電線管曲げ方の実践マニュアル – 90度・S字曲げの寸法計算と失敗しないコツ
電線管の曲げ加工は、電気工事の基本技術でありながら、現場で最も悩ましい作業の一つだ。「寸法通りに曲がらない」「管が潰れてしまう」「角度がずれて配管が合わない」——こんな経験をした技術者は多いはずだ。
筆者が施工管理をしていた頃、新人の電気工事士が電線管の曲げ加工でつまずく光景を何度も目にした。特に高層ビルの電気室や地下機械室では、限られたスペースに複雑な配管ルートを通す必要があり、正確な曲げ加工技術が工期短縮の鍵を握る。
この記事では、鋼製電線管から合成樹脂管まで、電線管の種類別曲げ特性と具体的な加工手順を解説する。現場で即戦力となる寸法計算方法、効率的な作業手順、そして筆者が15年の現場経験で蓄積した失敗回避のコツまでお伝えしよう。
この記事のポイント
- 電線管の種類別曲げ特性と最適工具の選び方
- 90度・S字曲げの寸法計算公式と実践手順
- 現場効率を2倍にする時短テクニックと失敗回避策
- E31厚鋼電線管の専用加工方法
電線管の曲げ方の基本原理と必要な工具
電線管の曲げ加工は材質と管径によって手法が大きく異なる。まず押さえておくべきは、電線管の種類別特性と、それぞれに適した工具の選択だ。間違った工具を使うと管の変形や亀裂につながり、やり直しで工期遅延を招く。
電線管を曲げる際に必要な工具一覧
現場での電線管曲げ加工に必要な基本工具は以下の通りだ。筆者の経験上、工具の品質が作業効率と仕上がり精度に直結する。
- パイプベンダー: E19・E25・E31各サイズ専用品が必要。兼用品は精度が劣る
- スケール(メジャー): 5m以上の金属製推奨。樹脂製は温度で伸縮する
- マーキングペン: 金属面に書ける油性マーカー
- 角度計(プロトラクター): 90度以外の角度確認用
- パイプレンチ: 曲げ後の微調整用
- デバリングツール: 切断面の面取り用
特にパイプベンダーは管径ごとの専用品を使うことが重要だ。「E25用でE19管を曲げればいい」という現場もあるが、これは管の変形リスクを高める。正確な寸法と美しい仕上がりを求めるなら、専用工具への投資は必須である。
鋼製電線管(E種・薄鋼電線管)の曲げ特性
E19・E25・E31の鋼製電線管は、それぞれ異なる曲げ特性を持つ。この違いを理解せずに同じ手法で加工すると、管の潰れや亀裂が発生する。
E19管(19mm径)の特性
最小曲げ半径は管外径の6倍(約120mm)が基本だ。薄肉のため、急激な曲げは管の扁平化を招く。パイプベンダーのハンドル操作は「ゆっくり・段階的に」が鉄則。一度に90度曲げようとせず、30度ずつ3回に分けて曲げると管の変形を防げる。
E25管(25mm径)の特性
最小曲げ半径は約150mm。E19より肉厚があるため曲げ力が必要だが、その分変形にも強い。ただし、管内部の電線引き込みを考慮すると、曲げ半径は180mm以上が実用的だろう。
共通の注意点
鋼製電線管は曲げ加工時に内径が縮小する。特に90度曲げでは内径が10-15%減少するため、太い電線やケーブル多条引きの場合は事前の検討が必要だ。筆者が大型商業施設の電気工事を担当した際、この点を見落として電線が通らず、配管をやり直した苦い経験がある。
合成樹脂製電線管の曲げ特性と注意点
PF管・CD管などの合成樹脂製電線管は、鋼製管とは全く異なる曲げ特性を持つ。材質の柔軟性を活かした加工が可能だが、温度による特性変化に注意が必要だ。
PF管の手曲げ特性
PF管は手曲げが可能で、最小曲げ半径は管外径の3-4倍程度まで対応できる。ただし、冬季の屋外作業では樹脂が硬化し、亀裂が入りやすくなる。気温5度以下の環境では、曲げ前に管を温めるか、より大きな曲げ半径を採用すべきだ。
CD管(コルゲート管)の特性
CD管は波状の形状により柔軟性が高いが、曲げ部分での電線引き込み抵抗が大きくなる。S字曲げや複数箇所の曲げが必要な場合、電線引き込み時の抵抗を考慮した配管ルート設計が重要だ。
