発電設備
- 病院・学校:重要施設の電気設備、バックアップ電源
- プラント:化学工場、発電所の電気設備(特殊環境)
働き方の特徴:
- 勤務時間:7時~18時、夜間作業もあり(停電作業のため)
- 現場環境:屋外作業も多く、季節や天候の影響を受ける
- 移動距離:広域移動、出張・宿泊を伴う案件もあり
- チーム構成:10~30人の大規模チーム
第一種の現場は責任が重い分、緊張感も段違いだ。筆者がプラント現場で見た第一種電気工事士は、常に「一つのミスが大事故につながる」という意識で作業していた。
その代わり、やりがいは大きい。「社会を支える設備を作っている」という実感があり、完成時の達成感も格別だ。
ただし、心理的負担は相当なもの。「夜中に急な呼び出しがある」「責任の重さでなかなか眠れない」という話もよく聞く。
危険度・体力的負担・責任の重さの違い
これは正直に言わなければならない部分——第一種の現場は、第二種より明らかに危険だ。
危険度の比較:
- 第二種:低圧による感電(痛いが命に関わることは少ない)
- 第一種:高圧による感電(重篤な火傷、最悪死亡事故)
実際の事故データを見ると、電気工事での死亡事故の8割以上が高圧設備での作業中に発生している。第一種の現場では、「一瞬の油断が命取り」になる。
体力的負担:
- 第二種:室内作業中心、そこまでハードではない
- 第一種:重量物の運搬、高所作業、長時間の立ち作業
第一種の現場では、数十キロのケーブルを運んだり、10メートルを超える高所で作業することも珍しくない。40代を過ぎると体力的にきつくなる人も多い。
責任の重さ:
- 第二種:個人の生活に影響(停電で家電が使えない等)
- 第一種:社会全体に影響(病院の停電、工場の生産停止等)
病院で停電が起きれば、人命に関わる。工場が止まれば、数千万円の損失になることもある。そのプレッシャーは、年収に見合った重さがある。
転職を考えている人には、この現実を理解した上で選択してもらいたい。高年収には、それなりの理由がある。
キャリアパス・将来性の違い【10年後を見据えた選択】
資格選びで最も重要なのは「10年後、20年後にどうなりたいか」だ。両資格の将来性を冷静に分析してみよう。
第二種電気工事士からのキャリアアップルート
第二種電気工事士は「入り口」の資格。ここから始まるキャリアパスは実は多様だ。
主なキャリアアップルート:
- 第一種電気工事士への昇格
- 実務経験を積んでから第一種を取得
- 年収400万円→600万円へのアップが期待できる
- 期間:3~5年
- 電験3種とのダブルライセンス
- 「工事+保安」のスペシャリストに
- 設備管理会社への転職で年収500万円~
- 期間:2~4年
- 施工管理技士への転身
- 現場経験を活かして管理職へ
- 電気工事施工管理技士の取得
- 年収500万円~800万円の管理職に
- 独立・起業
- 小規模電気工事の個人事業主
- 年収は実力次第(300万円~800万円)
- 自由度は高いが不安定性もあり
第二種の良いところは「選択肢の多さ」だ。どの道を選んでも、基礎知識として活かせる。
ただし、第二種だけで「高年収」を目指すのは現実的ではない。あくまで「ステップアップの土台」と考えるべきだ。
第一種電気工事士のキャリア選択肢
第一種電気工事士は「専門職」として確立されたキャリアパス。選択肢は狭いが、どれも高年収が期待できる。
主なキャリア選択肢:
- 大手電気工事会社の管理職
- 現場監督→係長→課長→部長
- 年収600万円→1,000万円超
- 安定性抜群、福利厚生も充実
- プラント・インフラ系のスペシャリスト
- 発電所、化学プラント、大型施設
- 年収700万円~1,200万円
- 高度な技術力が求められる
- 設計・積算業務への転身
- 現場経験を活かした設計職
- 年収550万円~800万円
- デスクワーク中心、体力的負担軽
- 独立・コンサルタント
- 高圧設備の専門コンサルタント
- 年収は実力次第(500万円~1,500万円)
- 高い技術力と営業力が必要
第一種のキャリアは「専門性の深掘り」が基本。一つの分野を極めることで、高い価値を提供できる。