合成樹脂管の最大の利点は、現場での修正が容易な点だろう。鋼製管のように工具なしでは曲げ直せないという制約がないため、配管ルートの微調整に対応しやすい。
電線管の90度曲げ(基本の直角曲げ)手順と寸法計算
90度曲げは電線管加工の基本中の基本だが、正確な寸法計算と手順を理解している技術者は意外と少ない。現場でよく見かける「勘と経験頼み」の加工は、材料の無駄と工期遅延を生む。
筆者がプラント電気工事を担当していた頃、先輩職人から教わった寸法計算の公式は今でも現場で使っている。この公式を知っているかどうかで、作業効率は格段に変わる。
90度曲げの寸法計算方法
90度曲げの寸法計算には「取り代」と「送り代」という概念を理解する必要がある。
基本公式
取り代(T) = 曲げ半径(R) × 0.57
送り代(S) = 希望寸法 – 取り代(T)
例:E25管(曲げ半径150mm)で300mmの立ち上がりを作る場合
T = 150 × 0.57 = 85.5mm
S = 300 – 85.5 = 214.5mm
つまり、管端から214.5mmの位置にマーキングして曲げれば、300mmの立ち上がりが完成する。
実践での注意点
この公式は理論値のため、実際の現場では工具の個体差や作業者のクセにより±3-5mmの誤差が生じる。そのため、最初の1本は試し曲げを行い、実測値で補正係数を求めることが重要だ。
筆者の経験では、新品のパイプベンダーは理論値より2-3mm短く仕上がる傾向がある。使い込んだ工具では逆に長めに仕上がることが多い。この特性を把握して補正値を設定すれば、寸法精度±1mm以内の加工が可能になる。
パイプベンダーを使った90度曲げの実践手順
正しい手順で作業すれば、管の変形やマーキングずれを防げる。以下は筆者が現場で実践している手順だ。
- 材料準備:電線管の切断面をデバリング。バリが残っていると正確な寸法が測れない
- 寸法計算:上記公式で送り代を算出
- マーキング:管端から送り代の位置に明確な線を引く。この線がベンダーの基準点になる
- 管の固定:パイプベンダーに管をセット。マーキング線がベンダーの基準位置に正確に合わせる
- 曲げ加工:ハンドルを一定速度でゆっくり操作。急激な動作は管の変形を招く
- 角度確認:90度近くで一旦停止し、角度計で確認。微調整して正確に90度に仕上げる
- 寸法確認:曲げ加工後、希望寸法になっているか実測確認
特に重要なのは5番目の曲げ速度だ。「早く終わらせたい」という気持ちでハンドルを急激に動かすと、管が波打ったり、部分的に潰れたりする。良い仕上がりには「忍耐」が欠かせない。
曲げ精度を上げるための角度調整テクニック
現場では「90度ピッタリ」ではなく、89度や91度といった微調整が必要な場面が多い。これは躯体の寸法誤差や他の配管との取り合いによるものだ。
角度の微調整方法
- 角度不足(90度未満):パイプベンダーで再度少しずつ追加曲げ
- 角度過多(90度超過):パイプレンチで管の直線部分を持ち、慎重に戻す。ただし2-3度が限界
- 大幅な角度修正:作り直しが確実。無理な修正は管の強度低下を招く
実際の配管工事では、90度の「直角」よりも「現場に合った角度」が重要だ。筆者が担当した某データセンターの工事では、躯体の施工誤差により配管の立ち上がり角度を88度にする必要があった。現場合わせの技術こそ、熟練工の真価が問われる部分だろう。
電線管のS字曲げ(オフセット曲げ)の実践的加工方法
S字曲げ(オフセット曲げ)は、障害物を避けたり高さを調整したりする際の必須技術だ。90度曲げよりも高度な計算と技術が要求されるため、多くの現場で「できる人」と「できない人」がはっきり分かれる。
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筆者が大型商業施設の電気工事を担当していた際、天井内の梁や配管との取り合いでS字曲げが頻繁に必要となった。最初は時間がかかっていたが、計算方法と手順を覚えてからは作業効率が格段に向上した。
S字曲げが必要になる現場状況の判断
S字曲げを適用する場面を正しく判断できれば、無駄な加工を避けられる。現場でよく遭遇するケースを整理してみよう。
典型的なS字曲げが必要な状況
- 梁下がり回避:天井内の構造梁を避けるため50-200mm程度のオフセットが必要
- 他設備との干渉回避:空調ダクト、給排水管との取り合いでルート変更
- 高さレベル調整:分電盤や制御盤の取り付け高さに合わせた微調整
- 施工誤差の吸収:躯体工事の寸法誤差を電気配管側で調整
判断のポイントは「オフセット量」と「配管長さ」のバランスだ。オフセット量が少ない(50mm未満)場合、S字曲げよりも管を斜めに通した方が施工効率がよい場合もある。
筆者の経験では、オフセット量100mm以上、配管長5m以上の区間でS字曲げの効果が最も発揮される。短い配管区間でのS字曲げは、かえって電線の引き込み抵抗を増加させる恐れがある。
オフセット寸法の計算方法と角度選択
S字曲げの寸法計算は三角関数を使うが、現場では簡易計算表を使う方が実用的だ。
基本的な計算式
オフセット量(H) = L × sin(θ)
配管長(L) = H ÷ sin(θ)
θ = 曲げ角度(一般的には22.5度、30度、45度を使用)
現場でよく使う角度と特性
- 22.5度曲げ:オフセット量 = 配管長 × 0.38。緩やかで電線引き込みが楽
- 30度曲げ:オフセット量 = 配管長 × 0.5。計算が簡単で使用頻度高
- 45度曲げ:オフセット量 = 配管長 × 0.71。急角度で配管長を短縮可能
例:100mmのオフセットが必要な場合
30度曲げ選択時:必要な配管長 = 100 ÷ 0.5 = 200mm
45度曲げ選択時:必要な配管長 = 100 ÷ 0.71 = 141mm
角度選択の基準は「電線の引き込みやすさ」と「材料の節約」のバランスだ。太いケーブルや多条引きの場合は緩い角度、細い電線で材料費を抑えたい場合は急角度を選ぶ。
パイプベンダーでのS字曲げ実践手順
S字曲げは2回の曲げ加工で完成するため、1回目と2回目の位置関係を正確に管理することが重要だ。
- 全体設計:オフセット量と配管長から角度を決定
- 1回目のマーキング:管端からの寸法を計算してマーク
- 1回目の曲げ:パイプベンダーで所定角度に曲げ加工
- 2回目のマーキング:1回目の曲げから配管長分の位置にマーク
- 管の反転:パイプベンダーに逆向きにセット(重要!)
- 2回目の曲げ:1回目と逆方向に同じ角度で曲げ
- 寸法・角度確認:完成品の寸法と角度を実測
最も注意すべきは5番目の「管の反転」だ。同じ向きで2回曲げると「C字カーブ」になってしまう。必ず逆向きにセットして、S字形状を作る。
筆者が新人の頃、この点を見落として何本も材料を無駄にした苦い記憶がある。現在は作業前に「S字の形」を必ず頭の中でイメージしてから作業に入るようにしている。
曲げ後の寸法確認と修正方法
S字曲げは理論計算と実際の仕上がりに誤差が生じやすい。完成後の確認と修正技術が品質を左右する。
確認すべき寸法
- オフセット量(高さ差)
- 全体配管長
- 両端の管が平行になっているか
- 各曲げ角度が設計値通りか
修正方法
- オフセット不足:両方の曲げ角度を少しずつ増加
- オフセット過多:パイプレンチで慎重に角度を戻す
- 平行度のずれ:片方の角度のみ微調整
修正は「少しずつ、確認しながら」が原則だ。一度に大きく修正しようとすると、管の変形や新たな寸法誤差を招く。筆者の現場では「1回の修正は1度以内」をルールにしている。
E31電線管(厚鋼電線管)の曲げ方と専用工具の使い方
E31電線管(厚鋼電線管)は外径31.8mm、肉厚2.3mmの重厚な管材で、大電流回路や重要設備の配管に使われる。E19・E25と比べて曲げ加工の難易度が格段に高く、専用の工具と技術が必要だ。
筆者が発電所の電気工事に従事していた際、E31管の曲げ加工に苦労した経験がある。一般的なパイプベンダーでは力不足で、専用工具の導入が不可欠だった。
E31管の材質特性と曲げ時の注意点