問題は「つぶしが利かない」こと。高圧電気工事という狭い分野に特化するため、業界の変化に弱い面もある。
電気業界のトレンド(再エネ・EV・IoT)との関連性
電気業界は今、大きな変革期を迎えている。再生可能エネルギー、EV普及、IoT化——これらのトレンドと両資格の関連性を見てみよう。
再生可能エネルギー(太陽光・風力):
- 第二種:住宅用太陽光パネル設置(10kW未満)
- 第一種:産業用太陽光発電所(高圧連系)、風力発電設備
再エネ分野では第一種の需要が急拡大している。メガソーラー建設ラッシュで、年収800万円超の求人も増加中だ。
EV・充電インフラ:
- 第二種:家庭用EV充電器設置(200V)
- 第一種:急速充電ステーション(高圧受電設備)
EV普及に伴い、充電インフラ整備が加速。特に急速充電ステーションは第一種の独壇場で、今後10年間の成長分野だ。
IoT・スマート化:
- 第二種:住宅のスマート化(スマートメーター等)
- 第一種:工場・ビルのスマート化(エネルギー管理システム)
IoT分野は電気工事士にとって「新しいスキル」が求められる分野。従来の配線工事に加えて、通信・制御の知識も必要になる。
10年後の予測:
- 第二種:需要は安定するが、単価は横ばい
- 第一種:新分野の拡大で需要・単価ともに上昇
率直に言うと、将来性では第一種の方が明らかに有利だ。社会のインフラがより複雑化・大規模化する中で、高圧電気工事の専門家へのニーズは高まり続ける。
ただし、第二種も「なくなることはない」資格。住宅・店舗の電気工事は、どんなに技術が進歩しても人の手が必要だ。
要は、どちらを選んでも「食いっぱぐれることはない」が、「大きく稼ぎたいなら第一種」というのが現実だ。
よくある質問
「電気工事士2種」と「電気工事士3種」は存在するか?
電気工事士に「3種」は存在しない。正式名称は「第一種電気工事士」「第二種電気工事士」のみだ。
ただし、「電気主任技術者(電験)」には1種・2種・3種がある。混同しやすいが、完全に別の資格だ。
- 電気工事士:工事をする資格(1種・2種)
- 電気主任技術者:設備を管理する資格(1種・2種・3種)
「電気工事士3種を取りたい」という相談をたまに受けるが、そもそも存在しないので注意してほしい。
「電気工事士2級」という資格はあるか?
「電気工事士2級」という資格も存在しない。正しくは「第二種電気工事士」だ。
他の資格(建築士、施工管理技士等)に「1級」「2級」があるため混同されがちだが、電気工事士は「第一種」「第二種」が正式名称。
履歴書に書く際は:
- 正しい書き方:「第二種電気工事士免状」
- 間違った書き方:「電気工事士2級」「2種電気工事士」
細かいようだが、転職活動では正式名称で記載することが重要だ。
第一種を飛ばして第二種だけ取得は可能か?
可能だ。第二種電気工事士は第一種の下位資格ではなく、独立した資格として扱われる。
実際、第二種だけ持って働いている人は非常に多い。第一種は「必須」ではなく「上位互換」の位置づけだ。
ただし、キャリアアップを考えるなら:
- 第二種で基礎を固める→実務経験を積む→第一種にチャレンジ
このルートが最も確実で現実的だ。
両方の資格を同時に受験できるか?
技術的には可能だが、現実的ではない。
試験日程:
- 第二種:年2回(5月・10月に筆記、7月・12月に技能)
- 第一種:年1回(10月に筆記、12月に技能)
10月の筆記試験と12月の技能試験が重なる可能性があるため、同年での両方合格は困難だ。
それより重要なのは勉強量。第一種の勉強だけで300~500時間必要なのに、同時進行は現実的ではない。
「急がば回れ」——まずは第二種を確実に取得してから、第一種にチャレンジすることを強く推奨する。
▶ 電気工事士の転職・資格の総合ガイドはこちら
転職成功者データ(N=1,247)
| 資格 | 平均年収 | 転職成功率 | 平均転職期間 |
|---|---|---|---|
| 第二種電気工事士 | 420万円 | 78% | 3.2ヶ月 |
| 第一種電気工事士 | 550万円 | 89% | 2.1ヶ月 |
| 資格なし | 350万円 | 45% | 5.8ヶ月 |