E31管は厚肉のため高い機械的強度を持つが、その分曲げ加工には大きな力が必要になる。材質特性を理解せずに加工すると、工具の破損や作業者の怪我につながる危険がある。
E31管の物理特性
- 外径:31.8mm(約1-1/4インチ)
- 肉厚:2.3mm(E25の約1.8倍)
- 最小曲げ半径:200mm(管外径の約6.3倍)
- 曲げ荷重:E25の約2.5倍
曲げ加工時の注意点
E31管の曲げには約800-1200Nの力が必要で、人力のみでは限界がある。無理に曲げようとすると以下の問題が発生する:
- 管の断面が楕円形に変形
- 曲げ内側に皺(しわ)が発生
- 曲げ外側に亀裂が入る
- 工具(パイプベンダー)の変形・破損
筆者が目撃した事例では、E25用のベンダーでE31管を無理に曲げようとしてハンドル部分が折れ、作業者が転倒する事故が発生した。専用工具の使用は「推奨」ではなく「必須」と考えるべきだ。
E31管専用ベンダーの選定と使用方法
E31管の曲げ加工には専用設計のベンダーが必要だ。一般的なパイプベンダーとの違いを理解して適切な工具を選定しよう。
専用ベンダーの特徴
- 大型ハンドル:1.2-1.5mの長いハンドルでテコの原理を活用
- 強化フレーム:高荷重に耐える鋼製フレーム構造
- 専用シュー:E31管にフィットする曲げシューとサポートローラー
- 角度目盛り:正確な角度設定のための目盛り付き
使用方法とコツ
- 作業台の固定:ベンダー本体をしっかりした作業台にクランプ固定
- 管の前処理:切断面のバリ取りと、曲げ部分の清拭
- 潤滑剤の塗布:管とシューの接触面に専用潤滑剤を薄く塗布
- 段階的な曲げ:一度に90度まで曲げず、30度×3回に分けて加工
- 力の方向:ハンドルは常に垂直方向に操作(斜めは工具に負担)
特に重要なのは「段階的な曲げ」だ。E31管は一度に大きく曲げると内部応力が集中し、後々の電線引き込み時に問題となる。時間はかかるが、品質確保のためには必要なプロセスである。
筆者の経験では、E31管1本の90度曲げに約10-15分を要する。E25管の3-5分と比べて時間がかかるが、急いで作業して失敗すると材料費と工期の両方に影響するため、丁寧な作業を心がけている。
電線管曲げ加工でよくある失敗事例と対策
電線管の曲げ加工は技術と経験が必要な作業だが、よく起こる失敗パターンは決まっている。筆者が15年間の現場経験で遭遇した代表的な失敗事例と、その対策を整理してお伝えしよう。
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「失敗は成功の母」と言うが、電線管の失敗は材料費と工期に直結する。事前に失敗パターンを知っておけば、多くのトラブルは回避できる。
管の潰れ・亀裂が発生する原因と防止方法
電線管の潰れや亀裂は、現場で最も多い失敗の一つだ。一度発生すると修復不可能で、材料の全面交換が必要になる。
潰れ・亀裂の主な原因
- 急激な曲げ作業:パイプベンダーのハンドル操作が速すぎる
- 曲げ半径不足:管径に対して曲げ半径が小さすぎる
- 工具の選択ミス:管径に合わないベンダーの使用
- 材料の劣化:長期保管による鋼材の脆化
- 低温環境:冬季屋外での作業における材料の硬化
防止対策
- 適切な曲げ速度:90度曲げで最低2-3分かける「ゆっくり操作」
- 曲げ半径の確保:管外径の6倍以上の半径を維持
- 段階的曲げ:大きな角度は30度ずつ3回に分けて実施
- 材料の温度管理:5度以下では屋内で材料を温めてから作業
- 工具の定期点検:ベンダーのシューやローラーの摩耗確認
筆者が担当した某工場の電気工事で、冬季に屋外保管していたE25管が曲げ加工時に次々と亀裂を起こした経験がある。気温-5度の環境で、通常通りの速度で曲げたところ、10本中7本が失敗。材料を屋内で一晩温めた後に作業したところ、問題なく加工できた。環境要因への配慮は意外に重要だ。
寸法ミスを防ぐための現場チェックポイント
寸法ミスは電線管工事で最もよくある失敗で、特にS字曲げで頻発する。一度間違えると全体の配管ルートに影響するため、確実な防止対策が必要だ。
寸法ミスの典型パターン
- 計算間違い:取り代・送り代の計算エラー
- 測定ミス:スケールの読み違い、測定基準点の間違い
- マーキングずれ:印付け位置の間違い
- 累積誤差:複数箇所の小さな誤差の積み重ね
防止対策とチェックポイント
- 計算の複数チェック:別の人による計算確認、または計算機による検算
- 測定の標準化:測定基準点を明確化(管端から、曲げ中心から等)
- マーキングの確認:印付け後、再度寸法を測り直し
- 試し曲げ:重要な配管は端材で寸法確認してから本加工
- 工程間チェック:曲げ加工後、設置前に必ず実測確認
筆者の現場では「測定3回、加工1回」をモットーにしている。測定に5分余計にかけても、やり直しの30分と材料費を考えれば安い投資だ。
特に有効なのは「試し曲げ」の習慣だ。重要な配管や複雑な形状の場合、端材で同じ寸法・角度の試し曲げを行い、寸法確認してから本番に臨む。この習慣により、寸法ミスは90%以上削減できる。
曲げ角度のズレを修正する実践テクニック
電線管の曲げ角度がずれた場合、完全なやり直しではなく部分修正で対応できるケースも多い。ただし、修正には限界があり、適切な判断が必要だ。
修正可能な角度ズレの目安
- 90度曲げ:±3度以内なら修正可能
- 45度曲げ:±2度以内なら修正可能
- S字曲げ:各曲げ点で±1度以内
修正テクニック
- 角度不足の修正
パイプベンダーで追加曲げ。1度ずつ慎重に調整
工具の基準点を正確に合わせることが重要 - 角度過多の修正
パイプレンチで管の直線部分を固定し、曲げ部分を逆方向に微調整
力を入れすぎると管が変形するため、慎重に操作 - 大幅なズレ(5度以上)
修正は困難。材料の強度低下リスクを考慮して交換を推奨
修正時の注意点
修正作業は材料に追加的な応力を与えるため、以下の点に注意が必要だ:
- 修正後の管は強度が低下している可能性
- 修正箇所は電線引き込み時の抵抗が増加
- 外観上は問題なくても、内部に見えない損傷がある場合
筆者の判断基準は「修正回数」だ。1回の修正なら問題ないが、2回以上の修正が必要な管は交換している。「もったいない」という気持ちもあるが、後々のトラブルを考えると賢明な判断だろう。
現場効率を上げる電線管曲げ加工のコツとタイムセーブ術
電線管の曲げ加工は丁寧さが重要だが、現場では効率も求められる。筆者が15年間の経験で蓄積した「品質を落とさず作業時間を短縮する」テクニックをお伝えしよう。
大型プロジェクトでは、1日に数十本の電線管加工が必要になることもある。効率的な作業手順を確立できれば、残業時間の短縮と収益性向上の両方を実現できる。
事前準備で作業時間を短縮する方法
現場での実作業時間は全体の60%程度で、残り40%は準備・段取りが占める。この準備時間を短縮できれば、大幅な効率向上が可能だ。
効率的な準備手順
- 図面の事前解析
施工図から必要な曲げ加工をリストアップ
同じ寸法・角度の加工をグループ化 - 材料の事前カット
1日分の電線管を事前に所定長さにカット
カット済み材料に番号を振って管理 - 工具の配置最適化
作業台にパイプベンダー、スケール、マーキングペンを常設
頻繁に使う角度計算表を作業台に貼付 - 寸法計算の事前実施
標準的な寸法の取り代・送り代を一覧表にまとめ
現場での計算時間を最小化
筆者が実践している準備のコツ
毎朝の作業開始前30分を「準備タイム」として確保している。この30分で一日の加工内容を整理し、材料と工具を準備することで、実作業時間を20-30%短縮できる。
特に有効なのは「寸法計算の事前実施」だ。E19・E25・E31の各管径について、よく使う寸法(100mm、150mm、200mm、300mm等)の取り代・送り代を事前計算してメモに残している。現場で都度計算する必要がなく、ミスも減る。
複数本の電線管を効率よく加工する手順
同じ寸法・角度の電線管を複数本加工する場合、「バッチ処理」の考え方で効率化できる。1本ずつ完成させるより、工程別に処理した方が早い。
バッチ処理の手順
- 全材料のカット・面取り
必要本数をまとめてカット
全ての管端をデバリング - 全材料のマーキング
同じ寸法の管に一括でマーキング
マーキング用の治具を作ると更に高速化 - パイプベンダーでの一括曲げ
ベンダーの設定を固定して連続加工
角度調整の時間を最小化 - 最後に一括検査
全ての加工品を並べて寸法・角度確認
不良品があれば即座に再加工
バッチ処理の効果
筆者の実測では、同一仕様の管10本を加工する場合:
- 1本ずつ完成:10分×10本=100分
- バッチ処理:準備20分+加工50分+検査10分=80分
約20%の時間短縮が可能で、加工精度も向上する。
ただし、バッチ処理にはリスクもある。設定ミスがあると全ての材料に同じ間違いが発生するため、最初の1本は必ず寸法確認してから残りを加工することが重要だ。
現場でのマーキングと寸法確認の時短テクニック
マーキングと寸法確認は地味な作業だが、積み重なると大きな時間となる。以下のテクニックで大幅な時短が可能だ。
マーキングの時短テクニック
- マーキング治具の活用
よく使う寸法(100mm、150mm等)の治具を自作
スケールでの測定が不要になり、精度も向上 - 両端同時マーキング
管の両端から同時に寸法を測り、中央で突き合わせ確認
長い管での測定誤差を防止 - マーキングペンの工夫
太字と細字の2種類を使い分け
基準線は太字、補助線は細字で視認性向上
寸法確認の時短テクニック
- 基準ゲージの活用
標準寸法の「合格・不合格」判定用ゲージを作成
数値測定ではなく「通る・通らない」の簡易判定 - 角度確認の簡素化
90度確認用のL字ゲージを常備
角度計を使わず、視覚的に角度確認 - 複数人でのチェック体制
1人が加工、1人が寸法確認の並行作業
全体としての処理能力向上
これらのテクニックにより、筆者の現場では1本あたりの加工時間を従来の70%まで短縮できている。ただし、時短を優先して品質を落としては本末転倒だ。「正確・迅速・安全」のバランスを常に意識している。
最も重要なのは「慣れ」だろう。新しいテクニックも最初は時間がかかるが、習慣化すれば自然と効率が上がる。現場の状況に合わせて、段階的に導入することをお勧めする。
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よくある質問
Q. 電線管を曲げる際の最適な曲げ半径は?
A. 電線管の最適な曲げ半径は管径によって異なります。E19管は120mm以上、E25管は150mm以上、E31管は200mm以上が基本です。ただし電線引き込みを考慮すると、E25管で180mm、E31管で250mm程度の余裕を持った曲げ半径にすることを推奨します。急激な曲げは管の変形や電線引き込み時の抵抗増加を招くためです。
Q. 曲げ加工後の電線管に電線を通すときの注意点は?
A. 曲げ加工後の電線管は内径が10-15%減少するため、太いケーブルや多条引きの場合は事前に通線テストを行ってください。特にS字曲げや複数箇所の曲げがある場合、電線引き込み抵抗が大幅に増加します。潤滑剤の使用、引き込み方向の工夫、場合によっては電線を分割して引き込むなどの対策が必要です。
Q. 現場で手曲げする場合と工場加工する場合の判断基準は?
A. 判断基準は「加工精度」「工期」「コスト」のバランスです。複雑な形状や高精度が要求される場合は工場加工が有利です。一方、現場合わせが必要な箇所や少量の加工では現場施工が効率的。筆者の経験では、同一仕様10本以上なら工場加工、それ以下なら現場加工を基本とし、躯体との取り合いや他設備との調整が多い場合は現場加工を選択しています。
Q. 電線管の曲げ加工で失敗した場合の修正限界は?
A. 修正可能な限界は角度ずれで±3度以内、寸法ずれで±5mm以内です。これを超える修正は材料の強度低下や変形リスクが高いため、新しい材料での作り直しを推奨します。また、1回修正した管は「要注意材料」として管理し、重要な箇所での使用は避けるべきです。修正回数が2回以上になる場合は、迷わず交換してください。
